私は宇宙人なんです

lol

第1話

私は宇宙人なんです。

ここは地球という星。人間が住んでいます。私はそんな人間に擬態して毎日を過ごす宇宙人。日常生活で困ることはありません。食事も人間と同じものが食べられます。睡眠時間も極端に少ないわけでも極端に長いわけでもありません。足の小指の爪がないとか眉毛が生えない体質とか体に特徴があるわけでもありません。ただ、コミュニケーション方法が1つ足りないのです。

私にはこの星の数あるコミュニケーション方法のうち、たった1つだけ意味が分からないものがあります。人間は他人と手を触れ合わせたり足を絡ませたり触覚を触ったりします。時には意味もなく近づいたりしています。私にはこの行為の意味が分からないのです。ただ、この行為をしている時の人間は不思議と笑顔をこぼしています。これは人間が幸せになれる行動なのだと気づきました。

少しでも人間に近づきたい私は見様見真似で前を歩く人間の指を握ってみました。その人間は私の方を振り向くと驚いた表情を見せました。しかし、すぐに笑顔になり私の手を包み込むようにして前を向き私を引っ張って歩き続けました。

私はそんな人間の表情に体が強ばっていくのを感じました。気持ちが悪い。するりと手を離してその場で立ち尽くしました。どうやら私は幸せになれないようです。

「ああ、宇宙人ならよかったのに。」



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