第7話GW2人きりの夜(前編)

 どうしてこうなってしまったのだろう?

 ゴールデンウィーク、あのひといえごすことになってしまった。はやまったことをしてしまったのではないか?

 あのひと家族かぞく親戚しんせきうちき、今夜こんや2人ふたりきり。わたしは、はじめてはいったいえで、シャワーをび、シャンプーなんてしている。

 わたしがいつも使つかっている安物やすものシャンプーの『メソット』とはちが高級感こうきゅうかんただようシャンプー。あ、なんかいいにおいだな♪わたしみたいな貧乏人びんぼうにんには、勿体もったいないくらい。遠慮えんりょがちにシャンプーえきって、かみにつけてあらう。

 うちは、はは1人ひとりひとり母子家庭ぼしかていだから、シャンプーなんかにおかねをかけられない。

 ちちわたしまれるまえ事故じこくなったといている。それが本当ほんとうことなのかどうか、わたし疑問視ぎもんししている。

 でも、ははちちことくわしくはなしてくれないのは、それなりに事情じじょうがあるのだとかんがえている。

 いつか、わたしがもうすこおおきくなったら、本当ほんとうことかされるのではないか、ということは覚悟かくごしている。

 だから、もしかりちちひところして刑務所けいむしょにおつとめめしているとしても、必要以上ひつよういじょうおどろかないようにしたいとかんがえている。『殺人犯さつじんはん』よりもおどろくような事情じじょうは、そうそうないであろう。なので、わたしはは告白こくはくおどろかない自信じしんがある。

 かみあらながす。

「あれっ、石鹸せっけんは?」

 あたらない。石鹸せっけん用意よういしてないなんて、うっかりさん?

 ううん。そんなはずはないだろう。シャンプーボトルがこんなにあるんだし、ひょっとして……。

 やっぱり、ボディソープだ。ハンドソープなら使つかったことがあるが、ボディソープなんて高価こうかなモノを……。

 うちは、ほぼミルク石鹸せっけん一択いったくである。一時期いちじき薬用石鹸やくようせっけんAqoursアクアだったこともあるけれど、あのにおいはれなかったな。

 おお、あわてくるぞ!なんかうれしい。うちのミルク石鹸せっけんでは、この泡立あわだちは不可能ふかのうだ★

 かおだけさきあらったあと、ボディソープをしっかりちゃっかり泡立あわだてて、スポンジで身体からだあらっていく。泡立あわだちの歴然れきぜんで、あらっていてたのしい♪

 これが、王侯貴族おうこうきぞく平民へいみんなのね、とかおもってしまう。

 夢中むちゅうになっていると、ガタッとおとがして、おどろいてくと、そのひと一糸纏いっしまとわぬ姿すがたで、浴室よくしつはいってくるところだった。


 はなしはゴールデンウィークを直前ちょくぜんひかえたそのさかのぼる。

 というと、日数にっすう経過けいかしたみたいにおもえるかもだけれど、なんことはない。

 前回ぜんかいだい5963かいこいバナフォーラム2019の翌日よくじつ出来事できごとである。

 あれ?そんなタイトルだっけ?と、かえっていただかなくても結構けっこうである。タイトルなど、おもいつきで適当てきとうに、いや、テキトーにつけているのだから★

 なんとこの文芸部ぶんげいぶには10にん部員ぶいん勢揃せいぞろいした。

 そう、コーキくんこと河野弘毅こうのひろき文芸部部長ぶんげいぶぶちょうと、ショーマくんこと江口翔馬えぐちしょうまくんは、見事みごと昨日さくじつにん新入部員勧誘1年生の洗脳成功せいこうしたのである!

