第10話GW2人きりの夜(夜のお楽しみ編)

「そろそろ、お風呂ふろはいらなきゃ、だよね?」

 時刻じこくは20まわり、れいによってれいごと小説執筆しょうせつしっぴつけて資料しりょう作成さくせいしていたわたしもとに、ユミがもじもじしながらやってた。

 ついた!とおもった。ここでの対応たいおうあやまれば、このゴールデンウィークが、『めくるめく百合百合地獄ゆりゆりじごく』へとしてしまう。連休明れんきゅうあけには、わたしもしっかりちゃっかりキマシタワーに住居じゅうきょかまえることになってしまいかねない。

 もちろん、研究けんきゅう充分じゅうぶんにしてきたつもりだ。以下いかに、その研究内容けんきゅうないようしるそう。


完全拒否かんぜんきょひ

 キスやえっちなことはおろか、ボディタッチすらゆるさない。貞操ていそう危機ききはほとんどいが、ユミとの関係かんけい微妙びみょうになりそうである。これを採用さいようするのであれば、そもそも、ユミんちにはまりにていない!だからこれは、魅力的みりょくてきだが採用さいようすること出来できない★


無条件開放むじょうけんかいほう

 ユミのもとめるがままに、すべてを開放かいほうする。ユミとのきずなきわめて強固きょうこになるが、これを採用さいようするのは、如何いかおんな同士どうしとはいえ、弘毅君恋人もうわけたない。ゆえに、これをえらこと不可ふかである★


条件付じょうけんつ開放かいほう(折衷説せっちゅうせつ)】

 ふたつの対立たいりつする意見いけんがある場合ばあいに、双方そうほうあゆらせ妥協点だきょうてんさぐかんがかた折衷説せっちゅうせつという。

 ざっくりえば、して2でったらいんじゃね?てき手法しゅほうである。

 ってみるならば、『たまごって、ごはんけたら、いといて、お醤油しょうゆしたらTKG卵かけご飯完成かんせい』というわけである。加減乗除かげんじょうじょもばっちり♪(←なにが?)

 なお、TKGティーケージーTamagoたまご Kakeかけ Gohanごはんりゃく 。ふぐ調理師試験ちょうりししけん出題しゅつだいされるので(注:ウソです)、てっちりおぼえておくように🐡

 というわけで、必然的ひつぜんてき条件付じょうけんつ開放説かいほうせつ採用さいようすることとなる。しかし、その内容ないよう多岐たききわめ、学説がくせつ紛糾ふんきゅうしている。

 以下いか我妻小雪説わがつまこゆきせつ紹介しょうかいしよう。


我妻小雪説わがつまこゆきせつ

みとめる事例じれい

 一緒いっしょにお風呂ふろはい

かる身体からだあらいっこをふくむ)

 一緒いっしょ

(はだかる、かるいボディタッチは)

 かるいキス


断固拒否事例だんこきょひじれい

 むねなど身体からだ一部いちぶ使つかった洗体せんたいプレイ(←性風俗店せいふうぞくてんか!)

 生殖器せいしょくきさわったりめたりする行為こうい(←ここまでくると、もはや友達ともだちではなく、恋人以上こいびといじょう行為こういである)

 べろチュウフレンチキス(フレンチキスも恋人以上こいびといじょう行為こういである)


 余談よだんになるが、『フレンチキス』のただしい意味いみをごぞんじないきがおおいように見受みうけられるので、紹介しょうかいしておこう。

『フレンチキス』=『ディープキス』=『べろチュウ』である。

 しかし、このフレンチキスという言葉ことばは、日本にほん輸入当初ゆにゅうとうしょあやまった意味いみつたわってしまった。

『フレンチキス』はその語感ごかんから『フランスりゅうのポップでかるいキス』とされていたのである。

 じつは、フレンチキスとは、イギリスでまれた英語えいごである。その意味いみはっ!

