第8話 いざ!ジェネチャイナへ!!

 師匠との別れを経て後、無事にウチは

ジェネチャイナへと入国した。数年も経つと

故郷の地に足を踏み入れた感覚はチリほどもなかった。

まあ、それはそれとして無事に入国できたものの・・・


「なッ!?なんだってんだ〜」

街中は【鈴麗】で溢れかえっていた。


 行き交う人!人!人!

鈴麗!鈴麗!鈴麗!

目に飛び込んでくるのは嫌でも青パーカーを

頭までスッポリと被った乙女たち。

ジェネチャイナ代表は、中国の人口の多さもあってかアイドル級の人気を得ているみたいだ。

その証拠にどの店でも【鈴麗】は値札とともに表示される記号と化し、

衣類から酷いものだとご当地キャラのキーホルダーまで商売が成り立つほど。

往来する人々の会話の節々からも

その話題性が伺いしれる。


 本人の面が割れてないことが乙女達のカリスマへと身軽に転身できる長所となっているワケだ。


 この状況はウチには至極都合が悪い。

このままでは本人に偽装することは生きてる内では無理なんじゃないだろうか。

どうにかして辿りつかなければ。

バカ正直にお前が鈴麗だな?と聞いてまわるワケにも行かない。

と、行き交う人の合間で立ち往生しているのがヤケに目立ったのか・・・


「どうしました?」と後方から声をかけられた。


 柔らかい声質の持ち主はその特徴を裏切らない長身痩躯の男性だった。

いや、少年というべきか。ウチとそう歳は離れていそうにない。


 猫っ毛を思わせる繊細な黒髪。

光を透かしてしまいそうな肌と同色のカッターシャツ。

漆黒のスラックスといった出で立ちは、身体と服で分離したとしてもその基調を裏切らない誠実さを醸し出している。

「こんな人混みで立ち止まってると通行の邪魔になりますし、そうですね」と

何か思いついた様子で頷くと手を引かれた。

「ちょっとコッチへ」

掴まれた手は身体のラインに似合わず骨骨しい。

いったい何処へ連れていかれるのだろうか。






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