 吾々われわれ女子じょしチームが、恋バナ談議エロトークはなかせているあいだに、1年生ねんせい1人ひとりずつ拉致監禁らちかんきんし、『この開運かいうんつぼ購入こうにゅうすれば、幸運こううんががっぽがっぽと、津波つなみweb小説ウェブしょうせつサイトの雨後のタケノコ異世界転生モノごとせます』とか、『吾々われわれ宗教しゅうきょう入信にゅうしんすれば、教祖様きょうそさま同様どうようインチキ超能力素晴らしいチカラれること出来できます』などとせまったのであろう。正直しょうじきあたまがるおもいである。

 新入部員しんにゅうぶいんは5にん全員ぜんいんが1年生ねんせいで、うち4にんとのちである。

 以前いぜん、コーキ部長ぶちょうれてきてたカレはふたた地引じびあみかってしまったらしく、今回こんかいはラブラブライブ!の矢澤やざわぬこちゃんのおなじみの『ぬっこぬっこぬー♪』ポーズのカラーコピーイラストをのこしていってくださった。

 新入部員しんにゅうぶいんたちには、部誌掲載用ぶしけいさいよう原稿執筆依頼宿題提示ていじしてかえってもらった。ただ1ひとり

「あのですねじつ以前いぜんから文芸部ぶんげいぶには興味きょうみがあったんですよおでもどおしようかなとかんがえていたら入部にゅうぶするキッカケをなくしてしまってう〜んこれはまずいぞとかおもはじめていたところなのでおさそいただいてとってもうれしいです、それでわたしなにこうかとおもっているかをおはなしするとですね……」

 唯一ゆいいつ文芸部専属ぶんげいぶせんぞくになったおんな音無響美おとなしきょうみちゃんは、おそらくくちからさきまれたにちがいないというほど能弁ゆうべん美少女びしょうじょであった。ほぼ息継いきつしでしゃべりつづけるその姿すがたに、3年生ねんせいにん圧倒あっとうされつづけたのであった。

 そして何故なぜだか理由りゆう不明ふめいだけれど、ショーマくん星鶴ほしづる一声ひとこえで、彼女かのじょ愛称ニックネームは『ぴよぴよ』になってしまった。

「ぴよぴよいですねえひよこみたいで可愛かわいいですひょっとしてこれはわたしがひよこけい美少女びしょうじょっていうことですか?清楚せいそ純情可憐じゅんじょうかれん乙女おとめわたしにぴったりですねこれからわたし文芸部ぶんげいぶのマスコットけい超絶美少女ちょうぜつびしょうじょとして学園生活がくえんせいかつおくっていくことになるわけですねなるほどなるほどそれで……(以下省略いかしょうりゃく)」

 個性的こせいてき面白おもしろではあるのだが、ぶっちゃけ、一緒いっしょにいて超疲ちょうつかれるでもある。

「あっごめんなさいもう訳無わけないですけれど今日きょう家庭内かていないにおけるウルトラ重要じゅうよう用事ようじがありましておいとまさせていただかなくてはならないのです先輩方せんぱいがたいてさきかえるなど言語道断ごんごどうだん地獄じごくちやがれみたいにおもわれてしまうかもしれないのですけれどそんなふうにおもわれてはわたし繊細せんさいなひよこハートがけてしまうのでここはどうぞ穏便おんびんに……(以下省略さっさと帰りやがれ!)」


すごだったね〜。なんか『ぴよぴよぴよぴよぴよ〜っ!』ってかんじで……」

 チコこと三ヶ月智子みかづきともこう。

昨日きのう獲物を物色新入生勧誘してるとさあ、ずーっとこっちてるわけよ。文芸部ぶんげいぶはいりたいのかとおもって声掛こえかけたら……。おれ一言ひとことったら、30ばいになってかえってくるんだぜ?あれは辟易へきえきした……」

 ショーマが勧誘時かんゆうじ経緯いきさつはなしてくれた。想像そうぞうしただけで、つかれが行列ぎょうれつをなしてせてきそうだ★

「あの、ぴよぴよちゃんって、もしアニメされたらだれ声優せいゆうやるんだろう?」

 ユミこと高橋裕美たかはしひろみ疑問ぎもんくちにする。

「う〜ん、そうだねえ。あの息継いきつしのバルカンほうトークは、如何いかにプロの声優せいゆうさんでも再現さいげん不可能ふかのうかもしれないね。ご本人様ほんにんさまこえてるか、あるいは、ボーカアンドロイドの初美はつみミクちゃんを起用きようするか」

