第10話 ロン

 通りに人影は少ない。もう辺りは真っ暗だ。

「この家だよ。お待たせ」

まあ、上がってよ

と言い置き、中へと招じ入れられた。

玄関を上がった先―廊下の左手に襖が続いており彼は開けるとウチを和室へと案内してくれた。

中央にある卓を挟んで形で座る。

「君、知り合いとかいないの?」

「ウチに知り合いなんかいない」

「友達とか」

「いいや」

「家族は?」

「両親は亡くなってるし、弟は行方不明なんだ」

部屋の温度がスーッと引いていく。

「そっか。でもさ友達ならいるでしょ?」

「友達は…」

言葉を遮り卓に身を乗り出し

「僕たちは今から友達だよッ!!っていっても自己紹介がまだだったね、僕はロンっていうんだ。君は?」

と真剣な顔を鼻先まで近づけてきた。

(距離がちかい…)

慌てて額を押し戻す


 「まあ、でも僕も友達はいないけどね。隣の幼馴染みぐらいかな」と溜め息をつく。

「何かおもしろくなさそうだな」

「なんかねえ、遠い存在になっちゃったとゆうかさ…心配事が耐えないんだよね。日々痣なんか作っちゃって、格闘バカというか」

「年頃の男だったら武道で痣の一つや2つぐらい掠り傷だろッ。何がそんなに心配なんだ?」

頬杖をつき愚痴るように1言

「女の子なんだ。今話題の【鈴麗】」


 (なんてこった…)


 ―ロンは鈴麗と知り合いだった― 

「ロンはさ、鈴麗に闘ってほしくはないのか」と提案を持ちかける

頷くロン。

「だったらウチに任せてくれないか」

「言っても無駄だと思うよ、頑固にできてるからアイツ」

「じゃあ、話は早いな」

「え?」

「拳と拳で語り合うとするぜッ!今も横に住んでるのか?【鈴麗】さんは?」

「え、あ…うん。ってちょっと」

ロンの慌てる声を無視して和室に面した庭へと躍り出る。

その突き当りは堀になっているのを構わずに

飛びこんだ。

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