第7話 命懸けの娯楽

「芸無しだな」「つまんねぇ。」

特にスキルを持つ訳でも無く、力でねじ伏せる相手のパワー的なファイトスタイルに嫌気がさしあぐらをかいていた。

「おいおいグロッキーかよ?

体力ねぇなぁ!」

「気付いてねぇよ」「勘違いだな」

特殊防護服はあらゆる銃弾、衝撃に耐え壁を着たように防御が可能。そこに持ち前の力と肉体で圧し潰すというが専らの戦術。矛と盾が強いなら、どちらも身につけてしまえという単純な道理だ。


「光栄に思え!

この柿原様に相手をして貰えるんだからな」

「勝手に着たんだろ」「求めてねぇ」

悲惨な事に二人の武器はハンドガン、普通ならば太刀打ちは不可能。銃弾一つ通らない、普通ならば...。

「面倒だなぁ」「アレやるか?」

「..それいいな。」「やろやろ」

突進を避けるだけではつまらない、新たなギミックを遊びに搭載する。

「いよっ!」「よいしょ..」

「効かねぇ、ハナクソ当てて人が死ぬと思うのか?」

「試し撃ちだよ」「威力確認。」

防護服に対して銃弾がどれ程ヒットするのか、当然簡単に弾かれて表面に擦り傷を負う程度の力だ。

「こんなもんか」「充分だな」

シリンダーを全て捨て、他のものにごっそり丸々差し替える。

「ビロードしよ。」「リロードな?」


「弾を入れ替えただけで何だと言う!

芸が無いな暗殺兄弟!」

「わかってないな」「くらえば判る」

正面からのタックルを避けずに向き合い弾を撃つ。丸い弾丸は防護服に当たると弾け、破片と共に液を撒き散らす

「熱っ!

服が溶けてる..これは、強酸弾!?」


「なんでわかんの」「理科の先生?」

平然と銃弾を弾いていた防護服が原型を失う程に崩れている。厳つい風貌も今では見る影も無く滑稽な姿だ。

「ぐおぉっ‼︎

熱い、熱いぃっ!」

煙を吐き出し酸を浴びる。

「結構刺さるな」「練習の成果だわ」

「こんなもの、着てられるか!」

的確な撃ち込みによって滲む酸に耐え切れず、防護服を脱ぎ捨て肌を露わにする。

「出たな、これだよ」「遂に出たな」

すかさず銃をリロードし、二発目の弾を撃ち込む。防御を失った身体はそれを受け、腹部に二箇所穴を開ける。

「倒れもしないよ」「バケモンかよ」

「はぁ、はぁっ..うっ!」

「まぁ関係ないけど」「だな。」

柿原は膝を落とし硬直する。弾の威力ではなく〝成分〟が身体を蝕んでいるのだ。

「神経毒。

面白そうだから仕入れたんだけど、相当な効き目っぽいね。」

「そりゃそうだろ、毒だからな」


「お前ら..狂ってるのか?

