3. ハルヒと鶴屋さんとみくる
頷きながら離れるみくるに、最後に残ったハルヒは自ら抱きつき、
「ほら、みくるちゃんもそんなに泣かないの。
あなたとは色々あったわね。でも、こんなに泣いてるみくるちゃんを見るのは、バニーガールになって一緒に校門でビラ配りしたとき以来だわ。
卒業式の時だってみくるちゃんこんなにひどくは泣いてなかったもの。
そういえば、みくるちゃんってば最初に来た時からあたしより胸が大きかったけど、今はどうなったのかしら?えいっ!」
と、わざと明るい声を出してみくるの胸をもみ出した。
「ふぇっ!?すす涼宮さぁん?」
「やっぱりね!あの頃よりもまた一回りも大きくなってる。さすがはあたしが選んだ萌え要員ね」
そして、耳に甘噛みしたりなど、一通りのハルヒ流みくる愛撫術の儀式を済ませた後、真剣な顔を浮かべて、
「みくるちゃん、あたしやキョンが高一だった時から始まって、今日までみんなで続けてきた約5年間のSOS団としての活動、楽しかった?」
とみくるの瞳を真っ直ぐに見つめながら聞いた。
みくるは、いきなりの質問にきょとんとしていたが、やがてこぶしを握り締めて、
「はいっ!」
と残された元気を振り絞るかのように、しかし偽りのない表情で答えた。
ハルヒは、そんなみくるを見て、瞳を潤ませながらもいつものような満面の笑みを何とか浮かべて、
「なら決まりね!みくるちゃんは未来に帰ろうと、あたしのSOS団の団員であることには変わりないの。時代が違うからって退団することは許されないわ。
だから、今日からあなたを、SOS団未来支部の支部長に任命します!あたしが会いに行くその日まで、向こうで待っていなさい。この時代におけるあたしからの、最後の団長命令よ!いいわね?」
と一気に言い切った。そんな様子を見て、みくるは少しだけ元気を取り戻したのか、涙を流しながらも笑みを浮かべて、
「はいっ!」
と先よりも勢いを付けて頷いた。
そして、そこまで来てふと思い至ったのか、
「そういえば鶴ちゃんにもお別れはしないといけないんじゃない?みくるちゃんにとってはこの時代における大親友なんだしさ」
「鶴屋さんは…きっとわかってくれます。それに、わたしもう本当に時間がないんです。今からだと…」
「いやっほーいっ!親族会議があんまり退屈だったから抜けてきちゃったさっ?あれれーっ、どうしたんだいっ、みんな妙にしんみりしちゃってるよっ!せっかくの門出の日なんだから、元気出すにょろっ!」
鶴屋さんは、みくるが何か言いかけた時に、ちょうどタイミングよく入ってきたのであった。
「元気ねえ…」
「どうしたんだいハルにゃん、キョンくんっ?喧嘩でもしちゃったかなーっ?」
「いえ、鶴屋さん。そういう訳じゃなくて…」
「みくるちゃんがね、未来に帰っちゃうのよ」
ハルヒの一言で、鶴屋さんもさすがに事の重大性に気付いたらしい。珍しく真剣な顔を浮かべ、
「そうかいっ?それじゃあ仕方ないっさねっ。でもあたしは信じるさっ!ハルにゃんたちならみくるにまた会うこともできるにょろっ!
そういう訳でみくるーっ、あたしのことは気にせずに安心して帰るといいっさ!あたしは多分その場を見ない方が良いと思うしこの辺にしとくよっ!またその時に会おうっ!」
というなり、みくるの頭を慌ただしく撫で回すだけ撫で回して、脱兎のごとく去ってしまった。
「……鶴ちゃん、みくるちゃんの前では元気な姿を見せておきたかったのね。あの人らしいわ。でも、最後に会えてよかったじゃない。これで、みくるちゃん、今度こそもう思い残すことはないでしょ?安心していってらっしゃい」
去っていく鶴屋さんの方を向いていたハルヒが、そう言ってみくるの方に向き直ると、
「みなさん、今までの楽しいお時間、本当にありがとうございました。 朝比奈みくる」
と記された紙が、ひらひらと舞っているばかりで、みくるその人はもうどこにもいなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます