失楽園① ~不倫のドラマのことではありません!~


 世界的に有名な物語に、『Paradise Lost (失楽園)』がある。

 聖書の一番はじめに載っている、有名な話だ。

 それによると——



 人類の最初の二人は、アダムとイヴという男女のペアだった。

 エデンという理想郷で何不自由なく幸せいっぱいに、無邪気に暮らしていたが——

 ひとつだけ、守らねばならないことがあった。

 エデンの中央に生えている、『善悪を知る木』になる実だけは、食べてはならない。これを食べれば、死ぬであろう、と。



 そんなある日、蛇(堕天使であり、悪魔と解釈される)が誘惑してくる。

 食べることを禁じられた実を、食べてみろとそそのかしてくる。

 言われてみれば、本当においしそうだった。

 で、誘惑に負けてまずはイヴが食べ、今度はアダムが誘われ食べた。

 それが、罪となった。神の言いつけに背いたから。

 かくして、二人はエデンから追放処分を受けた。



 その後、人類は豊かなエデンとは比べ物にならない不毛の地で汗し、苦労して生活の糧を得なければならなくなった。

 罪が人の魂を支配し、今のような争いの人類歴史が始まることとなった。

 だいたい、そういう筋の物語である。



 キリスト教においては、この物語が「悲しい、残念な事件」として捉えられる。

 なぜなら、父なる神の言葉ならその言いつけは正しく、絶対だから。

 神が愛のゆえに与えたその戒めを破るなんてことは、最大の間違い。

 本来神の子である人類が、今の人類の世負うな「罪人つみびと」になってしまったのも、そもそもこの事件が発端。

 端的に言ってしまえば、こういう理解である。



 アダムとイヴは、ここで失敗するべきではなかった。

 神の戒めを破らず、罪を世界に入り込ませるべきではなかった。

 もし彼らが成功していたら、この世界はずいぶん違っていただろう。



 しかし。キリスト教という宗教から見ればそうかもしれないが——

 スピリチュアル的に(というか、筆者的に)見れば、違う。

 これは、最高に素敵な物語に早変わりするのである。



 話が変わるが、皆さんは自分の人生を生きている、と言えるだろうか。

 自分が主人公の、自分で『選択をする』人生を生きているだろうか。

 確かに、法律に触れるようなことはしていないかもしれない。

 犯罪は犯していないかもしれない。

 でも、私などからすると、そんなことはその人に対する評価の材料にもならない。

 皆、国のトップ・偉い学者や政治家や政治家・学校の先生の言う通りに生きている。この世の中で伝えられてきた倫理道徳や常識、学問や宗教のスタンダードな内容に対して大した疑問も抱かず、『無難に生きる』ためにほとんど無抵抗に取り入れている。

 給料をもらうために、いけ好かない上司の言うことに頭を下げる。

 あなたの魂の叫びや意思による選択など、ほとんどない。

 朝から晩まで、誰か他人の言ったことや基準に照らし合わせた判断での半強制的選択ばかり。



 この失楽園のお話を、改めて見つめなおしてみよう。

 神様が、「これを食うな」と命令する。

 なぜ食ってはいけないのか、という納得できる説明は一切なし。

 そのくせ、命令に逆らったら命はないぞと言う。

 ははーっとそれに従うのが、本当に良いことだろうか。



 自分より偉い他者が言ったら、それは絶対なのか?

 自分がどうしたい、という気持ちを押し殺してでも正しいと言われるものを選ぶことが、本当に理想的な人間像なのか? 目指すべき在り方なのか?



 これで都合がいいのは、トップに立つ者だけである。

 王や権力者、宗教指導者にとって都合がいいに過ぎない。だって、皆に自分が人生の主役だということに目を開かれてしまったら、都合よくコントロールできなくなるからだ。

 だから、アダムとイヴが神様に言われたことではなく——

 自分が「食べたい!」と思うその気持ちに、何よりも従ったということが素晴らしいのである。

 宇宙の王として、中心としての本来の力を、権限を、初めて発動させることができた記念日なのだ。

 人類最初の 「成人式」 だったのだ。



 人によっては、こう反論するかもしれない。

 アダムもイヴも、ただ単に蛇にそそのかされてのってしまったのであって、純粋な自分たちの意図、決断とは違う、と。

 でも、そんなこと言うなら、私たちはどうだ。

 何かの仕事をしたい、一定の職業を目指したい、というのでも——

 世の中にあふれる様々な情報を、与えられるからではないのか?

 親兄弟、先生や友人、いろんな人からの助言やアドバイスがあって、本人の最終的な決断があるのでは?

