キセキ

手術

 2月14日、18:00。とある総合病院に救急車が一台やってきた。

 救急車から一人の患者が担架に運ばれてくる。

 担架が向かった先には、救急救命室。たくさんのベッドが並べられ、点滴、心電図などの医療器具も揃っている。

 そこへ眼鏡をかけ青い服を着た長身の男性医師がやってきた。


「戸塚先生、クランケはバスに激突、右ろっ骨骨折、内臓破裂による出血の模様」

「血圧は?」

「80の60です」

「脈拍は?」

「55です」

「オペ室の準備を」

「はい」


 医師たちは緊迫した状況であるにもかかわらず、淡々と、かつ手際よく手術の準備をする。

 担当医師は患者の顔に見覚えがあるようだが、普段と変わらぬ対応をしている。


 患者がオペ室に運ばれていく。病室の外にいた三日月モモがベッドに駆け寄ろうとするが、看護師に近寄るのを止められた。


「今から手術だからね。大丈夫よ、戸塚先生は名医だから」


 看護師に説得させられ、少し落ち着くモモ。すると、後ろから担当医師が現れた。

 モモがその医師の顔に見覚えがあるようだ。


「ルギー……じゃなくてタックさん?」

「ああ、モモちゃん。大丈夫、任せて」


 タックは右の親指を軽く立てて、そのままオペ室に入って行った。


「お願い、タックさん、ヤスケンを助けて……」


 モモはオペ室の前で手を合わせて祈るしかなかった。


 タックは手を消毒し、手袋をはめ、腕を上げたまま手術台の前に立った。


「血圧は?」

「80の60です」

「脈拍は?」

「55です」

「輸血の準備は?」

「確保できました」

「では、ただいまからオペを始める。麻酔注入」

「はい」


 安永に麻酔をかけてしばらくして、


「麻酔完了しました」

「よし、メス」

「はい」


 タックが安永の腹部をメスで切っていく。切った瞬間安永の腹部から大量の血液が噴き出してきた。


「先生、血圧下がってきてます」


 看護師が焦った声で状況を説明する。

「血が出てるから、仕方ないよ。それよりも俺らが焦っちゃいかんよ。

 エアーで血液を吸引、そのあと内臓の止血に入る」

「はい」


 医師団は手術を続けた。

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