恵方巻きの救世主

 そして、正午。全員に太巻きが配られ、安永としげるが席に着くと、また鈴井校長からの放送が流れてきた。


「みなさん、太巻きはいきわたったかな?さて、本日は『春の節分』です。

 ということで全校イベントとして今から『恵方巻き』をやります。

 みなさん、今年の恵方、西南西を向いて太巻きを無言で食べきりましょう!では始め!」


「おい、西南西ってどっちだよ」

「あっちだよ、あっち」


 鈴井校長の合図に合わせ、西南西を向いて太巻きを無言で食べていく一同。

 男子は一気に食べきることができるが、女子は食べきれない者が続出した。

 3―Dの教室でもある女子が、


「ちょっと、これ多すぎる。食べきれないよ」

「じゃ、あたしが残り食べようか?」

「え、モモ?あぁた、自分のは?」

「もう食べきったから」

「え……あぁたって。じゃ頼むわ」

「任しといてよ」


 三日月モモが頼もしい言葉とともに友人の恵方巻きを食べた。

 それも一本だけでなく、2本、3本と続々と友人の残した恵方巻きを食べていく。

 その姿を見た男子は、


「救世主だ。三日月モモは恵方巻きの救世主だ」


 と感嘆の声をあげた。

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