 コーキ部長ぶちょう意見いけんべる。たしかに、あれを再現さいげんするのはほねれそうだ。

「ちょっとわたしのしゃべりかたをからかうのはよしてくださいよ〜おほかひとよりちょっぴり早口はやくちなだべっ!」

 んだっ!ショーマくん盛大せいだいんでしまった!

「あのしゃべりかた真似まねするのは、常人じょうじんには無理むりなんじゃないかなあ?いてるだけで窒息死ちっそくししそうになる」

 チコのらした感想かんそうみなが、うんうんと首肯しゅこうする。

「でも面白おもしろだよね?やるもあるみたいだし、裏表うらおもてさそうにえた。次期部長じきぶちょうそうかとおもってるんだけれど……」

 コーキ部長ぶちょうけに、会話がストップする天使が通る

 そうなのだ。原則げんそくとして、1学期がっきで3年生ねんせい退部たいぶすることになるのだ。文化祭ぶんかさいときには、OBとして参加さんかすることとなる。

 なんやかんやあったけれど、みんな面白おもしろいメンバーばかりでたのしかった。その関係かんけいがもうすぐわってしまうというのはさみしくて、ちょっぴりおセンチになってしまうのはわたしばかりではいようだ。

「ぴよぴよちゃんが部長ぶちょうか〜。たのしそうだよね。わたし部活辞ぶかつやめても毎日まいにちあそびにちゃうかも♪」

 チコがうけれど……。

「そうしたいのはやまやまだけれど、受験勉強じゅけんべんきょうなり就職活動しゅうしょくかつどうなりをしなくちゃいけないからね……」

「そ、そうでした」

 しみじみとうコーキ部長ぶちょう言葉ことばにチコがおどけてかえす。

 高校こうこうは3年間ねんかんだけれど、実際じっさい青春せいしゅん出来できるのは2ねん数ヶ月すうかげつなのだ。

わたしあとになって後悔こうかいしたくない。だから、いましか出来できないことには全力ぜんりょくみたい!」

 そうはっきりと宣言せんげんしたのはユミだった。莫迦ばかばっかやってるイメージだったけれど、そんなあついところもあるんだ!

