11. 涼宮ハルヒの質問
部室に戻ったハルヒは、戸惑ったような表情で何やら考え込んでいたが、やがて矢継ぎ早の質問を私に浴びせてきた。
「すると、あんたがさっき話していた喜緑さんや周防何とかも宇宙から来ているのね。
みくるちゃんと有希のことは分かったけど、古泉くんは?やっぱり超能力者なの?
あと有希の使った能力の元々の持ち主とやらは誰なのよ?」
「順にお答えしましょう。
仰る通り、喜緑江美里、周防九曜はともに宇宙から来ています。ただ、喜緑は長門有希と同系列のヒューマノイドインターフェースですが、周防九曜は天蓋領域と呼ばれる別の存在が派遣した人型イントルーダーということになっています。
古泉一樹は、限定的な環境でのみ力を発揮できる、制限付きの超能力者です。ただ、あなたとしては彼がその能力を発揮している場面をあまり見たくないかもしれませんね。
最後に、長門有希が世界改変に利用した能力の持ち主は、涼宮ハルヒさん、外ならぬあなたなのですよ。あなたには、世界を思い通りに作り替える力がある」
「あたしが?…でも、これまでの色んな事を見る限り、冗談ではなさそうね」
「ええ。とりあえず、これから古泉一樹があなたのために超能力を発揮している現場にでも行ってみますか?」
ハルヒは、しばし沈黙していたが、ゆっくりと答えた。
「…今日はやめておくわ。団員が色々あたしの知らない秘密を持っていたらしいと知って、というか、まさにあたしが望んでいそうな不思議をひた隠しにしてきたらしいことを知って、それだけでもう今日は頭が一杯だから。
あたしにあんたが言うような力があるという自覚もまだ持てないし、それまで本当だったとしたら、いくらあたしでも頭がこんがらがりそうだわ」
「分かりました。それでは、今日はこの辺にしましょう。また明日の放課後、お時間をいただけますか?」
「どうしようかなあ…。あたしはね、いつも通りキョンやみくるちゃんや古泉くんとも一緒にいたいのよ。二日も活動をおろそかにはできないわ」
「それでは、昼休みはいかがです?部室集合ということで」
「それならいいわ」
「了解です。それでは、今日はこれで失礼します」
私は部室に置いたかばんを手に取り、ドアに手をかけたところで、ふとハルヒに向きなおった。
「そうそう。最後にもう一つだけ。
不思議に出会いたいなら、出会える頭数が多い方が有利です。地方の小都市らしいここよりも、都心などの方が。あなた方が基本的に標準語に近い言語を話すことを考えても、今のロケーションはミスマッチなんですよ。
試しに、場所替えを考えてみてはいかがでしょう?明日にはうまく行っているかもしれませんよ?」
「…念ずれば通ずというほど簡単ではないと思うけど、考えておくわ。出会う人が多いほど不思議が転がっている可能性が高いというのは一理あるし、都内なら奥多摩のような不思議がありそうな自然地帯もそう遠くないしね」
「その通りです。たとえ団員が十分に不思議だとしても、彼らとただの遊びをするだけで満足していては、彼らの持っている不思議さの無駄遣いですからね。
あなたは、もっともっと様々な不思議に出会うべきなんですよ。それでは、また明日」
部室を出て、ドアが閉まるまでの間に、ハルヒが何やら独り言を言っているのが聞こえた。
「世界はあたしを中心に動いている。みんなあたしを特別な存在だと考えて、そのように行動している、だっけ…?なるほどね。そういうことだったのね、キョン。まあ、あんたたちが何かをあたしから隠している気は薄々していたけどさ。こんなに面白かっただなんて…」
彼女の表情は見なかったが、何となく、たまらぬワクワク感故に、抑えようとしても自然と笑みがこぼれ出すような、そんな表情で笑っている気がした。
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