報告
『取り敢えずこの辺りを少し持って帰ろう…』
現在の彼女の装備ではこの空間にあるものすべてを持ち帰ることはできない。なので
だから今はとにかく師の下に帰ってこのことを報告しなければいけない。その為の証拠品として一つだけ持って帰ることにしたのである。
「……」
再び
僅かな油断でたやすく命を落とすほどに極寒の世界となったことで今では信じられない、手足が露出した、しかも確か<スカート>とか呼ばれる、裾が大きく広がった服を纏ったその姿は、この惑星にもかつて緑に覆われまばゆい光が燦々と降り注いでいた時期があったことを示していた。
だがそれはもう、三千年以上昔の話であり、生まれた時から永久凍土の天蓋に覆われた小さな世界しか見たことのない
でも恐らくはその<夢の世界>だった頃から眠り続けてるのであろう<女性の姿をしたそれ>を見て、彼女の頭の中にふと浮かんでくる言葉があった。
<ねむりひめ>
それは、
同時に、そこで出てくる、悪い魔法使いに騙されて牢獄に囚われたまま眠り続けるお姫様のことでもある。
<ねむりひめ>は、彼女の話を聞きつけた王子様が悪い魔法使いを倒し彼女にキスをすることで目覚め、やがて王子様と結婚し幸せに暮らしたという、実にありきたりな物語である。
ただ、話の中に出てくる<牢獄>とは、まさにこの世界であり、<ねむりひめ>はそこに閉じ込められた人間達を指しているという説があるからか子供達には人気があるそうだが、その説の真偽は定かではない。
そんな<ねむりひめ>の話が頭をよぎったことで、彼女はそれを<ねむりひめ>と呼ぶことにした。
『また、迎えに来る…』
心の中でそう告げて、棚をよじ登って自分が落ちてきた穴へと再び潜り込む。
逸る気持ちを抑え付けつつ、
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