エピローグ

九月に入り、新しい学期が始まった。暑さは依然ひどく、残暑が増したようにさえ感じられる。それでも夜になれば涼しい風が吹き始め、もう夏が終わるのだと意識できるようになっていた。


「今日の夜、何を食べる?」

詩織はPCから顔を上げて言った。

「そうだね・・・おでんなんてのはまだ早いし、何がいい?」

「おでん?いいじゃない、白滝食べたい。あと、じゃがいもとがんも」

「こんにゃくは?」

「いらない」

詩織は、次の舞台の脚本を書いていた。


 その後、マスターから月一回ぐらいの頻度で今後もやってみないかと言われた。タカシと話をして、次回はとりあえず再演をやることになっている。その後はタカシの知っている別の脚本を考えてもいいし、また詳しく話して行こうということになっていた。

 詩織は、次の話は「冬のバス・ターミナルでバスを待つ話」にしたいと言っている。

「おもしろいの?」と聞いたら、

「おもしろくするのよ」と応えられた。

 

 恭介は、今日の夕食はコンビニで買ってくることにしてアパートを出た。外はもう暗くなっており、周りの家ではとっくに夕食を終えているのだろうと感じていた。恭介は、人通りの少なくなった道を歩きながら、星の出ている空を見上げた。街灯や家の光でぼやけたようにしか見えなかったが、それでも幾つかの星が空に貼り付いているのがわかった。

「明日は、どんな日になるだろうか」

そう恭介は思いながら、空に雲が少ない様子を見ながら「きっと晴れるだろう」と考えていた。晴れ上がった秋の空が高く、かすれたように伸びた雲に手を差し出す。届きそうで届くわけも無く、握る手に残る感覚はそれでも何かを握り締めていた。

 恭介は、

「雨なら雨でもいいな」

そう呟いて・・・夜の道をコンビニへと向かった。













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きっと僕らの始まりと終わり @tsuboy

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