『フランスじんどものような、どエロいキス』なのである。

 そう、『フレンチキス』とは、イギリスじんがフランスじん侮辱ぶじょくするための言葉ことばだったのだ。残念ざんねん

 かるいキスをあらわすには、バードキスという言葉ことばがあるので、こっちを使つかうといよ。ちゅんちゅん🐦


 閑話休題かんわきゅうだい

 ユミにはしっかりといくるめておかなくては。

ーい、ユミちゃん?一緒いっしょにお風呂ふろはいるのはゆるそう!お背中せなかながすとか、そのくらいならばみとめてもい。でも、へんなプレイじみたことしようとしたら、荷物にもつまとめて田舎いなかかえらせてもらうからね!」

「ふええぇぇ――――っ!まさか、おゆきちゃんのほうから、お風呂ふろさそってくれるなんて、感激かんげきだよぉー☆お風呂ふろはハードルたかいから無理むりだってあきらめてたから〜♪」

 かおをくしゃくしゃにしてよろこぶユミ。これが破顔一笑はがんいっしょうというヤツか。しかし、ひょっとして?

 わたし、やらかしちゃった?本来ほんらいまないはずなのに、わざわざ、ほうげてしまった★フェアリー詰将棋つめしょうぎかよ!

裁判長さいばんちょう異議いぎあり! それは誘導尋問ゆうどうじんもんですっ!」

「『そろそろ、お風呂ふろはいらなきゃ、だよね?』のどこに誘導ゆうどう要素ようそがあるの?」

「そ、そうでした」

 たしかに、ユミの言葉ことば誘導ゆうどう断定だんていするのは曲解きょっかいぎるきらいがある。

 あ〜、どうしよう。時間じかんもどれっ!

 ってわたし時間跳躍者タイムリーパーじゃん。よし、ここは!

 と、かんがえておもとどまる。ユミをここまでよろこばせておいて、なかったことにするのはひどいのではないか?

 もしユミが卑怯ひきょう手段しゅだん使つかって、わたしんだのであれば、躊躇ちゅうちょなく、躊躇ためらいなく時間跳躍タイムリープする。でも今回こんかいは、わたし勝手かってにすっころんだのである★だからこれはれるべきだとおもった。

 あと正直しょうじきって、ユミとだったらかるいキマシ展開てんかいならアリだともおもっていた☆

「ねえ、いまから一緒いっしょはいろっ♪」

 ユミに催促さいそくされ、くるまぎれに、

「すまないが、依頼人いらいにんとのわせの時刻じこくちかづいているので、そちらにかわなければならない。そのけんかんしては今度こんどゆっくりとかたおう」

ってみたが。ユミはにこにことかえす。

一緒いっしょにお風呂ふろはいろっ♪」

 ですよね〜♪ガン無視むししますよね〜♪

 ヤバい、もうことわ手段しゅだんがない。せめて、最後さいご抵抗ていこうこころみる。

「おねがい!わたし10分じゅっぷんだけ時間じかんちょうだい。10分じゅっぷんったらユミもはいっていからっ!」

 いぶかしげなかおをするユミ。

「なんで一緒いっしょはいっちゃダメなの?まさか、10分じゅっぷんったらわたしちがいにようって魂胆こんたんじゃ?」

「それは、絶対ぜったいしない!約束やくそくする。だから……」

 ユミはしばし、かんがんでいたが。

「わかった。おゆきちゃんがはいって10分じゅっぷんってからはいるよ」

 れてくれた。たすかった〜。

 着替きがえの下着したぎやらパジャマを用意よういしていると。

「ごめんね〜、かなくて」

 ユミが背後はいごからこえけてきた。なんのことだろう?

わたし一緒いっしょだと、シャワーオナニー出来できないもんね?」

 なんですと―――っ!

「なっ!ちょっと、ちがうからっ!」

「シャワーオナニーしたことないの?」

らないっ!」

 そちらをずとも、ユミがにやにやしている様子ようすうかがえた。女子高生じょしこうせいかわをかぶったおっさんめ!


 どうしてこうなってしまったのだろう?

 ゴールデンウィーク、ユミのいえごすことになってしまった。はやまったことをしてしまったのではないか?

 ユミの家族かぞく親戚しんせきいえき、今夜こんや2人ふたりきり。わたしは、はじめてはいったいえで、シャワーをび、シャンプーなんてしている。

 わたしがいつも使つかっている安物やすものシャンプーの『メソット』とはちが高級感こうきゅうかんただようシャンプー。あ、なんかいいにおいだな♪わたしみたいな貧乏人びんぼうにんには勿体もったいないくらい。遠慮えんりょがちにシャンプーえきって、かみにつけてあらう。かみあらながす。

「あれっ、石鹸せっけんは?」

 あたらない。石鹸せっけん用意よういしてないなんて、うっかりさん?

