ヤスケンの悲劇

 安永拳が駅に着くと、改札口には三日月モモがいた。安永に手を振るモモ。


「やあ、ヤスケン」

「やあ、モモッチ。今日はなんで来たの?」

「なんでって、今日はヴァレンタインじゃない。はい、チョコレート」


 チョコレートを受け取った安永は驚愕の顔をした。


「何これ?チロルチョコじゃない?!」

「だって、留学の準備で忙しかったから、これくらいしか用意できなかったんだもん。チロルチョコでもあげたんだからいいじゃない?」

「なんだよ、忙しいからってもう少し凝ったものくれればいいじゃない?菊ちゃんなんて……」

「何、怒ってんのよ?それに菊ちゃんって……。菊ちゃんと何かあったの」

「もう、なんでもないよ!」


 安永が振り向き、学校に戻ろうと走って行く。その瞬間、モモの目の前にバスが通り過ぎた。

 次の瞬間、バスは止まり、バスの前では安永が血まみれになって倒れていた。


「いやー!」


 モモが惨状を見て、大きな声で叫んだ。その時、モモが持っていたバッグからハート形の大きな包みがこぼれた。

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