第4話

好転する戦況。槍や弓を構え戦列を組む敵兵はA-10のクラスター爆弾により殲滅され攻撃ヘリの機関砲になぎ払われる。

砲兵やその他陸戦兵力によって戦争音楽が奏でられ血潮が飛ぶ。


「ヒューラーより各位、叩け、叩き潰せ。」


剣や槍などとは比べるのも烏滸がましい射程でM416やM249がけたたましく銃弾を放つ。


後方から騎兵隊が駆けつけ、側面を食い破る。機関銃があるこちらには騎兵突撃は無駄だが、相手には充分な示威効果がある。


「武装親衛隊大将アルブレヒト・フォン・ベルナールです閣下。」


武装親衛隊第14師団の攻撃に同行し俺も戦闘に参加する。


「ベルナール大将、準備は?」


「上々ですよ閣下。」


第14師団はドイツ製兵器で武装した親衛隊の軍事部門である。戦車300輌、機械化歩兵1万名、155mm自走砲250門、自走ロケット砲145両。強力な部隊だ。

G36A2、MG4を構えた兵士の一個小隊と同行する。

5.56mmNATO弾は鎧を無いものとし一切合切を殺す。


「素晴らしい。硝煙の香りだ諸君。私は非常に気分がいい。では諸君、無様に抵抗する彼らに鉛玉を奢って差し上げようではないか。」


『閣下、こちらをウォーヘッド1-130ミリ機関砲弾をワルキューレの騎行と共にご馳走しようかと思います!』


一兵卒と将軍、更には英雄の区別無く戦場に巣食う死神共は無慈悲に無差別に死をもたらす。155mmの榴弾が、多連装ロケット砲のロケット弾がCAS機の20mm機関砲、40mm機関砲、105mm榴弾砲が着弾し薙ぎ払う。

汎用機関銃は指揮官の貴族や兵卒の平民を区別無くズタボロに襤褸の様に化す。

戦車の120mm滑腔砲が砦の大手門を破壊する。

GPS誘導のスマート爆弾は砦の尖塔を砕き指揮官ごとまとめて圧殺する。


戦況は優勢。つまりは実弾演習だ。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「陛下。」


数週間で敵対勢力の戦力を殲滅。騎兵より強い火力と装甲、走破力を持つ戦車とやらによって包囲され大砲と歩兵に文字通り皆殺しにされた。

幾つかの歩兵火器と軽戦車を供与され帝国の訓練を受けている。

一般兵の小銃はボルトアクション方式のライフル銃らしいが女王の護衛である近衛軍の近衛第一歩兵師団、近衛第二機甲師団にはニホンという国のジエイタイで使われていた64式小銃を供与された。ボルトアクション方式の方はタレーラン・ライフル1型としてTR1の制式名を与えられた。アサルトライフルの64式の方はタレーラン・オート・ライフル1型でTAR1が制式名になった。

欽定憲法という法規や軍学、経済、司法、徴兵制度や工業化が進み一部生産拠点をアドラー帝国側がこちらに移転し雇用が生まれ市民生活が安定しつつある。

今日はアドラー帝国総統ジャックとの同盟成立記念式典。

逆らえない。


「タレーラン連邦王国国民諸君、私はアドラー帝国元首ジャック・F・ハーロウだ。まずは諸君ら王党派の勝利を言祝ぎたい。おめでとう。余りに多くの血が母なる大地に流れた。もう戦いは懲り懲りだ。そう思わないか?」


困惑ながらも賛同の声が宮殿のバルコニーから演説する彼の演説にあがる。


「反体制派の彼らは他国の影響下に有った。つまりは敵国と自己の利益のみを考える悪徳貴族によって諸君らは騙され同胞で殺し合いをしなければならなかったのだ。忠義に厚い愛国者の臣民諸君、団結せよ。内乱と敵意と怨恨は敵国に利する。宗主国を名乗る国家は諸君らを奴隷の様に扱う。もう沢山だ!そう思うだろう諸君?」


「その通りだ!」


沈黙の降りる広場に1人の少年の叫び声が通る。


「君の名前を聞かせて欲しい。勇気ある男よ。」


「僕はアーク。アーク・エンストだ。」


「そうかではアーク。君はどの様な扱いを受けてきた?」


「父上は鉱山奴隷、母上は兵士に強姦され殺された!妹と僕は乞食だ!」


「聞いたか諸君?彼の様な扱いを受けている同胞は居る。人間至上主義によって融和と共生を誇りとするタレーランは荒らされた!さぁ、タレーラン連邦王国誇る精鋭にして英雄候補諸君、王国軍に志願せよ!諸君らを王国軍は歓迎する!そして我々アドラー帝国はタレーラン連邦王国と対等にして恒久の同盟を締結する。我らの絆は鉄のように堅く、血の繋がりのように濃い物だ!アドラー帝国軍は諸君らに亡命してきた諸君、武装親衛隊の義勇外国人部隊として志願を望む!諸君、団結せよ!外敵に抵抗せよ!」


アドラー帝国、タレーラン連邦王国の結ぶ正統同盟は王国軍として新たに4個師団を編成し計27個歩兵師団、3個機甲師団となった。

武装親衛隊義勇外国人部隊は新たに獣人種5個師団、エルフ種12個師団、魔族種27個師団を編制、武装親衛隊は計60個師団となり、6個師団から1個軍団を構築し計10個軍団を設立。

アドラー帝国総統ジャック・F・ハーロウには武装親衛隊最高指導者が送られ、タレーラン連邦王国女王ラフィール・ド=タレーランは武装親衛隊大将と親衛隊名誉上級指導者が与えられた。


世界は渾沌と悲劇に充ちていく。天上の何者かの愉悦の笑い声と共に

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る