 ううん。そんなはずはないだろう。シャンプーボトルがこんなにあるんだし、ひょっとして……。

 やっぱり、ボディソープだ。ハンドソープなら使つかったことがあるが、ボディソープなんて高価こうかなモノを……。

 うちは、ほぼミルク石鹸せっけん一択いったくである。一時期いちじき薬用石鹸やくようせっけんAqoursアクアだったこともあるけれど、あのにおいはれなかったな。

 おお、あわてくるぞ!なんかうれしい。うちのミルク石鹸せっけんでは、この泡立あわだちは不可能ふかのうだ★

 かおだけさきあらったあと、ボディソープをしっかりちゃっかり泡立あわだてて、スポンジで身体からだあらっていく。泡立あわだちの歴然れきぜんで、あらっていてたのしい♪

 これが、王侯貴族おうこうきぞく平民へいみんなのね、とかおもってしまう。

 夢中むちゅうになっていると、ガタッとおとがして、おどろいてくと、ユミが一糸いっしまとわぬ姿すがたで、浴室よくしつはいってくるところだった。

 しまったー!ボディソープのあわあわがたのしくて夢中むちゅうになりぎたーっ!

 身体からだあらわって、お風呂ふろつかかってやりごす計算けいさんだったのに、予定よていくるってしまった★

「おゆきちゃん、ごめん。シャワーびるね」

「ど、どうぞ」

 邪魔じゃまにならないように、イスごと右側みぎがわける。

 ユミがシャワーをびると、しずくわたしほうにもかってくる。

 シャワーをえたユミは、わたし背後はいごへと位置取いちどる。

背中せなかあらったげるね?」

と、わたし右手みぎてにあるスポンジにける。

 ひと背中せなかあらわれるなんていつ以来いらいなんだろう?修学旅行しゅうがくりょこうなどをのぞくと、おかあさん以外いがいひととお風呂ふろはいった記憶きおくなんてないし。

 かたから背中せなかそしてこし丁寧ていねいあらわれていく。なんか気持きもちいい♪

「おしりあらうから、おゆきちゃんって〜☆」

「えっ、おしりいよぉ〜★」

あらってるだけなのに、ずかしがるのは、かえってへんだよ?大丈夫だいじょうぶおんな大切たいせつなところは指一本ゆびいっぽんれないから☆」

「そ、そう?」

 たしかにエロいとか、そういうかんじじゃないし。

 素直すなおがる。

 ユミのつスポンジは、おしりから太腿ふともも裏側うらがわ経由けいゆして、太腿ふともも内側うちがわすべんできた。

 ビクッ、と身体からだかたくする。が、デリケートな部分ぶぶんへはかわず、内側うちがわからまえほうあらい、一旦いったんかれて、太腿ふともも外側そとがわからしたほうへとうつっていく。

 足首あしくびからあしこうあらわれたあと

左足ひだりあしげるよ〜」

 わたしかべのタイルにをついてバランスをりつつ、左足ひだりあしひざから直角ちょっかくげる。正直しょうじきあしうらあらわれるのは、かなりずかしいのだが、ずかしがるほうずかしいとおもい……。

「うひゃひゃひゃひゃ♪」

「ちょっと、うごかない!」

「むりむり、くすぐったくて無理むりだからっ!」

 ユミは容赦ようしゃすることなく、あしゆびあいだまでしっかりあらわれた。ある意味いみふくうえからむねまれるよりもずかしかった。

 おんな大切たいせつなところは、ユミがはいってまえあらってたので、シャワーであらながして、選手交代せんしゅこうたい

 今度こんどはユミをあらってあげるばんである。

 ユミがイスに腰掛こしかけ、わたしはユミのうしろで膝立ひざだちになる。お風呂ふろマットがかれているのでいたくない♪

「あれ?シャンプーからしないの?」

「えっ?シャンプーは身体からだあらったあとだよ?なんでそんなことくの?」

「だってさ、身体からだあらったあとでシャンプーしたら、かみよごれがながれてくでしょ?」

あらながしたらむよね?」

「そのぶんおお使つかうから……」

 うっ!無意識むいしき貧乏びんぼうアピールしている★

「おゆきちゃんはこまかいねえ♪」

 ユミがわらって、ちょっとホッとする。

 背中全体せなかぜんたいあらわったところで、

「ねえ、まえあらってもらってい?」

たずねられる。

「えっ?まえ自分じぶんで……」

「あのね?わたしは、『えっちなことして』ってってるんじゃないんだよ?『身体からだあらって』ってってるんだよ?」

 ううっ、わたし意識いしきぎなのかなあ?

