番外編 卒業旅行

サイコロ振ったらとんでもない卒業旅行になりそうだ

3月20午後2時、成田空港。オーストリアへ留学に行く恋人の三日月モモを見送った安永拳は友人の城ヶ崎しげる、玉木浩とともに東京へ卒業旅行に行く予定であった。しかし一緒に見送りにきたしげるのおじ、ルギーから『優雅な旅』を提案された。すると、ルギーはサイコロを安永に手渡した。


「ルギーさん、サイコロが何か?」

「ヤスケンくん、このサイコロを使って旅をするんだよ」


 いまだ状況が読めない安永は首をかしげた。ルギーは手に持ってた袋からホワイトボードを取り出す。ホワイトボードに書かれていたのは以下の文字。


 1.ドリームササニシキ号

 2.金沢エクスプレス号

 3.スサノオ

 4.プレミアムドリーム号

 5.オレンジライナーえひめ号

 6.はかた号


「これは?」

「1から6まで選択肢がありますね」


 しげると玉木もホワイトボードをまじまじと見る。


「そうだ、諸君。サイコロを振って出た目の場所に行くってこと」


 自信ありげに答えるルギー。


「でも、この選択肢じゃ行き先がよくわからないんですが。なんか乗り物の名前っぽいですが」

「ふふふ、ヤスケンくん鋭いね。これは乗り物、行き先へ行くためのバスなんだよ」

「「「ええっ!」」」


 驚く安永たち。


「ちょっと何でバスなんですか?」


しげるが目くじらを立てる。


「いや、バスが一番安いから」


ルギーは視線を逸らした。


「安いからって、俺たちを『優雅な旅』に連れてってくれるんじゃなかったんですか!?」


玉木は拳を握りしめる。


「いや… …へそくりがナンシーにばれちゃって… …」


 すると、ルギーは安永に目を向けた。


「じゃ、気を取り直してサイコロを振りましょうか。ね、ヤスケンくん」

「お、俺ですか。そんな責任負えませんよ」

「いいから、いいから。振って振って」


 安永に無理やりサイコロを振らせようとするルギー。


「じゃあ、わかりましたよ」


意を決した安永はサイコロを見つめる。


「ヤスケン、6は出すなよ。6は!」


しげるが声を荒げる。


「そうだな、リーダー。『はかた号』だもんな」

「何がでるかな、何が出るかな?それはサイコロにまかせよ!」


 ルギーの掛け声に合わせて安永がサイコロを投げた。サイコロを追いかける一行。そしてサイコロの出た目は… …


「ろ、6… …」

「は、はかた号… …」

「なぜだ… …」


 がっかりする一同。


「ち、ちなみにバスの行き先はこんな感じ」


 ルギーが落胆した顔で、ホワイトボードにバスの行き先を書いた。


 1.ドリームササニシキ号 仙台

 2.金沢エクスプレス号 金沢

 3.スサノオ      出雲

 4.プレミアムドリーム号 大阪

 5.オレンジライナーえひめ号 松山

 6.はかた号      博多


「やっぱり博多か」

「ルギーさん、時間はどれくらいかかるのですか?」

「かなりかかるみたいよ」

「か、かなりいい加減な… …」


 あきれる一同。


 電車「成田エクスプレス」に乗り新宿に向かう一同。

 全員沈んだ顔をした中、しげるが口を開いた。


「ルギーさん、明日は何時出発ですか?」

「明日って何さ?」

「いや、バスに乗るんでしょ。だから何時出発かなって」

「今日だよ」

「はい?」

「今晩出発だよ」

「いやいやいや、夜出発ってどういうことですか?」

「夜出るんだよ、バス。深夜バスってやつ」

「「「深夜バス!?」」」


 開いた口がふさがらない安永、しげる、玉木の3人であった。

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