楽しんで人を殺すなど...命を何だと思っていやがる‼︎」

「今更正義ツラ?」「笑えんな。」

正義を語った時点で悪だが、語らずともの悪党も存在する。それらは意外に狡猾で、且つ軽快な事が多い。

「こんな娯楽の無い時代だ、楽しめるものを己で探すクリエイト性が求められたりするもんさ」

「〝生きてる事は素晴らしい〟って美化する事に意味なんかねぇ。生きる事はつまらなくて残酷なものだと丁寧に言ってやる奴が一人はいても言い筈だけど?」

立膝状態で固まる柿原の肩を蹴飛ばし仰向けに寝かせる。無防備となった身体の上に、二つの銃口が向けられる。

「また毒で虐める気か?」

「違うよ、モノホン。」「実弾です」

神経毒には多少だが、肉体の繊維を柔らげる作用を含んでいる。そんな薬があるのかと驚いたが売人は優秀、何でも持ち合わせている。

「実弾?」

差し替えたシリンダーは特製仕様。

一弾目は酸を含んだ強酸弾、二発目は例の神経毒。あとは通常の弾を込めた三段階仕様となっている。

「ダサいからあんまり使いたくないんだけどこういうの何て言うんだっけ」

「えーっとね..ハチの巣。」

口から火吹きの業火噴出、晴れる頃には何もかもを終えている。

「ダブルバレット」「ダサいよな。」

異名にロクなものは無い。


意図したバディーは連携が匠。

言わずもがなの警戒すべき高技術点、しかし意図せずのバディーはそれが皆無で、奇跡と我流で動き振る舞いを見せる。

「なんでこうなってんだ?」

「..知らないけど、甘く見たようね」

首を取る直前まで追い詰めた筈が二人仲良く鎖で拘束されていた。

「ヨーヨーどかしたろ」

「だから言ったじゃない、他に何か隠してるかもって。案の定よ、紐を引いたら袖から色々うじゃうじゃと..」

「考えて動けよ」

「動いた結果がこれなのよ。」

ああ言えばこういう、では無く事実を言っているだけ。言い方が誤解を量産しているだけなのだ。

「………」

「なんか見てるぜ、あいつ」

「..かわいぃ。」「何言ってんだ?」

年齢に直せば17、8の年増もいかぬ青年だ。殺意を持つには若過ぎる。

「遊び半分で参加してるだけかもしれねぇぜ?」

「バカ、言ってたでしょ。

手練れの幹部だって」

「……。」

青年は喋らない。人形の様に生気を殺し、じとりと此方をただ見続ける。故にいつ頃危害を加えるか、前触れも無くわからない。

「………」

「ん、なんか袖から..」「..刃物?」

袖から覗く刃物にはべっとりと液体が付着し、床へ溢れ落ちる。

「あれってもしや..」「毒ね。」

気付くときには疾風の如く、殺意は向かい歯を立てていた。

「さっきと逆ね」

「言ってる場合か!」

死を覚悟した。油断した隙に世を知らぬこどもに殺されるのかと己を恥じたしかし世界は理不尽だ。死の覚悟すら否定して、精神の恥辱を平気で行う。


「ごめん遊ばせ!」「あん?」

天井が丸く削れ瓦礫と化して頭上を狙う。瓦礫は避けずとも手前に落下し、青年の猛攻を阻害した。

「なんだよ」「あの女でしょうね」

「よいしょっ..と。

まったく、埃っぽくて汚い施設だ事」

ピンクゴスロリに丸い傘、麦藁帽子の張り切ってメルヘンにかぶれた女が天井を突き破って現れる。

「大丈夫ですの?」

「白々しいわね、生死なんて気にも留めてないくせに!」

「お前のせいで死ぬとこだったわ!」

「精子?

なんてはしたない、ワタクシに子種など御座いません!」

「天然か、コイツ?」

「元々こういうヤツなのよ..。」

含みを持たせた印象を与えるこの女は組織で例えればマスメディアの幹部、ゴスロリは単なる趣味である。

「……」

「あら無反応?

ワタクシを目の前に失礼なコドモね」

「お前も子供だろ。」

「死にたい?」「ごめんなさい。」

見たところ通信機器は付けていない、嘘の指示をして人を危険に晒す様な奴が助けに来たとも思えない。

「何のつもりよキャミー、今更味方って訳でもないのよね」

「呼び捨てですの花凛さん。

まさか貴方まだワタクシと対等だと思ってる訳じゃありませんわよね?」

「質問に答えてくれないかしら」

「あーらこわい、答えなくてもわかるでしょ。貴方がたが力不足だからですわ」


「何ですって?」

「怒んな!

相手するだけ無駄なんだろ?」

「そう気に止むことはありませんわ!

この方々はそういった遣り方を好むのですわ」

世界のデータの殆どはコンプライアンスが牛耳っている。その為得体不明のマスコミ達であっても調べ上げれば必ずヒットする。情報量が多いこと、これが勝ったという事だ。

「侵入者の情報を調べ上げ、相性の違う弱点を送り込む。此方は手も足も出ず泣き寝入り。いつものこのパターン当然貴方がたの事も把握済み。」

「敵じゃないってことね」

「ホントに命なかったじゃねぇか!」

「人の命がどうなろうが知った事ではありませんが、取り逃がすのはもうごめんなのですわ。」

人道に大きく反した言葉をさらりとぬかした後に傘の柄の部分を二、三回弾くように叩く。すると丸い形状からやや尖り気味の形へ変わり、石突の先端は何かを通す空洞になっており、さながら銃口といってもいい。

「傘がゴツくなった..」

「キャミー、それって。」

「違法よ、だからなんですの?

