第7話 字書きになるまでの長い道のり
わたしがはじめて小説を発表したのは2013年2月21日のことです。
なんでそこまではっきり覚えているかというと、その日が誕生日だったからです。狙ったわけじゃないんですが、締め切りとしてぼんやり意識はしており、結果としてその日発表することになったという感じです。
発表したのは、某小説シリーズの2次創作。原作を読んでる人しかわからない話だったのですが、Twitterであんまり喋ったことがない人にも好意的な感想とともに拡散していただいて、処女作ながらそれなりの手ごたえを感じました。
と、まあその話はいいんですよ。
問題はその日に至るまでの過程です。これが長かった。
読書家が小説を書こうと思い立つのは、そう珍しいことでもないと思います。それはわたしも例外ではなく、小説を読みはじめて早い段階で自分でも書いてみたいと思うようになりました。
もともと、わたしは漫画を描こうと思っていて、ストーリーの勉強として小説を読みはじめた側面もあります。ですから、まあ創作意欲のようなものは最初からあった。
それで、いろいろと構想するようになったのですが、どれも執筆には至ってません。
若かったので、アイディアだけは豊富に出てくるんですが、実際に形にしようとは思わなかった。いま思うと、そうしなくて正解だったと思います。本当に人に見せられたような話じゃないのばかりなので。
これもやっぱりパソコンを持ってなかったから、というのが大きい気がします。自室にパソコンがあったら、何かのはずみで最後まで書き切る作品があったかもしれません。
当時はいまよりずっとひねくれていたので暗い話ばかり考えていた気がします。世間への怒りを叩きつけたような、いま読み返すと「アイタタ」となりそうな話です。
あとは、乙一の影響で起承転結に異常なこだわりがあったのもよく覚えています。というか、それ以外、話の作り方がわからなかった。
さて、時は流れて、いよいよパソコンを入手します。
しかし、パソコンを入手したら書けるようになったのかというと、特にそんなこともありませんでした。
徐々に、具体的に構想を詰めていくようにはなったのですが、どうしても書き出せない。
ここで足を引っ張ったのは、生来の完璧主義です。完璧な構成、完璧な文章を志向するあまり身動きが取れなくなっていた。「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」と書いたのは村上春樹ですが、この頃のわたしはまだ「完璧な文章」の存在を信じていたのです。
そんなわたしに転機が訪れます。
それは、リレー小説へのお誘いでした。これは、Twitterのフォロワーが企画したもので、そうお堅いものではなく、わたしの他にも小説を執筆したことのない人が何人かいるようでした。
お祭り感覚で安請け合いしたわたしは話の終盤にさしかかる部分を任されました。結果的に、この順番がよかったのだと思います。たとえば、一番バッターを任されていたらきっと、選択肢が多すぎて何も書けなかった。
小説を書いたことのなかったわたしが、どうやってこの局面を乗り切ったのか。答えは簡単で、それまでの展開の謎解きをしたのです。絵的にはほとんど動かず、延々と設定の辻褄を合わせていくだけ。考察を語るようなもので、あんまり小説を書いてる感覚はありませんでした。
が、どんな形であれ、これがはじめての執筆です。何らかの弾みにはなったことでしょう。その後、同じメンバーで違うリレー小説の企画が持ち上がったときも参加させてもらっています。
ともかく、これで執筆の楽しさを知り、処女作に取り掛かった……と説明できれば楽なんですが、そう一筋縄ではいきません。最後にもう一押し必要でした。
それが、Twitterのフォロワー内で流行っていたとある小説シリーズの2次創作です。タイムラインにそれらの作品が流れてくるのを見て、つい真似したくなっちゃったんですね。
構想を立てはじめた頃は、これまでと同じようにけっきょく書き切れないんじゃないかと思っていました。
ただ、どういうわけかそんなことにはならなかった。
もしかしたら、トレンドに乗っかれば確実に誰かが読んでくれる、という打算が背中を押してくれたのかもしれません。
とにかく、そんなわけで、2013年2月21日、わたしははじめて自分で書いた小説を発表するに至りました。
気づけば、小説を読みはじめてから10年近く。ようやく創作への道を歩み出したのでした。
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