「うん、わかったよ。ユミちゃん、こっちいて」

 ユミが一度いちどがってこちらにいてすわなおす。さきに、そのむねがいった。

「ユミちゃん、おっぱいおっきくていな〜☆」

「おゆきちゃん、乳首ちくびもちっちゃくて可愛かわいい♡いろうす桜色さくらいろいね🌸」

 められてるのかな?テレテレ♡

 められたら、かえさなきゃだよね?

「ユミちゃんの乳首ちくびだって、ちっちゃくて桃色ももいろ可愛かわいいよ🍑」

 くちしてしまってから、ハッと気付きづいてしまう。わたしったら、なんて破廉恥はれんち発言はつげんをしてしまったの〜〜〜っ!

 はだかかいったまま、2人ふたりしてかおしゅめてれている。

 いや、自分じぶんかおえないのだが、ほおのあつさから推察すいさつするに、さおになっているとはかんがえにくい。

 あ〜っ!なんなの、この羞恥地獄しゅうちじごくは?

 でも案外あんがいこれは天国てんごくなのかもしれない、とおもった❤(ӦvӦ。)


 ユミの身体からだあらってあげ、さらかみまであらってあげたあと2人ふたりかいって、湯船ゆぶねかった。

 ユミはシャンプーやら、リンスやら、トリートメントやらに、やたらめったらこだわりがあるらしく、『キューティクルがどう』とかって、わたしにも熱心ねっしんすすめてきたが、

「シャンプーなんて、かみよごれさえれたらそれでいでしょ?」

わたし言葉ことばしば絶句ぜっくし、

小雪こゆきさん、女子力じょしりょくひくすぎ!」

われてしまった。『女子力じょしりょくひくすぎ』は結構けっこう言葉ことばである。

得意料理とくいりょうりが、カップラーメンとレトルトカレーの裕美ひろみさんにはわれたくないな」

「でもごはんくのに成功せいこうしたことあるもん!」

飯盒炊爨はんごうすいさんじゃないんだから、成功せいこうして当然とうぜんでしょ?ってか、失敗しっぱいするの?もしかして裕美ひろみさんたくは、はじめちょろちょろなかぱっぱ、ってヤツ?」

「かまどじゃないしっ!」

 などという、ちょうハイレベルなやりとりをえ……。

「ユミちゃんの料理りょうり腕前うでまえって、相当そうとうひどいんじゃないかな?」

「そ、そんなことないよ?イマドキの女子高生じょしこうせいはこんなもんだよ?」

あやまれ!この惑星わくせいあまね存在そんざいするイマドキの女子高生じょしこうせい謝罪しゃざいしなさい。炊飯器すいはんきでごはんくのを失敗しっぱいするのが普遍的ふへんてき女子高生じょしこうせい姿すがたであるとは到底とうていかんがえられない!」

自分じぶんではちゅうくらいだとおもってるんだけれど?」

ちゅうわたしレベルっ!ユミは下下下げげげ鬼太郎きたろうだよっ!」

「そんなにひどいのか〜★」

大丈夫だいじょうぶだよ。わたしがついてる。わたし得意料理とくいりょうりなべ伝授でんじゅしよう🍲」

「な、鍋物なべもの初心者しょしんしゃにはハードルが高過たかすぎませんかね?ほら、ラブラブライブ!のはなしなかでも……」

「はっ、たしかに!みなみひよこちゃんが、テンパってチーズケーキぶっこんだり、星空蘭ほしぞららんちゃんがしょぱな乾麺かんめん大量投入たいりょうとうにゅうして、水分すいぶんがみるみるっていったりしてた★」

 このあとほかのメンバーの活躍かつやくにより、なべ見事みごと復活ふっかつ無事ぶじ美味おいしくべられましたとさ、めでたし、めでたし♪

「あれはつくばなしだとおもってたけれど、こちらにおわすは、カレーに具材ぐざいおよみず大量投入たいりょうとうにゅうして、見事みごと薄味うすあじ仕立したてあげてくれた、華麗なる破壊者カレーブレイカーだからな。投入系とうにゅうけいはヤバいかも(あせ💦)」

