悪魔学② ~実は我々の味方。我々も実は神側ではなく悪魔側~

 昔から、神と悪魔(善と悪)というものがセットで存在する、という宗教的世界観がある。

 世の中を観察して、どうも我々に平和と喜びをもたらす要素(善)と、逆に争いと苦しみをもたらす要素(悪)がある、と思える。そこで、善を司る主体者を神とし、悪を司る主体者を悪魔と考えてきた。もちろんこれは難しい宗教学の話ではなく、広く一般的なイメージ上の話をしている。

 キリスト教などはもう少し色々考えられてあって、苦し紛れではあるが突っ込まれそうな矛盾をカバーする解釈が盛り込まれている。それが、以下である。


 

●神が唯一の根源的存在で、すべてをつくったとするなら、なぜ神と同格のような、神も好き勝手に排除できない悪魔(サタン)というものが存在し得るのか?



●理由

 → 創造主は神おひとり。ゆえに悪魔は神と同格な存在どころか、人間と同じ神に作られた創造物である。人間の親も、子が悪いことをしたり道を外れたりしても、子の人格や責任性を無視したり強制はしない。あくまでも、その子の気付きや自主性を重んじる。

 神が、悪魔や悪を則罰したりせず見守られるのは、そういう理由もある。

 ただ、そうは言っても限度がある。いくら自ら創造した我が子でも、法を犯したらそれなりのペナルティを課せられねばならない。ゆえに今は好き勝手する悪魔も、世の終わり・キリストの再臨の時には(反省してなければ)地獄に閉じ込められる。



 悪魔は、もともとは神に仕える天使のトップだった、という。

『ルシファー』という名前で呼ばれ、それが後から創造された人間のほうが神に愛されていると受け取ってひねくれてしまった天使が、悪魔へと転職。(笑)

 その時から「神への反逆」へ転じたのが、その後の長きにわたる「光と闇 (善と悪)との闘争」の始まりとなった……という説明。

 そういうひねた捉え方しかできないで悪魔になってしまった天使がいるということは、天使は皆悟っている立場にはない、ということだ。神の次席に位置するナンバー2が「物事の捉え方・視点」において人間の覚醒者より劣るというのも、実におもしろい。


 

 で、逆恨みから人間が罪を犯すように、エデンの園の禁断の実、つまり「善悪を知る木」の実を食べるようにそそのかす。で、まんまと人間を神に背くように誘導した。そこから、世界は本来の世界ではない「苦界」となった。

 その「神が本来望まない、間違った世界」がずっと続いてきたのが人類歴史。

 で、最終的にその間違いを正すためにやって来るのが、「メシア(救世主)」。

 一度目はイエス・キリストだったが、当時の人々は彼の価値を理解せず、処刑。

 現在のキリスト教が説く「終末思想」とは、世の終わりにもう一度イエスがやってきて、今度こそ世界を神の国に変える、というもの。その際地球は無傷というわけにはいかず、神の勢力と悪魔の勢力の壮絶なぶつかり合いが起きる。そこで、かなりの犠牲者が出る。

 その混乱と戦いを、「ハルマゲドン(最終戦争)」と呼ぶ。



 さて、ここまでがキリスト教的悪魔観(善悪観)である。

 では、ここから筆者の悪魔観及び善悪観を述べる。



 正確には、『悪魔』と呼べる存在はいない。

 また、この二元性の世界(二極の世界)を作った時すでに、「悪」と人が呼ぶそれは宇宙の設計図の中に織り込み済みだった。この世界が誕生して、あとで悪が生じたなどということはない。

 失楽園の事件など関係なく、最初から、世界誕生の前提として悪の萌芽はあった。

 善とは、個体に快のエネルギーを味わうようにはからうこと。悪とは、全員が善を求める上で、物理やその時々の状況によって人によってはその快を得るのが難しい場合に、それでも無理してでもそれが欲しいと押し通してしまう行為。それによって他の個体が迷惑というものを被るが、それを無視してでもある目的を遂げたい場合に生じるものを「悪」と呼ぶ。

 善悪という単純な油と水のような対立するペアがあるのではなく、「願いを人に配慮して、波風立たないようにうまく実現していくか」「目的を一瞬でも早く達したいので、その間の障害を排除してでも実現したいか」の違いだけである。



 宗教では、悪魔を「神の善なる目的に反逆して、常に世の人間の心の闇の部分にアクセスして刺激して、悪に駆り立て神の目的の成就を妨害してこようとする、神と対になる存在」としている。 

 まず、それはいない。

『悟り史観』において、究極の根源的存在は神ではなく、「くう(無・一元)」と捉える。非二元における、「本来二元なるものはない。幻想であり、夢」という部分である。

 空、という「状態」だけが本質であり、唯一の「実在」。

「いち」であり分離がない。分離がないから自他がない。自他がないので、意思がない。意思をもって行動するためには、「私」が必要だから。



 で、究極の根源が意思を持たないのに、何でこの世界がある?

