第4話

「ほいよ、持ってけ」

「おぉ……」


十数分で完成されたオムライスはアツアツで、見るからに美味しそうだ。

私は黄色と赤、少しの白と緑で構成されているそれを落とさないようにお盆で持っていく。

飲食店でいつも思うんだが、料理を運ぶ時何故にお盆を使うのだろう? お皿を直接持たないので、なんだか落としそうだ。


できるだけはきはきと、分かりやすく。でも大きすぎない声で、小さすぎない声で。

そんな事を心の中でループさせながら、「お待たせ致しました」と言った。ぎこちなくなかっただろうか?

私が女子中高生の所へたどり着く頃には、そうさんも厨房から出ていた。彼女はおっさん__もう一人のお客さん__の所へ向かうようだ。


目の前にいる女子中高生は、オムライスをゆっくりと食べ始める。顔や仕草から分かる、それはめっちゃ美味しいって事を……けれど、その後に何故か悲しそうな顔をした。

ふと想さんの方を見ると、おっさんと一緒に徐々に消えていった。……消えた!?

慌てて2人が居た所へ駆け寄ると、小さな紙が机にぽつんと置かれていた。四つ折りになっているそれを開くと、想さんが書いたと思われる文字でこう綴ってあった。


『驚いた? 話を聞くときは異空間に飛ばされるんだよ』


1日に2人、しかも見た感じ同じ時間に来店する転生期。一番楽しかった時の話を聞くときは店員が1人お店からいなくなる。

つまり、2人以上で営んでいないと客がとても待つという事か。私が此処に来る前、実は危機的状況だったって訳?


そんな事を考えている間にも、女子中高生はオムライスを食べ進めていた。既に最後の一口を口に入れる所だ。

彼女はお皿に米粒などを残さないように食べていたみたいで、食べ終わったものが入っていたそれはとても洗いやすそうだ。

えっと。これは想さんみたいにお客さんの近くに居たら良いのだろうか。そう思い、彼女の所へ歩み寄る。


すると、彼女が微笑んだと同時に、知らない空間に飛ばされた。


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