 ちょっと感心かんしんした。

「ユミちゃんが、そんなふうにうなんて意外いがいで、キャラじゃないかんじ?でも、そんなユミちゃんもいとおもうよ?」

 わたしうと、かおにしてれることしきり。そんなユミをちょっと可愛かわいいとかおもってしまった。

 それからもなくしておひらきとなった。チコとショーマは、用事ようじがあるらしく帰宅きたく。ユミはかえるかどうするかまよっていたようだけれど、コーキくんが、

すこ出掛でかけてくる」

うのをいて、のこ決心けっしんをしたようだ。

「ねえ?わたしたちもお菓子かしでもってこない?」

 わたしたずねると、真面目まじめかおをしてなにいたげに、くちをもしょもしょうごかしていたユミだが、

「うん、わかった」

がる。

 なんか、今日きょうのユミは様子ようすへんだな、とおもいつつも、一緒いっしょ部室ぶしつちかくのドラッグストアにかった。


 ものものってきて、部室ぶしつへともどってきた。

 現在げんざいは、小説しょうせつ執筆しっぴつするための準備作業じゅんびさぎょうかっている。

 具体的ぐたいてきには、スマートフォンで必要ひつようとする情報じょうほう調しらべて、資料しりょうつくっている。

 タイムトラベルをして自分じぶんまれるよりまえ時間じかんくと、戸籍こせきがない。

 戸籍こせきがなければ、アパートをりることも、就職しゅうしょくすることも、運転免許うんてんめんきょなどの資格しかく取得しゅとくすること出来できない。

 そのような場合ばあいに、家庭裁判所かていさいばんしょ利用りようして、みずからの戸籍こせきつくるシステムが存在そんざいする。それを『就籍しゅうせき』という。

 タイムトラベラーが、過去かこ世界せかいき、そこで定着ていちゃくして生活せいかつをするのであれば、就籍しゅうせき記述きじゅつ不可欠ふかけつであろう。

 これにかぎらず、小説しょうせつくという作業さぎょうは、様々さまざま知識ちしき必要ひつようとする。

 SF小説しょうせつだから、そのへん曖昧あいまいいや、ということにしてしまうと、うすっぺらい非現実的ひげんじつてきな内容ないようになってしまい、とても感情移入かんじょういにゅうしての読書どくしょにはえないモノとなってしまうだろう。

 ネットで検索けんさくして、こまかな手続てつづきやら要件ようけんやらを調しらべていると、ユミの視線しせんかんじた。

何見なにみてるの?」

 作業さぎょうめ、ユミのかおつめる。

「おゆきちゃんは熱心ねっしんだね♪おゆきちゃんだったら、いつかSF作家さっかになれるとおもうよ☆」

「ありがとう♡」

 素直すなおうれしい。わたしはタイムトラベルモノ小説しょうせつ決定版けっていばんきたいとおもっている。100年先ねんさきまでのこって、SFの古典的名作こてんてきめいさくばれるような作品さくひんのこしたいのだ。

 そのレベルの作品さくひんくためには、生半可なまはんか努力どりょくではりないであろう。

 量子論りょうしろん相対性理論そうたいせいりろんなどの知識ちしきは、最低限さいていげん必要条件ひつようじょうけんだれいていないアイデアをみ、読者どくしゃ知的好奇心ちてきこうきしん存分ぞんぶん刺激しげきし、さらおおきな感動かんどうあたえること出来できないと、100年先ねんさきまでのこ名作めいさくなどけっこない。

 ハードルはあまりにもたかいけれども、不可能ふかのうではないとしんじたい。ほかだれが、

『そんなこと出来できるはずがない』

と、ネガティブな暗示あんじ執拗しつようけてこようとも、わたしだけは自分じぶんことしんつらぬいていかなければならない。

 そのような過酷かこくゆめだが、親友しんゆうに、

『SF作家さっかになれる』

われたら、勇気ゆうきいてくる。

「ユミちゃんはどこまですすんだの?」

全部書ぜんぶかえた」

「へっ?」

 頓狂とんきょうこえしてしまう。はやい、あまりにもはやい。

せてもらっていかな?」

 ライバルの動向どうこうおおいにになる。なにせ、昨年度さくねんど文芸部ぶんげいぶ部誌人気ぶしにんきNo.1ナンバーワン作家さっかなのである。

「うん。むしろ、おゆきちゃんに一番いちばんてもらいたかった☆」

 ユミが原稿用紙げんこうようしす。綺麗きれいかれたそれをる。

高橋先生たかはしせんせい拝読はいどくさせていただきます」

「よろしくおねがいたします」

 すこ緊張きんちょうした面持おももちのユミ。さすがのユミでも、はじめてひとまれるとき緊張きんちょうするんだな。

 作品さくひん内容ないようは、仲良なかよしな女子高生じょしこうせい2人ふたりがいる。一方いっぽうはあるあさ目覚めざめると身体からだ男性だんせいになっていた。こまってしまうものの、あせって問題もんだい解決かいけつするわけじゃないとひらなおり、ある計画けいかくてる。両親りょうしん不在ふざいになるとき見計みはからって、仲良なかよしの相手あいていえさそって、えっちをしてしまおうというモノだ。