「うん、鍋物なべものは3ねんくらい修行しゅぎょうして、調理ちょうり技術ぎじゅつきわめてから挑戦ちょうせんしてみるよ」

 投入系とうにゅうけいではなく、壊滅的かいめつてき調理技術ちょうりぎじゅつぬしであるユミがつくれそうな料理りょうり。ピコーン💡いまたしかにかみこえこえた☆

「ふっふっふ。なまゴミ製造機メーカーのユミちゃんでもつくれそうな料理りょうりおもいついたよ。ボクにすべてをまかせてくれたまえ」

最大級さいだいきゅうにディスられてるがするんだけれど?」

 まあ、最大級さいだいきゅうにディスったからね♪

あまったごはんたまご簡単かんたんつくれるお手軽てがる料理りょうり

「わかった!たまごかけごはんだ♪」

たまごかけごはんって料理りょうりなの?」

「でもたまごかけごはんのレシピぼんあるよ」

「じゃ、じゃあ料理りょうりなのか。でも、わたしのおすすめはちがう。その料理りょうりはっ!炒飯チャーハン

 ドーン!

「ごはんのこってたらわたし長谷炎ながたにえんのお茶漬ちゃづけのもと使つかうし?」

 ドヨーン⤵

 白熱はくねつしたバトルがつづいたが、お茶漬ちゃづけにはもはやかえ言葉ことばがなかった。

 5ふん40びょうノックアウトちで、あかコーナー高橋裕美ダメ料理王防衛ぼうえいとあいなった。


「あっついね〜♪」

 ユミががって、お風呂ふろふち腰掛こしかける。わたしもそれにつづく。ふくらはぎからさきをおけたまま、身体からだねつがす。もはや、はだかずかしがるような時代じだいでもなかった。

「で、なんで料理りょうりはなしになったんだっけ?」

 ユミがたずねてくる。

「えー、なんでだっけ?」

 ちょっぴり逆上のぼせかけのあたまではおもいつかなかった。

「わっかんないよねー♪それでね……」

 そううとユミは身体からだわたしほうせ、左腕ひだりうでわたし右腕みぎうでからめてきた。

 身体からだがビクッ、っと反応はんのうかたくする。

 刹那せつなまれたうでほどこうかとおもったが、様子ようすをみること選択せんたくした。

 それでもわたしわずかな反応はんのうに、ユミは表情ひょうじょうくもらせる。

「やっぱりおゆきちゃんは、わたしさわられるのいや?」

 ユミとは良好りょうこう関係かんけいきずきたい。けれども、だからといって安易あんい身体からだゆるわけにはいかない。ここは慎重しんちょうにも慎重しんちょう必要ひつようがある。

いやではない……とおもう。でも、ユミが急速きゅうそくにパーソナルゾーンをめてくることには警戒けいかいしている。うでむのは友達ともだち距離きょりではなく、恋人こいびと距離きょりだ!」

「そっか……★」

 わたし言葉ことばけてユミはうでこうとしたが、わたし右腕みぎうでわきにくっつけるようにしてユミのうでつかまえた。

 ユミがわたしかお凝視ぎょうしする。『どうして?』とでもいたげな表情ひょうじょうだ。

 それにたいして、わたしうべきことまっていた。

「ユミの告白こくはく返事へんじしてなかったよね?おそくなってごめん」

 ユミの表情ひょうじょうは、緊張きんちょうのそれへとわる。

 わたしみぎてのひらをユミのひだりてのひらわせてゆびからめ、その自分じぶんむね谷間たにまへと―――というほどのモノはないけれど、一般いっぱんむね谷間たにまばれる部分ぶぶんへと―――っていく。ユミの左手ひだりてこうむねれる。

 わたしはユミのかおを、そのおおきな黒目勝くろめがちのをしっかりとながらくちひらく。

わたし恋人こいびと河野弘毅君こうのひろきくんで、ユミはれない……」

 ユミのひとみが、瞬間しゅんかん、チカラをくしたようにえた。くちひらきかけるユミだが、間髪かんはつれずに、

「でもっ!ユミはただ友達ともだちでもない。友達以上ともだちいじょう恋人未満こいびとみまん位置いちにいる。だからっ!」

 からめた右手みぎてほどきながらがる。右手みぎてをユミの背中せなかへとまわし、すようにして、ユミをがらせ、こちらをけさせる。そして左手ひだりてもユミの背中せなかへとまわし、ユミをせつつ自分じぶんあゆる。かるめる。ハグ。むねむね密着みっちゃくし、わたし胸板むないたが―――かなしいことにその表現ひょうげんがぴったりくる―――ユミのゆたかな乳房ちぶさつぶす。