..警察ならまだしも、こんな連中が定める世界の法律何で守るつもりもごぞいませんわ」

物の改造や個人的なアレンジは限度を設けられ、過激なものや暴力的な仕様は厳禁とされている。コンプライアンスはそういった法や刑罰といった領域にまで人に干渉と侵食を向けている。

「……!」

「何ですの、納得いきませんこと?

だったら黙らせてみてはいかが」

「オニくん、ここ出るわよ。」

「置いてっていいのかよ?」

「留まったら諸共に喰われる、牢に入れても暴れる獣に同情はいらない」

人を見かけで判断してはいけないと言うが、そもそも見た目というものは内面を移して創られるものだ。ピンクのゴスロリで改造脱獄傘を携えた様な女が、親切な訳は無い。という偏見で見られ続けたからかもしれない。

「……‼︎」

「好戦的ですわね、どっちが上か。

そういう競争をしてるから周りを縛りたくなるのですわよ?」


施設四階 最上階

「随分と警備が薄いじゃねぇか、人手不足かオイ?」

「騒ぎ立てると湧いて出ますよ、グラハくん。その為の待機です」

「けっ!

待機してたのはアンタだろ、じゃなきゃ都合よく遭遇する訳がねぇ。」

「ならばお互い様..といったところでしょうか」

「けっ、もういいや。

先進むぞ、戦闘力無いんだろ?」

「グラハくん」「なんだよ!」「...」

壁際に連なる鉄の扉、それの一つがひとりでにゆっくりと開き、中から血塗れの白正装の男が廊下へ投げられる。

「..死んでやがらぁ、腕を折られて身体中切り刻まれてる。」

関節を砕かれ刃物の様な切り口で全身を斬る。タチの悪い形跡が所狭しと堪能できる。

「グラハくん、離れて」

「あぁん..うおっ!」「はんっ!」

鉛の様な厚い拳が頭上を覆う。グラハは間一髪のところでなんとか避けて難を逃れた。代わりに拳を受けた床のコンクリは深く抉れ、丸くクレーターをつくっていた。

「なんつもりだテメェ‼︎」

「うぃ〜..ふぃ〜...食後の運動にってさ、部下をボコってみたけど全然つまんないよ〜..余計腹減っちった。」

節度を持たず知性の感じられないその男、上半身は裸で割れた腹筋が露わになっており、口内からは様々な匂いがした。

「香辛料やスパイスの風味、そちらは食料庫でしょうか」

「そんなもんまで備えやがって、王様気取りかてめぇらは。」

「え、オレ王様なの〜?

じゃあ偉いんだな〜。おい、オレと少し遊べ、命令だぞ!!」

「何言ってやがんだよてめぇは!」

「ふむ。」

紳士的な男は懐から銃を取り出し王様気取りの両膝を躊躇なく撃ち抜く。

「ふぐぅっ..!」

「30秒程度でしょうか、充分でしょう。あとは頼みましたよ?

その銃は貴方に差し上げます。」

使った銃を放り捨て、一人奥へと進み行く。目的は筆頭、それ以外のものは眼中に無い。


「ちょ待っ!

..あのオヤジ、顔色一つ変えずに撃ちやがったぞ。嫌なもん押し付けて」

「ぐあぁっ..」「...!」

膝を落とし身体を停止させている。

恐らく強力な麻痺弾か何かだろう、驚くべき肉体と強靭さから、通常ならば後を引き長く持つ処を先程言っていたようにこの男は30秒が限度だ。

「..なら出来るだけでも痛めつけたほうが良さそうじゃあねぇか?」

拳を鳴らし顎に一発、渾身のアッパーを炸裂。相手は無様に唾を噴か上げ顔を天に昇げる。

「らぁ!」

続けざまに腹に食い込む右拳、左で胸を強打、宙に浮いてる身体に向かって有無を言わさず怒涛のラッシュ。屈強な王様は衝撃を受け、再び食料庫の中へと返される。

「けっ!

そんなもんかぁ、ワガママ息子?」

グラハの基本戦術は肉弾戦、銃も一通り使えるが戦闘は専ら拳に長ける。格闘技を習いたかったが金が無く、親が傭兵だったこともありマーシャルアーツ、いわゆる護身術を習得し独自に鍛え上げた。愚羅破というのは格闘家になった際に付けようと考えていたリングネームであり、本当の名は別にあるしかしそれを本人は頑なに教えようとはしない。


「なんだココ、汚ったねぇなぁ!

