登呂遺跡

 土曜日。安永とモモは静岡駅を降りて、バスに乗っていた。

 張り切る安永とは対照的にモモは不満そうな顔をしていた。


「ヤスケン、本当にいいの?何にもないところだよ?」

「なに言ってんの?歴史の名所じゃない?きっと面白いって!」


 あるバス停で安永とモモはバスを降りた。まわりは住宅が並んでいる。


「へぇ、住宅街にあるんだ。意外」


 安永ははやる気持ちを抑えていた。


「モモッチ、行こう」


 安永はモモの手を引き、住宅街にある広場の中に入って行った。

 広場にはショベルカーが何台か動いていた。殺風景な広場には木造の倉庫や、古い時代の住居が数件あった。

 あまりにもさみしい風景である。その光景を見た安永はうなだれた。


「ここって、本当にあの……」

「そうよ、ここが有名な『登呂遺跡』よ」

「そう、ここが歴史の教科書に載っている……」

「だから、何もないって言ったじゃない。ね、元気だして。とりあえず竪穴式住居でも見ようよ」


 モモはうなだれる安永の肩をたたき、竪穴式住居の中に入って行った。


「意外と広いね」

「そうだね。でも寒いな」

「それも言える。帰ろうか。このあと、あたしビレバンに行きたいな」

「ビレバンって?」

「宝島よ」

「宝島!面白そう。行こうか」

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