第3話 夕暮れ泣いてレモン色

 夕暮れ泣いているレモン色の男の子


 雨だ。雨が降ってきた。あまり暗くないからきっともうすぐ晴れる。夕陽が少し漏れ出ているからキラキラと光っている。レモン色の装備の男の子が一人、噴水公園にいた。傘も雨がっぱも長靴もレモン色だ。普通こういう雨具はバナナっぽい黄色が多いけど、きっともう俺の感覚が古いのだろう。


 ギターが濡れるから帰りたいけど、男の子は一人だ。男の子は静かに泣いていた。

うつむいて水たまりに向かって呟いている。聞き取れないし聞こえないほうがいいのかもしれない。雨だ。雨が降っている。あまり暗くないからきっともうすぐ晴れる。また少し弱くなっている。


 子どもの泣き声といえば赤ちゃんの大声や駄々っ子の騒ぎ声のイメージで、だからその子のどこかすすり泣くような姿に違和感があった。泣き疲れたのか、それだけ長くここに一人でいたからか俺にはわからないけど。


 雨が、雨が止んだ。そしていつも同じ時間に決まって鳴る鐘が鳴った。夕陽がまるでタイミングを測っていたかのように公園全体を包みだす。とても綺麗で、レモン色の男の子も綺麗だった。そのまま夕陽に吸い込まれていくんじゃないかと思った。


 だいじょうぶだった。お父さんが大慌てで迎えに来た。



「こんなところにいたのか探したんだぞ、帰ろう」


「うん帰る」



 だいじょうぶだった。ガラガラ声のお父さんに、涙を拭って男の子も言った。


 雨も止んで夕紅の噴水公園からレモン色はいなくなった。

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