プロローグ 伊藤ほのかの日常 その二
電話のなるタイミング良すぎ! でも、助かった!
「……分かった。頼む」
作戦の準備が出来たみたい。
先輩がゆっくりと右手を挙げる。場が静まり返って、緊張感が高まっていく。
不良達も
「やれ」
先輩の右手を振り落した瞬間、二階から不良達めがけて
いきなりのことで不良は
「クッ、クソが!」
「逃がすか!」
難を逃れた不良達は先輩、御堂先輩、朝乃宮先輩、長尾先輩が次々と地面に叩き伏せ、捕まえていく。
どうか誰にも気づかれませんように!
そっと周りを観察していると……あっ、一人の不良と目があっちゃった。
「……」
「……」
お互い一秒くらい見つめ合う。
て、てへ! とりあえず、笑顔で気に抜けようとしたけど、
「こうなったらお前だけでも道連れにしてやる!」
ダメでした!
いやぁああああああ! 止めて、来ないで、近寄らないで!
不良が大きく振りかぶって、殴り掛かってきた。
「先輩!」
私は目をつぶって頭を抱えてうずくまる。
バシッ!
……どうなったの?
いくら待っても痛みがこないことを不思議に思った私はゆっくりと目を開ける。
目の前に拳がある。不良の手首を先輩が
「ふ、藤堂~!」
「残念だったな、
先輩は力強く踏み込み、腰の入った
不良は
「大丈夫か、伊藤?」
座り込んでいる私に、先輩は手を
「はい! 先輩……怖かったです~」
私はその手をぎゅっと
周りを見ると、不良達はほぼ取り押さえられ、あらかた
終わった……。
私は
「私、帰るから」
「ほな」
「お疲れ~」
御堂先輩、朝乃宮先輩、長尾先輩が風紀委員室から出ていく。
風紀委員からは怪我人なし。御堂先輩と長尾先輩が
警察に突き出すのかと思ったけど、そうじゃなかったみたい。まあ、委員会が警察の真似事なんてできっこないしね。
青島の不良達には暗黙のルールみたいなものがあって、喧嘩に負けたら、勝った方の言うことを聞くみたい。
もちろん、なんでもって事じゃないからね! 傘下に入るみたいなノリだから。
簡単に言えば、お前は負けたから、解散するか大人しくしろってことだよ。
ここらへんの価値観は独特だからまだついていけないけど。
とりあえず、先輩が報告書を作成したらこの件はお終い。
ああ……疲れたよ。足に力が入らない……まだ震えてる。怖かった~怖かったよ……。
三十人以上の不良達に囲まれる経験は
やっぱり、現実とアニメは違うよね。高い授業料だったよ。
ようやく夏の暑さが引いてきたと思っていたのに、熱気で嫌な汗かいちゃった。
窓から生暖かい風が入ってくる。体が冷めるまでもう少しかかりそう。
私、臭わないかな?
私は先輩から少し距離をとる。
「伊藤も帰っていいぞ」
「私、先輩が終わるまで待ってます。終わりましたら一緒にお茶しません? 打ち上げしましょうよ!」
先輩が苦笑している顔を私は机にうつぶせになって見つめていた。
机がひんやりとして気持ちいい。
「僕もいってもいい?」
橘先輩の意地悪な笑みに、私は否定の言葉をぐっとのみこむ。私はひきつった笑顔で返事する。
「も、もちろん!」
「嘘だよ。二人でいってきなよ」
なら最初から言わないでよ、
橘先輩の全部わかってますって顔がムカつく! しかし、ここで顔に出すわけにはいかない。なんだかんだで援護射撃してもらったのだから。
先輩は手を動かしたまま、私の方を見た。
「そうだな……いくか」
「やった! ゴチになります!」
「調子に乗るな」
先輩の少し
この
真っ赤な夕日の光が窓から差し込んでくる。窓から聞こえる部活にいそしむ部員の声を聴きながら、私は足をぶらぶらさせながら先輩が報告書を書き終わるまで待ち続けた。
「せんぱ~い! 早く早く!」
「喫茶店は逃げないだろ」
「逃げませんけど、『BLUE PEARL』が私を呼んでいるんですよ! 先輩もあのお店のコーヒー、好きですよね!」
スキップしたいのを
今日は何を食べようかな~。今月はまだお
どーーーーーーーん!
「きゃ!」
な、何々、何なの?
あまりにも
ええっと、信じられないかもしれないけど、見たままのことを言うね。
そ、空から男の子が降ってきた! しかも、全身傷だらけ! 何があったの!
「バ、バーニング……」
意味不明な言葉を残して男の子は気絶した。手にはラケットが
文字通り、
風紀委員 藤堂正道 ハーレム男の栄光と落日 恵鉄 @keitetsu
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