鑑定士
「これは、メディアか…?」
「…お前もこれで一人前だな…」
改めて自分に細めた目を向ける師に、
「ただのまぐれです…」
見付けた時には思わず浮かれてしまったものの、実際には殆ど偶然のようなものだ。それを一人前と言われても、むしろ申し訳なさしかない。
「まぐれを呼び寄せるのも力だ。顔を上げろ。俺達が捜してるものは下にはない。上だ」
そう言いながら、自分達を押し潰そうとしているかのような圧迫感さえ覚える天蓋を見上げる重蔵につられるように
口数は少ないが、彼女にとって重蔵はこの世の誰よりも信頼できる偉大な師だった。その彼の言うことを蔑ろにするなんてことは
「とにかくこれは
一旦、重蔵の家に戻って、
気温マイナス十三度。今日は比較的暖かい。裏地がボア状になったジャージのような外着だけでも歩けばうっすらと汗をかく。分厚いブーツで凍った地面を踏みしめるとガリッガリッと硬いもので引っ掻くような音がする。舗装などしてもその上に凍った水分が降り積もり、やすりのような地面になるので柔らかい素材ではすぐに靴底が削れてしまう。だから靴底もおろし金のようなスパイクの付いた金属製だった。重さも片方だけで一キロ以上ある。
そして、十分ほどで千治の家へと着いた。
玄関先に吊り下げられた木槌を手に取り、柱をガンガンと叩く。電気はあるもののインターホンのような簡単な機械は、内部に入り込んだ水分が凍ったりしてすぐに壊れるので結局はこれが確実なのだ。
すると家の中からも、コンコンと音が響いてきた。『入ってこい』という合図だ。ドアを開けると、その中にまたドアがあった。外の冷気を部屋の中に入れないようにする為だ。
「…よう……」
内側のドアを開けると、白衣のようなコートのような白っぽい服を纏い、短髪で無精髭をたくわえた長身の中年男が二人を出迎えたのだった。
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