退院

 2月28日。モモと安永は釜揚噴水公園の噴水の前にあるベンチに座っていた。


「退院おめでとう、ヤスケン」

「ありがとう、モモッチ」

「意外と早かったね」

「うん、タック先生も驚いてたよ。骨折も内臓もすっかり治ってるって。これもミッフィーのおかげだね」

「でも、病み上がりだからあまり無理しちゃだめだよ。ミッフィーからもらった命なんだから。大事にしないと」

「はい、わかりました」


 二人は立ち上がり、公園を散歩しに行った。


「もうすぐ卒業式だね、ヤスケン」

「うん。で、モモッチはいつウィーンに行くの?」

「うーん、3月20日だったかな?」

「じゃ、見送りに行くよ」

「ありがと。ヤスケンはいつから修業なの?」

「俺は4月から」

「そっか、がんばってね」

「うん。こうして二人で会えるのもあと少しなんだよな」

「ん、寂しい?」

「寂しくないって言ったら、嘘だけど」


 すると、モモがいきなり安永に口づけをした。


「な、なに?なんで、なんで?」


 慌てふためく安永。


「おまじないよ」

「何の?」

「あたしを忘れないように。そして、浮気しないように」

「う、浮気なんてするわけないだろ」

「ふふふ、念のためよ」

「帰るよ!」


 安永は少し怒った振りをしてモモの手を引いた。


「はーい」


 モモは安永の腕に抱きついた。安永は抱きついたモモに対して特に抵抗もせず、二人はそのまま家に帰って行った。

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