第2話  ミス・ジェネシス

 開催会場は大勢の人でにぎわっていた。

人混みをぬって会場受付へと向かう。

係員に「ミス・ジェネシスにエントリーされますか」と問われる

「いや、そのつもりはないんだけど。そのミス・ジェネシスってのは何なんだ?」

「ミス・ジェネシスは格闘技の一大祭典です。要は各国の代表選手を定めてトーナメント戦を行うイベントでして、優勝国には様々な物資・輸出入の権利が与えられる国を豊める目的の政策でもあります。もし、よろしければ今、ソチラのモニターから実況放送を流しているので…」

と言いながら係員は右手で指し示した。

巨大な画面には茶髪のカウボーイスタイルの

少女が映し出されている。

どうやら試合は終わった所みたいだ。

と、少女にかけよる男性の姿をカメラが捉えた。どこかで見たことがある風貌をしている。

「…!!」

 

 ようく、目を凝らすと

(小鈴)

思わず声に出し、画面にかじりつく。

間違いない。それは小鈴だった。以前より体躯がガッシリとしていたがその顔には幼い頃の面影を残している。

実況が伝える。

《接戦の末、本国アメリカのミス・ジェネは今年もガン・トレットに定まりました。》

画面の中のガン・トレットと呼ばれた選手は小鈴と親しげに笑みを交わしながら画面外へとその姿をフェードアウトしていく。


 生きていてくれて―良かった―

そう思うと同時に自分の知らない場所で新しい生活を手に入れた弟の姿に哀しさもある。

それになんだか落ち着かない。

この気持ちはなんだろう。いや、まてよ…


 「おい」係員に詰め寄る。

「あのガン・トレットとかいう女、毎年優勝しているのか?」

「そうですね。ココ3年連続ミス・ジェネアメリカの称号を欲しいままにしています」

厭な予感が走った。


【ジェネシス】格闘に精通 小鈴 


係員が腕時計に目をやる。

「おっと、いけない。もうこんな時間だ。エントリーを締め切らねば」

腕時計をした手首を掴み自然と声が出た。

「でる」

「え?」マジマジとコチラを見返してくる。

「ウチもエントリーするって言ってんだ!!」


 が、頑なに係員は拒んだ。

「時間厳守なんです。そんなワケにはいきません」

時計をしている腕をねじりあげる。

「ちょっとしたことだろう」 

「規まりは規まりです」中々折れてくれない。

気づくと何やら周りが騒がしい。

受付を囲うように人だかりができていた。

「ちょっと、そこの君!」

警備員と思わしき2人の男が奥に設えられた扉から出てきた。

 (チッ)思わず舌打ちが漏れた。

とりあえず一旦は退くとしようか。

取り押さえに協力しようとする善意な人々を押し退け全速力でその場をあとにした。

実況放送のTVからは

ミス・ジェネチャイナの優勝者の名を告げている。

《パーカーを目深に被っているの勝利を掴んだ喜びは伺いしれませんが、

堂々とした出で立ちは正しく王者の風格。コレで中国代表が定まりました…ミス・ジェネシスチャイナ代表はリンレイです。残る国の…》


 …リンレイ。





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