扉
翌日、<ねむりひめ>については
千治は『メイトで再生できれば金貨十枚になるかもしれない』と言ってはいたが、さすがに若い
発見者は彼女なので、権利は全て彼女にある。
ちなみに、それを横から掠め取ろうなどという不届き者も殆ど淘汰された世界だった。そうやって無駄に敵を作れば即、死が待ち受けているからだ。他者と力を合わせなければ生きていけないが故とも言えるだろう。
それでも、
これを憐れんだ者達の助けもあって辛うじて生き延びている状態だった。
このように、すぐに死を与えられるわけではないものの、更に過酷な状況に追い込まれて、結果として一族郎党が全滅するということもあった。ある意味では連帯責任ということか。
それもまた、この世界の現実である。
<ねむりひめ>が発見された部屋と言うか物置と言うかに着き、棚を足場にして慎重に中へと降りる。メディアを持ち帰るのが一番の目的だが、今回はその前に確認したいこともあった。この部屋だか物置だかがさらにどこかに通じていないかということの確認だ。
棚に埋もれるような形だったが、扉らしきものはすぐに見付かった。しかし凍り付いていてそのままではびくともしなかった。そこで<びしゃん>で叩いて氷を砕き、そしてバールを隙間に差し込んで、慎重にこじ開けた。
その先は、真っ暗な空間だった。氷窟の本道の照明から電気を引っ張り、LEDの仮設照明で照らしてみた彼女の視線の先にあったのは、三メートルほど廊下のような空間が続いた後、唐突に岩のような氷に閉ざされた光景だった。廊下がねじくれたように変形していることから、氷の圧力に負けて圧し潰されたものだと分かったのだった。
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