 わたし右手みぎてがユミの背中せなかから頭部とうぶへとすべり、それで理解りかいしたのであろう。おたがいのかおかお近付ちかづいていき、くちびるくちびるれる。ひとみひとみつめう。

 玉響たまゆらわたしたちはかぎりなく恋人同士こいびとどうしへと肉薄にくはくした。それをへだてるのはうす精神的せいしんてき膜一枚まくいちまい

 コ○ドームのはなしをしているのではない。でもイメージてきにはまさにそんなかんじだった。

 くちびるまではゆるしたが、した侵入しんにゅうまではゆるさない。ユミも……裕美ひろみもわかっているのであろう。したによる打診だしん接触せっしょくはなかった。

 やがてくちびるほどけていく。うっとりと夢見心地ゆめみごこち裕美ひろみ表情ひょうじょう。おそらくわたし表情ひょうじょうをしているのではないか。

「ふにゃあ〜♡」

らして、裕美ひろみ湯船ゆぶねもぐる。わたし一瞬いっしゅんおくれてそれにつづく。

 同時どうじかおげてやろうとおもったが、裕美ひろみはなかなかかおげない。となれば、こちらもさきかおげるわけにはいかず、はからずもあらたたなバトルが勃発ぼっぱつする。

 しかし、肺活量はいかつりょうなのかなんなのか?

 いきつづかなくなり、さきかおげてしまう。すぐに裕美ひろみ水面すいめんから、うみぼうずよろしくかおげる。

「ひろみ?」

 いとしいおもいをふくませて、ける。

「こゆき?」

 おそらくは同等以上どうとういじょう熱量ねつりょうめられた言葉ことばかえってきた。

 わたしはそれをうれしいとおもうと同時どうじに、せつなくもかんじた。

 裕美ひろみわたしたいする『あいしてる』の気持きもちに、わたし裕美ひろみたいして『大好だいすき』でしかかえせない★きそうになった。

裕美ひろみっ!」

 きついた。

「ごめん!ごめんね……」

 なみだがほおをつたった。

「えっ?なにがごめんなの?こわいよ、小雪こゆき……」

 わたしはそれにはこたえず、裕美ひろみをただぎゅっとめた。


 ふたたび、お風呂ふろふちへと腰掛こしかける2人ふたり

「ちょっと、お温度おんどたかいんじゃないかなあ?」

「そんなことよりも、なんできゅうきだしたりしたの?わたしくんだったらわかるよ?小雪こゆき理由りゆうがわからない……」

 裕美ひろみがかぶりをった。

じつはね、わたしにもくわからないの。だから、支離滅裂しりめつれつになっちゃうかもしれないけれど……」

 わたし言葉ことばに、裕美ひろみやさしく微笑ほほえんだ。

いよ。ゆっくりでも、支離滅裂しりめつれつでも。わたし小雪こゆきちゃんのかんがえてることりたい」

 こくんとうなずいた。わたし裕美ひろみちゃんにいてしいとおもった。

わたし、ずっとしんじている事柄ことがらがあるの。『ひとなにかをれたときなにかをうしない、また、なにかをうしなったときなにかをれる』ということを。これはね、等価交換とうかこうかんじゃないの。おおきな価値かちのあるモノをれてささやかなモノをうしなったり、そのぎゃくだったり。弘毅君ひろきくんわたし告白こくはくけて、ってくれるようになってすごくうれしかった。でも、そのときすでわたしうしなっていたの。裕美ひろみちゃんをあいする資格しかくを……」

「まあ、それはわたしもわかってたことだし、こいはやものちだから……」

わたしね、このお風呂ふろはいるまでは、裕美ひろみちゃんのことをそこまできだとはおもってなかったのね?弘毅君ひろきくんあいする気持きもちが100だとすれば、裕美ひろみちゃんをきな気持きもちは70から80くらい?でも気付きづいちゃったの。わたし裕美ひろみちゃんがかなしむかおたくない。裕美ひろみちゃんの気持きもちにこたえてあげたいって!ひょっとしたら裕美ひろみちゃんにたいするおもいは101以上いじょうかも……」

