第20話 表に出なかった物語

 さて、20話目です。


 ここまで書いてきて、なんとなく10話区切りでテーマを変えようかな、と考えています。


 そんなわけで「悪戦苦闘編」最後の1話です。立て続けで恐縮ですが、今回もまだ表に出ていない物語について語ろうと思います。


 ただ、前回語った長編と違って、今回語る話はどれも基本的に完全なボツネタです。復調したとして、形にすることはまずないと思います。



☆魔法少女症候群(仮)


 某所で1話だけ公開してたんですが、いまはもう引っ込めてます。


 構想としては、ある日ふと思いついた「魔法少女院」という設定が核となっていて、1話完結の中編の予定でした。が、世界観をきちんと描こうと思ったら、どんどん嵩が増していき、最終的に短編4本に中編1本を束ねた変則的な構成になっています。


 設定をもうちょっと具体的に語ると、魔法少女症候群と呼ばれる現象により、突如魔法の力を得た少女たちが、悪の魔法少女たちと戦うというもの……と言いたいところですが、実はそこはあんまり重要じゃなくて、むしろ、その役目を終えた魔法少女たちが魔法を捨てるために入る施設「魔法少女院」という設定の方が主眼でした。


 なので、主な舞台は魔法少女院になります。魔法少女ものなのに、基本的に魔法が使えない、という変な話です。主人公はその施設に同期として入所した4人の少女で、彼女たちがそれぞれ短編の語り手を務めるという構想でした(ちなみに完結編となる中編では彼女たち4人の視点を順繰りに回すという無駄にめんどくさい構成になる予定でした)。


 当時よく読んでいたSFから強い影響を受けているのですが、やはり学がないので難しく、SF的なロジックを中心に構成するのは断念しました。そうした試行錯誤の末、けっきょくミステリの構成に落ち着いてます。ただ、設定の見せ方に関してはこの作品を書いてるときに学んだことも多く、破綻をごまかす手法に気づいたのもこの頃だったりします。


 プロットそのものはほとんど完成していて、特に前半の短編4本は本編の執筆もかなり進んでいたのですが、時間が経つにつれキャラクターや設定がチープに思えてきてモチベーションを失っています。具体的に言うと、キャラクターがあんまり女の子らしくなかったり、あるキャラが最強設定なのにその強さをうまいこと理屈づけられてなかったりしたのです。


 この辺は見せ方次第で改善できる気もするんですけどね。それに、一番文章力があった頃に書いたのもあって、いま読み返してみてもはっとさせられる表現が多い。そんなわけで、なんかもったいない気もするんですが、作風がだいぶ変わったのもあって形にするのは難しいだろうなあと。あるいは、ほとんど完成してる短編4つだけ公開することになるかも。



☆book stories(仮)


 知性を持った本をテーマにしたSF連作。


 元々、同人誌に寄稿する予定だった話です。カクヨムに掲載している「your book ver0.0」も元々はこの連作の1部でした。


 ただ、1話目だけでけっこうな分量になってしまったので、連作として提出するのはやめています。


 内容をざっくり語ると、1話目が意識が芽生えた電子書籍の話。2話目がその電子書籍に芽生えた知性体によって支配された世界の話で、全人類が作家として彼らに文章を献上しなければならないという設定でした。3話目になると、人々のイマジネーションが枯渇したことで世界が徐々に衰退しはじめ、4話目になると、人間が世界を取り戻すものの今度は反動で小説が焚書されるようになってしまいます。


 ですから、2話目以降は小説を書くという営みをテーマにした連作になってるんですね。読み返してみると、当時の自分が持っていた「書くことに対する情熱」みたいなものが感じ取れます。特に4話目はミステリ的なギミックもなく、獄中作家の永山則夫と絡めて、ストレートな創作賛歌をやっています。


 ようやく魅力的なキャラクター造形を意識するようになった頃の構想で、特に2話の主人公像では大分悩んだ記憶があります。これに関してはけっきょくいまに至るも答えが見つからないままですね。


 せっかくプロットを立てたので、同人誌以外の形で発表しようと思っていたのですが、これもやはり設定がチープなのと、未来社会をうまく描ける気がしないのとで頓挫しています。



☆Agnus Dei(仮)


 男性という概念がない世界を舞台にした中編ハードボイルドSF。


「ママ」と呼ばれる女性が統治する島で、探偵役の少女が、島内で失踪した別の少女を探すうちに、「男性」なる未知の概念に出会うという話です。


 男臭いイメージが強いハードボイルドを、あえてこの設定でやっていることに主題上の必然性を持たせています。文体は、デイヴィッド・ピースを真似ており、ノリノリで書いた記憶があります。


 これも同人誌に寄稿しようと思って書いていたのですが、学がないので設定に説得力を持たせるのが難しく、何度も書き直した末にボツにしました。尤も、けっきょく提出したのもこれと同じ孤島を舞台としたSF調のものだったりするのですが。いま読み返すと、そっちはそっちで設定に無理があるのでなんだかなあ、という感じです。



 と、何作か並べてみましたが、ここで紹介したのはある程度まで執筆が進んでいたものだけで、まったく手を付けてない構想が他にもたくさんあります。


 こうして振り返ると、設定が難しくて投げてるものが多いんですね。なので、自然と発表する作品が現代ドラマに偏ることになる……という傾向が垣間見えた気がします。

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