 おもてではせないような描写びょうしゃ強引ごういんちからずくではなく、おたがいが相手あいておもってのラブラブえっち♡

 えっちのあと男性化だんせいかしてた身体からだもともどるんだけれど、今度こんど相手あいてほう男性化だんせいかしてて、それでは立場たちばえていたしましょうかというオチまでついていて……。

んだ」

 原稿用紙げんこうようしつくえうえにおいて、身体全体からだぜんたいユミのほうう。

「そ、それで評価ひょうか如何いかがだったでしょうか?」

 緊張きんちょうかたくなったユミがいてくる。

こまる」

こまる?」

 オウムがえしするユミ。言葉ことばしたがうように、その表情ひょうじょうこまがおになっている。

「うん。こんなに面白おもしろいなんてゆるせない。小説家しょうせつか目指めざしてるわけでもないユミが、ここまですごいのけるなんてずるい!」

と、ここまでって、感想かんそういてたユミがきそうになってるのにいた。これ以上いじょう意地悪いじわる出来できないな★

「ウソウソ。こまるってのは本当ほんとうだけれど、そんなことでユミのこときらいになったりしないよ……」

 ユミのまっていたなみだが、ぶわってあふれて、ぼろぼろとこぼした。あれ、かしてしまった!なんで?

 これはまずいとおもって、おもわずハグしてしまった。をあやすイメージで背中せなかかるくぽんぽんとたたく。

 1分程いっぷんほどそうしてたら、ユミもいてきたようだ。

「ごめん。感情かんじょうたかぶっちゃって!」

「ううん。ダイジョウブだよ。でも、今年ことしも、人気投票にんきとうひょうはユミちゃんにけそうだな」

「じゃあ、これはさない!」

「え、いや、そういうつもりでったんじゃ……」

じつは、おゆきちゃんに相談そうだんがあるんだ……」

相談そうだん?」

 唐突とうとつわれてびっくりした。でも今日きょうのユミは、なにかと様子ようすがおかしかったから。なやごとがあったんだろう。納得なっとく

いてくれる?」

「ダメ!……とはえないな。大切たいせつ親友しんゆうたよってくれてるのに、それをないがしろにするくらいなら、わたしはいつでも人間オンナをやめてやる!」

 わたしかたがおかしかったのか、ようやくユミがすこわらった。おずおずとはなしだす。

「あのね、わたしきなひとがいるの……」

 りそうなこえ何故なぜだろう?今日きょうのユミは、弱々よわよわしくて、はかなくて、はなすとえてしまいそうにおもえる。

「ダイジョウブだよ!わたしだれにもったりしないし、応援おうえんするから!」

最初さいしょっておくね?わたし、おゆきちゃんの恋路こいじ邪魔じゃまするつもりはないから……」

「うん!ううんっ?」

 ま、まさか、ユミのきな相手あいてって……。あたまをガンッ、となぐられたような衝撃しょうげきかんじた。

 そうか、ユミもコーキくんこときだったんだ!たしかに、コーキくん素敵すてきだし、ユミはコーキくんことわるったことないがする。

 でも、マジかーっ!親友同士しんゆうどうしでトラグルか〜。あ、トラグルってのは、『トラブル』+『トライアングル』ほぼイコール三角関係さんかくかんけい』のことね。

 不安ふあんそうに上目遣うわめづかいで見上みあげてくるユミ。そんなお目々めめうるうるチワワまなこつめられたら、邪険じゃけんになんて出来できなくて。

「あー、うん。でも、これは応援おうえん出来できないかな?朝令暮改ちょうれいぼかいもうわけないけれど。でもユミだって、わかるよね?」

 こくこくとうなずくユミ。

「でも、マジか〜っ!2人ふたりしておな相手あいてきになるなんて……」

 わたしつぶやきに、まるくするユミ。

「おゆきちゃんっ!ちがうよっ!わたしきなのは、おゆきちゃんなのっ!」

「なっ!」

 われてはじめていた。われてみたら、おもたるふしがてんこりだ!

