第7話
年に一度開催される魔法の戦い。敵の侵入を防ぐ形で守護像(ガーディアン)が建造されている。
「ルールは単純だ。相手の守護像(ガーディアン)を壊した人が勝ちだ」
ラタはそう言い、俺にルールを教えてくれた。
1、守護像(ガーディアン)が壊れたらおしまい。
2、守護像(ガーディアン)を守りつつ、相手の守護像(ガーディアン)を壊せたら勝ち
単純なルール内容だった。
守護像(ガーディアン)は特別な土偶で作られており、物理では壊されることはないらしい。その代り魔法に対しては弱く作られており、魔法使いはこの守護像(ガーディアン)をどのようにして守り、相手の守護像(ガーディアン)を壊すのか勝負するという。
「守護像(ガーディアン)を先に壊した方が勝ち。聞く限り簡単そうだが、地形を変えるような魔法や守護像(ガーディアン)を消滅させるような魔法は禁止。また、人(対戦者以外)に対して危害を加えたり、景観を壊すような行為は即失格および牢屋行きだ」
前年に関係なくやらかす人は後を絶たないという。
「今年の参加者は7名。ルノを入れて8名だ。強者ばかりだと聞いているよ。」
「腕がなる」
ガッツポーズを決め込む。
「頼もしいな」
***
魔法使い同士の戦いの火ぶたが切られた。
司会者の声が街中響き渡った。
「十九回目の魔法対戦が今年もやってまいりましたアアア!! 対戦者の人数は例年よりも少ない8名で試合が行われます。一対一で戦い、トーナメント式で順に勝負していきます! 今回は熱い戦いが待っています! 二つ名を持つ選手(魔法使い)が4名いらっしゃいます! 順に説明いたしましょう!!」
司会者の熱意が入る。
二つ名は、魔法使いや冒険者にとって誇りのようなもの。
二つ名を持つ者は知名度が高まり、噂は広がりやすくなる。その人の価値観や成功の収めた数など合わせて、依頼が増えていく傾向になる。
「まずは、去年の準優勝者のドーン選手! 土人形(ゴーレム)を召喚した魔法は相手を圧倒させ、守護像(ガーディアン)も簡単に崩れなくするなど攻防一体の戦いが繰り広げましたアア!!」
ゴツイ身体をした男が両手を組んでいる。
茶色い肌に黒茶色のモヒカンをしている。
「四年前に選手を退場させた恐ろしい幻影使いのアリス選手! 参加した選手たちをいたぶり、何名かを病院送りにした恐ろしい女の子! 見た目は可愛いがその皮の裏は虎のような獰猛だア!!」
ペコリとお辞儀をした。
ゴシック姿の少女はぬいぐるみを抱きかかえている。猫のぬいぐるみだが、荒く縫い上げた糸は不気味だった。
「今年初参加する音速のキルア選手! 音よりも早く動きも行動もキレがある。その姿を拝めれるのは止まった時のみだァ!」
黄色い髪をした少年だ。中指をたてて、挑発をしている。
「おっと…これは意外な選手の登場だァ! クロエ・アルキリア選手。アルキリアと言えば、呪詛使いの家系で代々呪詛を引き継いでいるという…。アリスの他に狂気とも言わんばかりの参戦だ!」
紺色の髪にとんがり帽子。魔法使いっぽい服装は他の誰よりもひときわ目立つ。
「お嬢ちゃんよ、逃げるなら今のうちだぜ」
ドーン選手が煽るようにクロエに言った。
「ご心配なく。私はこれでも強いよ」
上等だぜとゴーン選手を被るかのように司会者が次の選手の名を読み上げていく。
無名の魔法使いの名が上がり、最後にルノ選手の名を上がった時、ラタは一工夫していたかのように司会者に一枚の手紙を送っていた。
司会者がそれを手に取り、読み上げた。
「えー…ただ今の新情報です。読み上げた選手のなかに二つ名ではないですが、強者がいたようです。魔法使いにして毎年1桁しか資格を得られない上級資格を持ったん種がいるとのこと…ルノ・クロノア選手です!!」
観客席から歓声が鳴り響く、選手席からはジロと睨みつけられる。
「上級魔法使い…噂にしか聞いたことがない選手が紛れ込んでいるとはなぁ」
「これはとても楽しみです。私の唄がどう踊ってくれるのか楽しみで仕方がないわ」
「ルノといったな、噂は聞いたこともないが、おそらくかなりの手練れだ。ビリビリと電気のように感じてくる。コイツは、一瞬の猶予も隙も与えないことがいいと…」
「ルノ・クロノア…」
ドーン、アリス、キルア、クロエの順に言葉を投げられた。
ドーン選手は楽しみで仕方がない。
アリス選手はいたぶりたくて仕方がない。
キルア選手は用心深く倒したい。
クロエ選手はルノのことが少し気になる様子だ。
「では、第一試合、キルア選手 VS ルノ選手! 試合はこの後すぐです」
キルアがルノを見ている。
キルアはルノの力量を見ているのだ。
スピード勝負では負けないこの勝負。先に守護像(ガーディアン)を壊した方が勝ち。一瞬の油断もなければ守護像(ガーディアン)を壊すことも守ることも可能だ。
二つの名を持たない無名の魔法使いはある意味で恐ろしい存在だ。
なにせ、どんな魔法を使い、どんな系統(タイプ)を使ってくるのか謎だからだ。二つ名の魔法使いは得意分野である魔法を代表として付けられる。
キルア選手はスピードタイプ。音を置いて目的地に着くなどそのすさまじいスピードは誰よりも早く、隙が無い。
けど、キルア選手は油断ならないとルノを凝視していた。
上級魔法使いになるのはみっつの試験を突破した者にだけ与えられる称号だ。いわば、天才と言っても過言ではない。
そんな相手を最初に対立するとは、キルアは夢にも思わなかっただろう。
(大丈夫だ…俺にはスピードがある)
心に問うようにキルアは位置に着いた。
「二人の戦いはおそらく互角…スピード勝負ならキルア選手が圧倒的だ。だが、上級魔法使いであるルノ選手の魔法は未知数。この試合で系統さえ知れば、後々助かるのだが…」
お手並み拝見。
ドーン選手とアリス選手は観客席から彼らをよく見える場所に着いた。
ルノも位置に就こうと移動していたとき、クロエとすれ違いに「気を付けて、守護像(ガーディアン)は脆い。おそらく開始の数秒で決着がつくかも…」と心配そうにそっと耳元に告げていった。
いざ、試合が始まる。
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