17. 涼宮ハルヒの告白

 彼女は、昼休みが終わる前に戻ってきた。何やら考えている様子だった。


「即答はしてもらえなかった、というところかな?」

「…そうね」


 事の顛末はこうだった。


 髪を結びながら教室に直行して戻ったハルヒは、キョンを見つけるなり、


「ちょっと屋上まで来なさい」

「はあ?」

「いいから、来て。団長命令よ」

「やれやれ」


 とぼやくキョンを屋上まで引っ張ったらしい。


「あんたさ、あたしのことどう思ってるの?」

「そうだな、たった一人の、かけがえのないSOS団の団長閣下だな」

「そうじゃなくて」

「なんだ?」

「あんた、あたしのこと好き?」

「…嫌いじゃないさ。なんだかんだ言ってもこの楽しい生活が手に入ったのは、お前のお陰だからな」

「じゃあ、あたしと付き合いなさい」

「は?」

「だから、あたしはあんたと一緒じゃなきゃ、たとえ世界の中心にいても面白くないのよ!あんたといるだけで、あたしはこの世の不思議ともっとたくさん出会える気がするの。だから、あたしと付き合いなさい。これは団長命令だから。いいわね?」

「ちょ、ちょっと待て」

「あんたは…、そうね、今のままの髪型が一番いいと思うわ」

「お、おい」

「反論はあんたが生きている限り認めないわ。あんた、あたしのポニーテールが好きなんでしょ?」

「それはそうだが…っ」


 そうして、有無を言わせずに引っ張り寄せてキスしたようだ。


 慌てて、何とか振りほどいたキョンは、


「お前の気持ちは分かった。だが、少し考えさせてくれ。ハルヒ、お前は『ただの恋愛』で満足する器じゃないだろ?」

「それはそうね」

「…だから、ただの恋愛で終わらないようにするために、少し待って欲しい。繰り返すが、俺はお前が嫌いじゃないんだ。だから今はまだ待ってくれ。いいな?」

「…」

「俺は宇宙人でもないし、古泉のような超能力者でもなければ、あいつのような異世界人でもないんだ」

「そんなことは分かってるわよ。でも、それとこれとは別」

「と、とにかく…しばらく考えさせてくれ」

「そうね。あんたの頭じゃあたしの気持ちを理解するまでに三日はかかるかもしれないから、待ってあげるわ。でも、三日よ。それを過ぎたら、私刑の上に罰金なんだからね!」

「あ、ああ、分かったよ」


 と言って、逃げるように去ってしまったらしい。その後ろ姿に、ハルヒは、


「それまでの間に、有希やみくるちゃんに手出ししたら許さないからね!」


 と叫んだが、聞こえたかは分からない、などと悩んでいた。


「これで良かったのかしら」

「ハルヒさんらしい告白で、気持ちはしっかり伝わったと思うよ」

「でも、もう少し、女の子らしい形にした方が良かったんじゃないかしら。あんな強引な告白で、キョンに嫌われたら、あたしどうすればいいのかしら」

「キョン君がそんなことでハルヒさんを嫌うとは思いませんよ。その程度だったら、彼はとっくにあなたとの関係を断っているはず」

「ねえ。あたしばかり話しているけど、少しはあんたも話をしたら?」

「え?」

「あんたの好きだった、元の世界の子のことよ」

「…もう昼休みも終わりですから、放課後にでもお話ししましょう」

「あんたって結構ずるいのね。そんなの、時間旅行でもすればいくらでもどうとでもできるじゃないの」

「ですが…」

「ふうん、あんたも怖いのね。あたしのことあまり言えた立場じゃないわね。まあ、いいわ。放課後まで待ってあげるから、それまでに腹をくくりなさい」

「分かりました」

「後、あたしとはタメでいいわよ。何となく、あんたその方が本音で話してくれそうだし」

「…考えておく」

「じゃあ、行くわよ!教室まで競争で、負けた方がジュースおごりだからね!」

「それなら最初からおごりますよ。私に、あなたに敵うほどの運動技能はないので」

「情けないわね。あんた男でしょうに」

「…と見せかけて、ワープしちゃおっと」

「ちょ、ちょっと、それならあたしも連れて行きなさいよ」

「ハルヒさんはダッシュで間に合うと思うので」


 そう言って、私は教室までワープした。


 そう時間がかからぬうちにハルヒがやってきて、


「あんた、やることが汚いわね」

「安心してください。ちゃんとジュースはおごるから」

「ふん。まあ、いいわ」


 昼休み終了の鐘が鳴った。

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