 誰か作らないと、ないでしょ、こんな世界。

(たとえ夢のようなものであっても、手が込んでいる)

 究極存在が作ったんでないなら、一体誰が?

 それが、「二番手」である。

 究極の「空」を除く、この世界で一番最初に「自他」を認識できた存在。

 実は、それが我々がルシファーと呼んでいる存在である。

(なぜその二番手が生まれることができたか、については、人間でいる限り我々には絶対の謎である)



 悪魔とは、神に反逆し、我々を悪と恐怖に陥れてくる存在ではない。

 むしろ、この二元性世界の生みの親である。そういう意味ではむしろ「神」か。

 ただ在る、だけが無限に続く静寂の世界。

「そんなのは嫌だ!」と最初に思った存在。

 絶対の本質に逆らっているのは承知で、リスクを犯してこの「変化の世界」をスタートさせてくれた。苦しいこともあるけれど、「生きることに意味を生じさせてくれた」存在。

 


 創世記で、神は人に善悪を知る木の実を「食べてはならぬ。食べると死ぬ」と忠告した。

 しかし蛇は人間に「善悪の木の実を食べるようにすすめた」。

 これは置き換えるとこういうことになる。

 空(一元)は、分離のない一(いち。またはゼロと言ってもいい)がただ続くことを本来とし、当然それを維持するだけのことしかしない。だから、それ以外の在り方(二元)はするな、と警告した。

 しかし、蛇(二番手。自意識を最初に持ちえた個)は、たとえ一元(非二元)の在り方と逆行することは承知で、この世界を開いた。



●善悪を知る木の実、とは 「二元性(陰陽)を知る」 こと。

 それを食べるということは、そういう流儀の世界に身を投じる、ということ。



 悪魔とは、人間を苦しめたろうとする勢力の大ボスではない。

 むしろ、この世界が続くように立ち回ってるほどである。

 在り方において、空に逆らう「幻想」を支持したという意味で、絶対なるものに逆らった=悪魔と言えるのかもしれないが、それを言ってしまったら、我々も悪魔側だ。(あなたが望まなくても、どうにも動かしようがない事実である)

 二元を始めたルシファーと、その世界で生きる我々は、一蓮托生。

 同じ反乱軍側であり、ルシファーは「味方」である。

 ただ、真の悟りを志向し、本来「空」である不分離(非二元)に回帰しようとする側には、ルシファーは克服するべき敵となるであろう。人間やめたければ、分離をやめたければ、ルシファーの屍を超えて勝ち取るしかない。

 分離した個としての肉体を持っていながら「覚醒者」と名乗りワンネスを実感した、という分には遊びでありおままごと。でも、そのおままごと程度に留めておくのが無難だろう、というのもまた確かである。

 この二元の世界を消してまで空に回帰したいのかどうか、だ。



 映画に出てくるような怖い悪魔は、悪魔ではなく低級霊。

 低級霊と言うのが失礼に当たるなら、言い方を変えて 「恨みを持っている霊体。この世界に納得いってない、ネガティブな感情エネルギーを抱えたままの霊体」と表現しよう。

 悪魔は超が付くほどのキレイ好きでオシャレなので、「エクソシスト」 の映画のようなきちゃなさは絶対にあり得ない。あと、超美男子である。怖い、恐ろしい顔や見かけなら、逃げられ嫌われてしまい。言うことを聞かせたり、誘惑してコントロールするのに一番不都合だ。

 だから、悪魔に関する世のイメージは的外れである。

 怖くも醜くもなく、ただものすごく美しい。



 本当の悪魔(ルシファー)は、いわば『デビルマン』みたいなもの。

 彼はもともとデーモン族であり、存在としては「悪の側」 に分類されるのだが、牧村美樹という少女と出会ってからは「善も悪もどうでもいい。神も悪魔もどうでもいい。何が正しいか間違いかもどうでもいい。ただ、美樹を守りたいだけ」という価値観に。

 ルシファーも、非二元に逆行したとか、自分が本質に照らせば間違っているとか、どうでもいんだろう。せっかく始めたこの二元世界のドラマを、できるところまで守り抜きたいんだろう。

 さて。あなたには選択肢がある。

 ひとつ。デビルマン側につく。この世界で二元性のダンスを踊り続ける。

 ふたつ。ほんとうの分離のない世界(一元のみ)にこの世界を戻し、ACIM (奇跡のコース)の有名な副読本「神の使者」が言う通りに、この世界が消滅するまで徹底して悟るか。

 


 肉体をもったまま悟りを論じ、幸せに応用しようとする姿勢なら、その程度のままごと悟りでは間違いなくルシファー側である。私は断然、デビルマン軍団の一員である。(笑)

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