 そんなものナシで、自分で気付き自分で調べ、誰の助言も聴かず何の情報の力も借りず決断する人など見たことがない。いたら、紹介してほしいくらいだ。

 また、「人は自分の利益になること以外はしない。」

 いくら、蛇のオススメがあったとはいえ、最終的に決断するのは 「本人」 だ。



※余談 ルシファー(堕天使。もともとミカエル・ガブリエルと並んで高位の天使)は、悪魔(悪霊たちのボス)と一般的には捉えられている。別名をサタンという。

 しかし、私の悟りの感覚からは、彼は正確には「悪魔」ではなく、どちらかというと人間(この二元性世界)の味方である。悪魔の仕業かのような恐ろしい事件を起こしたりして悪さをするのは、雑多な悪霊たちであって、ルシファーはそれらの悪事に関係はない。これ以上詳しくはここでは控える。

 ルシファー(ここでは蛇)は、人間に「神に背け」とそそのかしたのではない。

 自分で決めれば? と神に縛られる二人の人間に「自立」を促したというのが本当のところである。逆に、助けたのである。



●本人が最終的にコミットしない決断など存在しない。

 仕方なく、とか人から言われて、などという決断は存在しない。

 絶対に、最終的にはその人が「そうしたくて」選んでいる。



 この事実は、否定できない。

 アダムとイヴが、蛇に言いくるめられて誤った決断をさせられた、という見方は見当違い。あくまでも本人たちが、宇宙の主人公として「自分が食べたかったから」食べた。

 そこをしっかり分からないから、「~のせいでこうなった」などという無責任人間が増える。責任転嫁が、当たり前のようにまかり通る世の中になったのだ。

 すべての決断は、本人に責任がある。


 

先生:「これは、おまえがやったんやな?」

生徒:「やったんは僕ですけど、田中のやつにやれって言われたんです」

生徒:「なら、田中が死ね、って言うたらお前は死ぬんか~!」



 人なんかじゃなく、神の言いつけだから(神は絶対だから)守るべきだった、という意見もあろう。

 それは、一刀両断できる。



●人が神だから。



 私は神。あなたも神。

 ハイ、議論終わり。(笑)



 だから、失楽園の事件とは、この世界に罪というものが生じた悲しい事件の日ではなく、『我が子が自立した、喜びの日』。 

 初めて、ハイハイした日。立って歩いた日。

 自立記念日。

 学校の入学式。

 成人式。

 我が子の成長をしかと見た日。

 つまり、喜び祝うべき日。



「ワンネス(原初の存在)」は、完全・絶対・永遠だった。

 彼は、チョー不自由だった。

 だって、完全でしかあり得ないから。

 永遠の静寂でしかないから、変化などない。退屈な世界。

 だから、この二元性の世界を創った。

 決められた絶対をなぞるのではなく、自らの意志で無数の可能性の中のひとつを選べる世界を創った。

 できた~! そうして完成したのが、エデン。

 そして、最初のゲームキャラが、アダムとイヴ。

 いよいよ、初ゲームプレイ開始!

 来たよ来たよ。いよいよ自立した選択を味わえる時が。

 上の「神様」はこれしちゃダメよ、って言うんだけど、めっちゃしたいんだよね!

 誰から何を言われようが、食べてみたいんだよね、アレ!

 よしっ、食べたいものは食べたいのだ! いくぞ、それっ。



 パンパカパ~ン

 おめでとう!

 やったぞ、私。やったぞ、俺!

 自分の意志で、はじめてしたいことをしたぞ!

 これから、このゲーム世界がもっとすごいことになるね!

(実際、必要以上にすごいことになった……)



 今まで、完全であること以外何もできず、無能だったワンネスが——

 自分で、好きに選ぶというサイコーなことが出来た!

「ひとりでできるもん!」という幼児番組で、こどもはじめてのおつかいに成功した時にような喜びが、プレイヤー意識にはあったのだ。

 マジ、うれしいっす!

 横綱に土をつけ、金星を挙げた平幕力士のインタビューのように、記念すべき日だったのだ。



 だから、皆さん。

 失楽園の事件こそ(実際にこんなだったかはどうでもいいが)、素敵な始まりだったのだと思おう。人類の一大失敗ではなく、槇原敬之ではないが——



●好きなものは好きと言えた、自立記念日。



 他の誰かの言ったことは、あくまでも参考情報。(神の戒めでさえ!)

 最終的に選ぶのは、私であり、あなた。

 あなたも、人類最初のゲームキャラであったアダムとイヴを見習って、自分が決める、自分が主役の人生を生きようではないか。

 正しいと言われることをするだけの人生よりも、間違わない人生よりも——

 もっと味のある、ビビッドな熱い人生のほうがオススメである。

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