ハイエナの巣みてぇだ、見た事ねぇけど。」

見るも無残に食べ散らかった食料庫に苦言を呈し、未知の例えで表現する豪快ぶり。とんでもない男を敵に回してしまったと後悔するべきだろう。

「いテテテテ、顔にトマトの汁が付いちまった..これはこれでウメェっ。」

「意地きたねぇなっ..!」

「ウルセェッ〜!!」「うお!」

力任せのタックル、外して八つ当たりの壁パンチ。柿原とは違い、計画性の無い本能の暴力に近い野生児スタイルを誇る。

「危ねぇっ!よく見て攻めやがれ!」

「黙れ、耳がキンキンするんだよ〜!

これでも食らってろぉ!」

手元の棚に並べられていた包丁や出刃といった刃物の類を、乱雑に放り投げる。方向は合っているがまるで狙いが定まっていない為、危険な雨と化している。

「うりうりうり〜‼︎」

「いい加減にしろてめぇっ!

せめて定めろオレに狙いをよっ!!」


「そらっ!」「うろぉ!」

偶々の事でストレートに飛んできた刃物を避けると柄の先端が背後のオーブンの取っ手に当たり、大きなフタが口を開く。

「なんでオレに当たんねぇのにこんだけでかいオーブンに当たんだよ!?」

「始めからそれが狙いダ。」

「嘘つけぇっ‼︎」

的にしにくい男である。


最上もあれば最下もある。

だが決して戦いの質や品格が低い訳では無い。

「殺法『毒針』、そんな古い技法をまだ使用する方がいるなんて驚きですわそれもこんなにお若いお子様がね。」

「………」「あら怒った?」

仕込んだ刃物に毒を塗り込み速い斬り込みで傷を付けじわじわ殺める暗殺術

「何故わざわざ言ったかわかる?

二度と使えなくさせる為ですわ」

油断を持たせ隙を作る必要がある為技を知っているものや警戒心の強い者には確率のブレが生じかねない。キャミーは技を封じると同時に、彼の威厳や暗殺技術を蔑み否定した。

「仕込み刀なんて、陰気で姑息な真似ですわ。..同じ仕込むなら、もっと派手で分かり易いものでないとね!」

傘の先端を青年に向けると、音を立て銃弾を撃ち鳴らす。傘に紛れたマシンガンだ。

「……!」「逃げてもムダですわ!」

ただ撃つだけでは飽き足らず、ターゲット追尾機能、方向転換アシスト機能

更にそのまま傘を開けば、高性能シールドとなり主を守る。致せり尽せりの姫対応そのものの甘やかし兵器、もはや雨を防ぐ用途は無いに等しい。

「………。」

「地の果てまで追い詰めてやりますわよ、オッホッホ!」


兵器対兵器、その上では..ある意味兵器と兵器か。いや、獣とケダモノだ。

「ばあっ!」「でぅお!」

床が丸く抉られ、深く減り込む。

「当たり範囲がデカすぎんだテメェ」

「あたりめの伴侶?たこわさか?」

「塩辛だバカヤロ!」

突き上げるハイキック、顎にヒットし床へ転げる。

「ほげぇっ‼︎」「硬ってぇ顔だな!」

「ホントに塩辛か!?

イカフライって事はねぇか〜?」

「揚げるワケねぇだろうが!

何だっていいんだよんなこたぁ‼︎」

「なんだとぉ〜?」

振りかぶった拳にありったけの暴威を乗せた。がしかしそれはカスリもせずに空間を切る。当てるべき対象は体勢低く、次の一手の準備をしている。

「よく見ろ。」「なぁ〜にぃ?」

「拳ってのはこうやって当てんだ‼︎」

暴威ではなく、殺意でもない、中身を持たぬ空の打撃が硬いと評した顔面の何故か再び顎を撃つ。

「次は砕けたろバケモンが!」

「うぅ〜...。」「まだ起きんのか」

「腹減ったぞぉ〜‼︎」「知るかよ!」

土手っ腹にストレートにハイキック、乱れた巨躯は大口を開けたサウナの中へと放り込まれる。

「飯が好きなんだろ?

