第3話

シルベスター 魔法屋勤務、20歳。金髪碧眼の好青年。

石喰いの才能を認められ(たのかは、甚だ疑問だが)、少年時代にシルバーピンクの髪をした少し年上の少女グランと、現在も隣にいる従者のアルに拾われる。

拾われる以前の記憶は、ない。


俺の人生はそんな感じだ。


気が付いたら、凛とした俺よりほんの少し年上の少女の養子になっていた。

拾われた時の歳が、多分12歳くらいだから、俺を拾った時のグランの年齢は17歳とかそんなもんになるはずだ。


拾われて、何故かグランの養子なった俺だが、今考えても17歳の小娘が、12歳の汚い少年を自分の子供にしようなどと思うのが、もう思考回路がぶっとんでいるとしか思えない所業だ。


いや、感謝はしている。


いや、アルに至っては、その頃と全く姿形が変わっていないのは何故なのか。

17歳の、仮にもお嬢様が12歳の年頃の少年を自分の養子にするって言った時点で止めるべきだよね普通。


なので、アルに至っては感謝ではない別の感情もある。


行き倒れて、記憶のない俺が目を開けて一瞬にして一目ぼれをした少女が俺の義理の母になっていると聞かされた時の、俺の衝撃を10文字で答えなさい。


なので、その少女の所業を止めなかったアルに関しては、恨みしかない。


どうすりゃいいのさ、俺の青春。


12歳からの生活は、以前の記憶がすっぱりとない為、魔力がある者が通うと言われる学園に通う前にお嬢様、グランからの教育がなされた。


グランは多分、お嬢様なんだと思う。


多分と言うのは、広いお屋敷を持っていたからだ。

持っていた。と、過去系なのは、売ったからだ。


俺がグランと住んでいたのは、そのお屋敷ではなく、郊外の小さな家だった。

グランにはアルしか側近はおらず、俺はグランの両親も知らない。


もしかしたら、大戦で皆いなくなったのかもしれないなと思う。


俺自身も、記憶がないから両親のこと。

本当の名前の事。全部分からない。


シルベスターはアルが付けてくれたらしい。


何故、グランではないのか。


とりあえず、学園に通えるくらいの能力や知識、常識が身についたころには、見た事もないが、お屋敷とやらを売ったお金で、大通りのとある土地とその一つ入った小道の一体を全て建物込みで購入して、『まほうや』を開店させていた。


元々、喫茶店はグランがオープンテラスでお茶がしたいというから、隣の土地にアルが可愛いお嬢様だけの専用の喫茶店を作ったのがはじまりだ。


そのうち、魔法屋のお茶やお菓子がその場で食べられれば嬉しいというお客様からの要望でアルが店主となって喫茶店も営業することになったのだ。


ともかく、道端で倒れていた俺は、不思議な縁でグランの養子になったのだ。

高等学園では、それなりにモテてはいたが、グランの比ではない。


青少年の扉が開いたとかなんとかアルとグランがさっき騒いでいたが、そんなのはもうとっくに俺の中で開いている。


拾った少年で養子の立場なのだから、子供にしか見えないのかも知れないが。


俺は、もう、とっくに大人の恋をしている。

と、自覚している。


破廉恥だと騒いだが、破廉恥なのは。

アルでも。グランでもなく。


俺自身なのだ。

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