第6話
時は過ぎ、
場所はバスで20分程の所にある向日葵畑。近くには飲食店やソフトクリーム屋さん、公園もある。流石に小学生だけでお世話になる訳にはいかないので、母親についてきてもらった。千夏ちゃんはお父さんと一緒に行くらしい。
バス停で降りると、千夏ちゃんが手を振っているのが見えた。麦わら帽子に純白のノースリーブワンピースと、とても可愛い服装をしている。私はと言うと、いつものTシャツに特別な日用のスカート。彼女よりも茶色の比率が多い。
小走りで集合場所に行き、彼女と約2週間ぶりの会話をする。
普段は週7で個別授業、さらに夏期講習で集団授業を週3で受けており、今日は個別授業だけの日なので休んだらしい。予想以上に忙しい毎日だと知り驚いた。
「そんなに難しい学校受けるのに、邪魔しちゃってごめんね……」
「いいのいいの、私から誘ったんだよ? それに、塾の先生にも1日は息抜きしないと駄目だよって言われたし」
なら良かった、と返すと、言葉の代わりに弾けるような笑顔を見せてくれた。
その後、彼女と一緒に食べたオムライスは世界一美味しかった。
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「____多分、これだと思います。先程食べたオムライス、小6の時に食べたものと同じような味がして。この店ってすごいんですね」
「あ、ありがとうございます」
成程、親友と一緒に食べた料理なのか。
……けれど、何故こんな楽しい思い出があるのに十代で死んでしまったのだろう。もしかしたら自分より年上かもしれない相手かもしれないのに失礼かもしれないが、人生まだまだこれから、ってとこなのに。
なんとなく
『那賀真緒ナガマオ 約2年前没(当時14)
死因:薬の大量摂取』
____やっぱり自殺? 何度も言うようだが、あんなに楽しげな思い出があるというのに。
当時14という事は、さっき話してくれた思い出は死亡する2年前の出来事だ。あれから何かあったのだろうか。
「あの、那賀さん」
「はい」
遠回しに聞く方法はないか少し考えたが、これは単刀直入にしかできなさそうだ。素直に答えてくれるかどうかは分からないが、あの茶色い店舗に戻れる気配もしないし、これを聞かないと『自分が一番楽しかった時期の思い出を言葉にする事で吐き出して忘れる』はクリアした扱いにならないのだろう。
「その後何があって、薬の大量摂取なんかして死んでしまったんですか?」
……無音の空間になった。彼女は俯き、私も流石に単刀直入過ぎたかなと後悔。
それからけっこうな時間が流れ、那賀さんが発した言葉が、小さな声が聞こえた。
「……実は、」
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