5. 転入団員
「えー、紹介する。本日よりこのクラスに転入することになった…」
「ちょっと、あんた昨日は北高の生徒ですらなかった訳?」
ハンドボール部の活動に熱心らしい岡部教諭の自己紹介のさなか、ハルヒが割って入る。
「ええ、昨日は少しばかり下見させていただいておりました。文芸部と、…SOS団の」
「モグリならお断りよ。ヤスミちゃんはその辺自覚していたようだったけど」
「だからこそ正式に北高に転入したのです。これからよろしくお願いします。涼宮ハルヒさん、キョン君、そしてクラスの他の皆さんも。ククク」
岡部教諭は唖然としていたが、咳払い一つして、
「…ということだ。涼宮君、既に君の知り合いなら、君なら何とかできるだろう。という訳で、今日から涼宮君の隣の席に座りなさい」
「はい」
クラスのざわめきが聞こえる。評価の定まらない珍味を見るかのような視線を向けているのは、「アホ」な俗物の谷口だろうか。
しかし、私としては、谷口その他有象無象には興味はない。
真っ直ぐにハルヒの隣の指定された席に向かった私は、変わらず何か考えている様子の彼女にそっと話しかけた。
「どうやらタイミング的には『謎の転校生』になってしまいましたね。しかし、ただの『謎の転校生』で終わらせるつもりはありません。それじゃあ古泉一樹のキャラクターと被ってしまいますしね。どこかで、ハルヒさんとお二人だけでお話ししたいのですが、お時間取れますか?」
「昨日のマジックの種明かしなら興味ないわ。どうせ古泉くんの言う通り、一種の集団催眠術なんでしょ?」
「…彼がそう説明したがる理由も含め、色々お話したいことはあります。あなたには、今以上に世界を大いに盛り上げて欲しいんですよ」
「…そうね。まだ出会えた不思議もそんなに多くないしね。あんたは何かあたしにくれる訳?」
「ものによっては構いませんが、キョン君を含めた他のSOS団員はあなたが色々知り過ぎることを望んでいないようなので、何らかの妨害が入るかもしれません。よって、やはり二人きりじゃないと困るんですよ」
「あのバカキョンがあたしから隠し事なんて、できる訳ないでしょ?三百万年早いわよ…と言いたかったけど、結団一周年記念日のあれを思い出すと、そうとも言い切れないのかもしれないわね。でも、また何かのサプライズ企画だったら聞きたくないわ。楽しみがなくなってしまうものね」
「サプライズと言えばサプライズなのかもしれませんが、企画として作られたサプライズとは全く違う種類のサプライズです。
しかし、あなたは無意識的にお気づきなのではありませんか?古泉一樹の異常に広すぎる人脈や、長門有希のあまりの万能人間ぶりから、あることに」
案の定、ハルヒにも何か心当たりがあったらしく、言った。
「…あんた、ただの『謎の転校生』枠ではなさそうね。いいわ。
キョン、今日の放課後は一日団長直々の入団面接で終わらせるから、あんたや有希、みくるちゃん、古泉くんは休みでいいわ。…まあ、文芸部部長の有希は来てもいいと思うけど、他のメンバーは、今日は立ち入り禁止だからね!」
「話が早くて助かります」
「……」
キョンの嫌悪感を含んだ視線が絡みつくのを感じた。安心したまえ、私はB級三角ラブコメディーをやるつもりはない。
まあ、私自身、涼宮ハルヒを愛してはいるのだが。
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