第10話
〈ウィッチウィザード〉。その名を聞いたのは旅人から聞いた会話からだった。
犯罪者を処刑する組織〈ウィッチウィザード〉が暗躍している。
世界中に、妖精憑きの魔法使いは大勢いる。
妖精憑きは魔法を使える術として必要不可欠な存在で、パートナーとしての存在も大きくかかわっていた。
妖精を召喚する術は一定の資格を持つ者にだけ許されている。魔法使いの上級生よりもさらに上の階級である〈師匠〉クラス。〈師匠〉クラスを持つ者だけが唯一、魔法を教え召喚儀式をすることができる。
だが、魔法や妖精召喚が当たり前になった現代は、資格がなくても魔法陣さえ知っていれば容易に契約ができ、また魔法も妖精さえ契約してしまえば簡単に使えてしまうなど、社会的に問題が浮上していた。
秩序を保つために召喚儀式を生み出した英雄たちは今では、混沌を召喚した悪雄と名を馳せてしまっている。ルノの師匠も同様だ。
〈ウィッチウィザード〉はそんな違法な方法で召喚した魔法使いたちを処刑するために結成された組織だ。
二つ名をもつ魔法使いから名前しか持たない魔法使いも在籍するなど個人を差別するかのよう待遇はとっていない。
ただ、個人的な私情で行動している連中が多いということだけは否定しない。
***
クロエ・アルキリア。
彼女は確かにそういった。
「〈ウィッチウィザード〉クロエ・アルキリア」だと。
自ら〈ウィッチウィザード〉から派遣されてきた処刑人だと証明したのだ。
この試合に出場している8名のうち2名は犯罪者として名が上がっている。ここに来る前、所長から犯罪者リストから2名の情報を与えられていた。
〈狂気のアリス〉。2名を殺害。影を司る眷族を召喚する召喚士。召喚した眷族によって人間が食われたとみている。
自ら可愛いと思ったものを最後まで愛そうとするが、すぐに飽きて捨ててしまうことから〈心代わりのアリス〉とも呼ばれている。
〈土人形のドーン〉。街ひとつを破壊している召喚士。土人形(ゴーレム)を複数召喚することが調査で判明している。温和な人物だが、酒が入ると別人かのような狂暴になる。
街の住人と揉め、酒を浴びたことで狂暴化。
一晩で街を破壊している。犠牲者は百数名を上る。
本人は記憶がなく、酒も飲んだ記憶もなかった。また、下戸であり、昔恋人から酒を飲まされ、殺人未遂に経緯から酒を避けていたと本人からの報告もあり。
2名が同時にルーイン国のお祭りに参加する。
その資料の中身を覚え、暖炉に焼き、証拠を抹消する。
足を運び、こうして2名と試合会場で出会った。
顔はバレていない。
現にアリスにもドーンにも会話はしたが、正体はバレていなかった。
このことから、処刑はスムーズに済みそうだ。と判明した。
――1名を除いて。
会場にして面白そうな人物と出会った。
魔法使い〈中級〉のキルア選手を打ち破り、一瞬で勝敗を決した人物だ。
この人物をリストし、新たに〈ウィッチウィザード〉のメンバーとして加わるべき、所長宛てに報告する。
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