次の行き先もサイコロの目に従う

 3月21日正午。新宿から深夜バス『はかた号』に乗って福岡県は博多に着いた安永拳、城ヶ崎しげる、玉木浩、ルギーの4人。駅近くの喫茶店で休んでいる安永、しげる、玉木を尻目にルギーはホワイトボードに何か書いていた。


「ルギーさん、もしや次の行き先を・・・」

「ああ、リーダーくん。1回だけで終わるわけないでしょ」

「今度は楽で優雅なルートにしてよ」

「ふふふ・・・」


 不敵な笑みを浮かべるルギー。


 喫茶店を出た一向は駅の入り口に集まっていた。まだ疲れが残っている安永、しげる、玉木に対し、ルギーは一人盛り上がっていた。


「さて、盛り上がってまいりました釜揚サイコロの旅。今度の行き先はどこになるのでしょう?次の選択肢はこれ」


 ホワイトボードを見せるルギー。ホワイトボードには次の行き先が6つ書かれていた。


 1.新幹線で出戻り 東京

 2.天草四郎? 天草

 3.もう帰りたい 静岡

 4.北の国から 札幌

 5.米がうまいよ 秋田

 6.桜島が絶景 鹿児島


 玉木が目を見開く。


「またもや、とんでもない行き先が」


しげるはまじまじとホワイトボードを眺める。


 「北は遠いな・・・。4は引きたくないね」


 安永の目は輝いている。


「鹿児島は魅力を感じるね」


玉木がアゴに手をあてる。


 「うん、桜島は見てみたいね」


しげるは腕を組んだ。


 「そうだね。ひくなら6だな」


ルギーは手にサイコロを持っている。


 「次は誰が振るのかな?」


玉木が安永に視線をあてた。


 「博多を当ててしまった男には振らせたくないね」

 「俺のこと?」


すると、しげるが手を挙げた。


 「よし、ここは俺だな」

 「さすがリーダー」

 「じゃ、リーダーくん、お願いします」


 ルギーはしげるにサイコロを渡す。


 「何が出るかな、何が出るかな?それはサイコロにまかせよ」


 ルギーの掛け声とともにしげるがサイコロを振る。そして出た目は、


 「2!天草!」


玉木がスマホをいじり始めた。


 「天草って熊本にある大きな島みたいだね。イルカが見れるって有名みたい」


安永としげるはイルカに反応する。


 「イルカ見てみたいね」


 楽しそうな3人に対し、ルギーは意気消沈している。


 「リーダー。やっちゃったね・・・」

 「どうしたの、ルギーさん?楽しそうなところじゃない」

 「君らね、そこまで何で行くと思ってんの?」


唐突に安永が答える。


 「電車ですか?」

 「違うよ!島だよ、天草は。飛行機だよ、飛行機」


玉木が拍手する。


 「おお、優雅ですね」

 「お金が・・・」


 3月21日午後6時。一行は博多空港から飛行機に乗り、熊本県天草に向かった。着いた時にはすっかり日も暮れていた。


遠くを見つめるしげる。


 「今日はもうイルカは見れないね」


安永が荷物を手に取った。


 「じゃ次行きましょうか、ルギーさん」

 「今日はここで泊まるよ」

 「何でですか?」


ルギーがため息をつく。


 「飛行機が明日の朝までないんだよ。だから、今日は宿探して泊まるよ」


若者3人はうなづいた。街を散策して安い宿に入った4人は食事をとり風呂に入ったあと、そのまま熟睡してしまった。

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