 いかけたくち裕美ひろみちゃんの右手みぎてふさぎ、同時どうじくび左右さゆうった。

「ありがとう、小雪こゆきちゃん。そこまでわたしことおもってくれて。その気持きもちだけで充分じゅうぶんだよ♡ねえ、キスしてい?」

 首肯しゅこうすると、裕美ひろみちゃんはくちびるかさねてきた。けれども、すぐにはなれてしまう。

「もう二度にどと、っちゃ駄目だめだよ?弘毅君ひろきくんこと大事だいじにしてあげな?」

 こくん、とうなずく。

えてきたね。おかろう?ちょっと水入みずいれて温度おんどげるね♪」

 2人ふたりかたまでかる。

わたしことはなしたいな。いてくれる?」

「うん。わたし裕美ひろみちゃんのこと、もっとりたい」

「うふふ、ありがと☆小雪こゆきちゃんのこときになるまえはなしなんだけれど。わたしね、中学ちゅうがくとき人間嫌にんげんぎらいだったんだ」

人間嫌にんげんぎらい?」

 意外いがい告白こくはくにびっくりする。

「うん。おや教師きょうし大人おとなはみんなきらいだったし。男子だんしはいやらしいむねとかてくるし、女子じょし女子じょしわたし美貌びぼう嫉妬しっとしてか、意地悪いじわるしてくるし。どうもね、女子じょしのリーダーのきな男子だんしが、わたしこときだったらしいのね。それでイジメられてた」

「ひどい……」

「まあ、わたし生意気なまいきだったからさ。で、高校こうこうもぼっちなんだろうなっておもってた。1学期がっき中間ちゅうかんテストのあとだっけ?席替せきがえで小雪こゆきちゃんのとなりになってさ。おひる優子ゆうこちゃん智子ともこちゃんがやってきてさ。わたしはどっかえようとおもってたんだけれど、小雪こゆきちゃんが、『一緒いっしょべない?』ってってくれてさ。ことわってかどつのもいやだったから、渋々しぶしぶ一緒いっしょしたんだけれど」

渋々しぶしぶだったのか〜★さそわなきゃかったね?」

「まあ、そうわないでよ。わたし、しゃべるの苦手にがてだったんだけれど、ちょっとずつしゃべるようになってさ。たのしくなってきてたんだけれど。でも、2学期がっきになって席替せきがえで、はなばなれになって。『またぼっちに逆戻ぎゃくもどりか』とおもってたら、小雪こゆきちゃんがお昼誘ひるさそいにてくれて。『もう友達ともだちでしょ?』って、あれいまおもしてもきそうなくらいうれしかったな」

「そっか、苦労くろうしたんだね?よしよし」

 あたまでしてあげる。

「でもいましあわせだよ。まあ、弘毅ひろきにはおもうところもあるけれどさ。小雪こゆきちゃんをかせたらゆるさない!ギッタンギッタンにしてやる」

「えーと、イジメられっだったんだよね?」

「うん。やられたらやりかえしてやったけれど、倍返ばいがえしで♪」

「あはははは……」


 お風呂ふろからあと、お布団ふとんでは。

 妹役いもうとやく裕美ひろみちゃんにパジャマのうえから、これでもか、とばかりにむねまれたんだけれど、その程度ていどでした。

 2日目ふつかめ以降いこう恋人未満こいびとみまんでしたよ?うふふふふ♡


 恒例こうれい次回予測じかいよそく

 小雪こゆきちゃんの友達以上ともだちいじょう恋人未満こいびとみまん高橋裕美たかはしひろみです💕今回こんかいは、小雪こゆきちゃん成分せいぶんう〜んと補給ほきゅうした〜♡これで氷河期ひょうがきてもきていける💝

 さーて、来週らいしゅう放送予測ほうそうよそくは?

 河野弘毅こうのひろき浮気うわき発覚はっかく小雪こゆきちゃんとわたし殺害さつがいしてバラバラに切断せつだんやまめにくというおはなしです。

 小雪こゆきちゃんをかなしませるヤツは、このチェーンソーの餌食えじきにしてやるんだから☆あーっはっはっはっはっは♪

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