良かったじゃねぇかよ、こんがり焼けた飯になれるぜ。」

蓋をがっちり閉め、ツマミを回す。

「出せ、出せぇ〜!!」「うるせぇ」

四角の中はオーバーヒート、食材は中まで焼けてこうばしく香る。

「出...せぇ.....」

「あー?

何かいったかよ、停止なら出来ねぇぞ遣り方がわかんねぇからよ..!」

無知は何より恐ろしい、やはり彼を敵にまわすべきではなかった。

「ふむ、やっとですか。

お邪魔すると致しましょう」

施設の四階は迷路の様に入り組んでおり、普通に進めば一本道なのだが途中で行き止まりに差し掛かり、無数にある扉のどれかに嫌が応にも入る必要性が必ず訪れる。一つの部屋は食料庫、だがそれ以外はまるで知らない部屋へと続く扉ばかり。その状況で彼は自力で、真の部屋へと辿り着いた。


「マスメディアの筆頭サイゾウか、よくこの場所が解ったな」

「貴方の傾向は知っていますからねヘイロクさん、それに私は筆頭ではありませんよ。似通った思想で集まった徒党の中で、少なからず威厳を持ってしまっただけの事です。」

「..入り組んだ仕掛けを施したのは情報漏洩を防ぐ為だったが、随分な無駄だったようだ」

かつて何がしかのしがらみを持っていたかのような話し口調の怪しい二人、だが現状は、マスメディアの優勢。

「貴方の部下はほぼ壊滅状態、ここを獲るのもじかんの問題です。座って口弁を垂れている場合では無いと思われますが?」

「はて、そうか。

優秀な部下ばかりだと思っていたのだが、そういえばサンディアの奴が腹が減ったと暴れていたな。そろそろここも〝退去〟するとしよう」

「退去?」「あぁ、そうだ。」

真白な部屋に赤くランプが点滅する。

「..何事ですか?」

「簡単だ、場所を移して拠点を変えるそれだけだ。住処は何処にでもあるのでな」

侵食された基地を捨て、別の場所に身を宿す。痕跡は一切残らず爆破して、情報や食料も新たな場所へ。

「なに、問題は無い。

部下の連中も各々抜け出す事だろう、幾人が生きているかは判らんがな」


「なんですの?」「……!」

「何処に行きますの!」

「なんだかヤバそうね。」

「いいから急ぐぞ早くしろ‼︎」

「ここらで帰るか」「契約終了。」


「お前も早くここを出るといい、死にたくなければな。」

「..いつか、追い詰めて差し上げますよ。規制と隔離が出来なくなる迄」

「面白い、やってみろ。

次に会うときまで生き長らえていたならば!」

椅子ごとカプセル容器に包まれて、脱出ポッドの如くするりと部屋から抜け出し突出。残されたのは非力な老人。

「さて、どの辺りでしょうか。

..定位置に座っていたという事はその正面、単純な前方ですかね」

もぬけの殻となった部屋の正面の壁に銃による鉛玉を何発か当てる。すると壁はいとも簡単に崩れ、鉄の扉を出現させる。

「当たりましたね。」

扉を開け、外に出るとロフトが備えられ、下に降りる事が出来た。完全に下に降りきり、外の土に両足を踏み入れた直後建物は大爆発、原型を留めず崩壊する。


「おじさま。」

「キャミーさん、無事で何よりです」

「オヤジ!」「おや、グラハくん。」

キャミー、続いてグラハ、その後花凛と鬼嶋が合流し、無事が確認された。暗殺兄弟の姿は無かったが、誰しもが命の心配はせず、生きていると認識した。

「また、逃げられちゃったわね」

「次は何処に行きやがる。」

「おそらくはあの、山の向こうです。焦る事はありませんよ」

「あの子供、次は確実に仕留めて差し上げる事よ!」

「他の連中も生きてやがんだろうな!

気にくわねぇぜ、一人でも確実に息の根を止めといて良かったよなぁ!!」

徒党を組んだ同志達は、決して組織としての確立はせず、各々が己として真実を造る。嘘も暴力も武器として、規制を壊し概念を崩し、徹底的に追い詰める。彼等の名は〝マスメディア〟人道とモラルに反した破壊的、害悪性極まれりの勢力群である。

「行きましょう、命を懸けて」

次に向かうは、最果ての地へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る