 むねさわってくること今日きょうのユミの態度たいど今読いまよんだばかりの小説しょうせつ内容なかみetcエトセトラetcエトセトラ……。

 そうか、そうだったのか。わたしってば、なんて鈍感どんかんなの〜っ!ここまで、猛烈もうれつアタックされてるのに気付きづかないなんてラノベ主人公並しゅじんこうなみじゃないか!

 じつ今日きょう、コーキくん告白こくはくするつもりであった。

 ヤサコの成功率せいこうりつ70%をどころにして、ぜんいそげ、たってくだけろ、だんじておこなえば鬼神きしんもこれをく……。

 そんなに、さき告白こくはくされるなんて。しかも相手あいては、超絶美少女ちょうぜつびしょうじょにして大親友だいしんゆうのユミってどういうことよ!ねえ、ちょっと!これなんてラノベ?

 まえで、お目々めめをうるうるさせながらも、ひたすら健気けなげつづける小動物系しょうどうぶつけい美少女びしょうじょ。あ〜、もうこれ、どうしたらいいの?どうするべきなの?かんがえてもわからないよ。かんがえてわからないなら行動こうどうあるのみ!

「ユミちゃん!」

「は、はひっ!」

 ユミがんだ。このもいっぱいいっぱいなのだろう。

わたし今日きょうコーキくん告白こくはくするから!告白こくはくした結果けっかまえて、明日あす返事へんじをするから!だから、1にちだけかんがえさせてくださいっ!」

「はい……」

 ってしまった。1にちってみじかすぎじゃね?『すこし』とか『しばらく』とかかんがえるべきじゃね?なおそうか?

 そうかんがえていると。

「おゆきちゃん!わたし、おゆきちゃんのこいみのったらいって本気ほんきおもってる。おゆきちゃんが失恋しつれんして、わたしにターンがまわってきたらい、なんて絶対ぜったいおもってない!でも同時どうじに、わたしがおゆきちゃんのことおも気持きもちも……。このあふしてめられないおもいも本物ほんものだからっ!」

 そそくさと小説原稿しょうせつげんこうをしまい、がるユミ。なみだぐみながらも、全開ぜんかい笑顔えがおで。

わたし気持きもちよりも、おゆきちゃんのしあわせのほう大事だいじだから。優先順位ゆうせんじゅんいうえだから。コーキくんとのこいみのるよう、全力ぜんりょくいのっていますっ☆」

「えっ、あの……」

 わたし言葉ことば反応はんのうせず、ユミは部室ぶしつしてった。

「ユミちゃん、どうしたの?いてたみたいだけれど?ケンカでもした?」

 ユミとわりにはいってたのは、河野弘毅君こうのひろきくんだった。


 恒例こうれい次回予測じかいよそく

 恒例こうれい次回予測じかいよそくのコーナーです。なんか、前回ぜんかいで『最終回さいしゅうかい予告よこく』をえてしまったそうなので、こんなへんてこりんなコーナーがはじまってしまいました。

 ヤサコこと、坂下優子さかしたゆうこです。

 まず、今回気こんかいきになったのは、冒頭ぼうとう浴室よくしつシーンね。これ、最後さいごはいってきたのがおとこなのか、あのおんななのか。おそらく、その二択にたくでしょう。

 もしこれが、わたしんちのお風呂ふろとか、今回こんかい初登場はつとうじょう音無響美おとなしきょうみちゃんとかだったら、なんじゃそれ、ってことになっちゃうわよね。

 さて、こい行方ゆくえですが、もしコーキくんがユミちゃんのこときだったら、見事みごとに、こい一方通行いっぽうつうこう三角形さんかくけい矢印やじるし出来上できあがりなんだけれど、さすがに友達ともだちこいあそにはなれないわ。

 でも次回じかいで、このこい行方ゆくえ一応いちおうのカタがつくとるわ。カタがつく確率かくりつはそうね……、85%といったところかしら?

 それでは、来週らいしゅう放送ほうそうをおたのしみに♡

 さようなら☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る