実録・婚活ノート 番外編1

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 本編では網羅できなかった婚活ノートの記録と主なエピソードを紹介します。


 番外編『オトコの海』へようこそ。


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「ファイルNo.10。同い年の調理師。

・出会いドットコムで申し込まれた。

・親戚のおじさん風。住む世界がまったく違う感じ。

・同い年なのにジェネレーションギャップを感じる(物腰、発言すべて)

・1回でお断り。

【考察】

・いい意味でも悪い意味でも何の引っかかりもなく、逆に判断に迷うほどだった。

・顔合わせが終わった時、「で? だから?」って思ってしまった。」



「ファイルNo.11。「黒田」10歳年上(大手不動産会社の部長)。

・出会いドットコムで申し込まれた。

・バツイチの遊び人。不良オヤジ(本人談)。EDだったらしい。

・自分に自信がある。自分のペースを乱されたくない。一人が楽。

・体から入って、好きになって、結婚を考えた。5カ月弱つき合った。

・結局、東京本社転勤で元妻と娘の元に戻った(フラれた形?)

【考察】

・お互いに好きで満足しているなら、入籍にこだわらないパートナー関係もありと思った。

・相手のスタンスに合わせようと無理をしても、いつか限界が来てつらくなる……のかも。

・惨めに終わったのは罰!」



 黒田と会わなくなったあと、笑っちゃうようなことがあった。

 マッチング倶楽部でアプローチされたオトコから、顔合わせのデート場所について電話で伝えたいと番号が送られてきたので、オフィスの電話で連絡した。

 日時と場所を聞いてメモしながら、私はゾクゾクしていた。深みのあるいい声で、早く会いたいと思うほどだったからだ。


 数日後、デート場所の店に現れたオトコは声とは裏腹に、見るからにパッとしない風貌で、期待があまりに高かったために一気にテンションが下がってしまった。

 話していても、何も惹かれない。

 食事が終わるころ、もうすぐ転職しようとしているという話になったので、なにげに仕事を尋ねたら調理師だと言う。


 そこで私はハッとした。悟られないように、あらためて相手をチラチラと観察した。

 髪型は変わっているけど間違いない。No.10さんだ!


 会うのは二回目だったのだ。

 私はソワソワし始めた。いやだ、早く逃げ出したい。今回もやっぱり、二人の間に何の可能性も感じない。声につられて期待していた自分が馬鹿みたいだ。声だって、電話だからよかったのだ。直接、生で聞くと、ただのおじさんの声だった。


「あの、本当に何にも気づいてません?」

 最後に、彼の方から訊いてきた。

 ドキッとしたけれど、とぼけるように首を傾げて見せた。

「前に会ったの、覚えてません? あの時は本名は言ってなかったけど、北沢さんって出会いドットコムの manaさん、でしょ?」


「え、あぁ……調理師さんって、あの時の……。なんとなーく、覚えてるような覚えてないような……すみません」


 そんなふうに演技をして、ごまかした。


「僕、電話で話した時から、声に聞き覚えあるって思ってました」


 そうなのだ。自分ではわからないが、私は声に特徴があるらしい。ごまかしが効かないから、イタズラ電話はかけられないねとよく言われる。


「どうです? こうやって二回も会うなんて、僕たちんだと思いません? 今度こそ、つき合ってみませんか?」


 そのセリフで、九回表スリーアウト、裏はバツで試合終了となった。再戦はなかった。



「ファイルNo.12。二つ年上(建設業)。

・マッチング倶楽部で申し込まれた。

・バツイチ、養育費を払っている。

・現場監督。一つの現場が始まると週末以外は行きっ放しで帰って来ない。

・見た目はふつうのサラリーマン風。

・もう一度会おうとなったけど、たまたま指定された週末に会えなかっただけで、「本当は会う気がないんじゃないですか」とウジウジしたメール。事情を説明してもネチネチと責められた。

・同窓会でかつての同級生と会ってつき合うことになったとウソをついて断った。

【考察】

・ほとんど自宅に戻らない生活なので、子供を作りづらいのでは? と思った。

・あと数年で養育費が終わると言っていたけど、子供の存在は気になった。

・もし、もう一度会えていて、ウジウジした人と知らずに結婚へ進んでたらと思うとゾッとする。離婚の理由もそういうとこだったりする??」



 このへんは、すでに黒田と会っていたけれど、まだそれなりには本気で他の人たちと顔合わせしていた。


 この次のオトコは、なかなか興味深い経歴の持ち主だった。

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