第10話


「よく、いらした」


俺の目の前には、よほど久しぶりの再会が嬉しかったのか涙ぐみながら迎えてくれた紳士がいた。

俺らが部屋に案内された時に身体を起こしたのか、ベッドの背もたれにフカフカのクッションを支えに上半身を起こしてはいるが、身体の中の魔石の光から相当弱っている事が伺えた。


がっしりとした体躯から、昔は騎士として名を馳せていたのかもしれないなと思う。


「将軍、こちらがシルベスターです」

アルが、俺を紹介する。


俺は、貴族の前でするという敬礼をしながら「シルベスターです!」と言った。


「面影が…よく似ている…」

敬礼をした後、俺の顔を見て一層涙を浮かべ、何故か将軍が、そう呟いた気がするが俺はこの紳士は知らない。

俺の親でも知っていたのだろうか。

そう思い、聞こうとしたらアルが俺の前にでて来て「将軍…」と紳士の涙をぬぐう。


「はっはっは。アルベルトから涙をぬぐわれるとはな。ワシも歳をとった。最近、涙もろくていかんな」


アルベルト?アルベスターじゃなくて?

疑問が顔に出ていたのか、グランが「アルのあだ名だよ」とニコリとほほ笑む。


「アンゼリーゼ様も、よくいらっしゃいました。一段とお綺麗になられましたな。アルベルトはあなた様の役に立っていますかな?」

「ええ。毎日とても助かっています。大切な私の家族です」

ほう、家族。それはよかったと将軍は少年のように笑った。


執事が再びメイドと共に姿を現し、俺たちにお茶を勧めた。

グランの勧めでアルが将軍を支え、将軍も席に着く。


俺に家族がいたとして、おじいさんが生きていたとしたら将軍みたいな感じなのだろうか。

その後、俺たちは他愛のない話しをして、その和やかな時間を楽しんだのだった。


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