100円ショップ

 一方、藤田のりは日向夏子と夜の商店街を歩いていた。


「なっちゃん、このあと百円ショップね」

「はいよ。で、花の高校教師はどうなの、のりちゃん?」

「けっこう大変。授業はなかなか思い通りならないし、意外と明日の準備とかが大変なんだよね。

 でも、お店にずっといるよりかはいいけど」

「お店のほうはいいの?」

「バイト雇ったみたいだし。いいのよ、お父さんちょっと私に甘えすぎなのよ。

 もう港の看板娘なんてダサイ境遇なんて嫌」


 少し不満げな顔をするのりちゃん。その様子を少し心配そうに見つめるなっちゃん。


「のりちゃん」


 急にのりちゃんを呼びとめるなっちゃん。


「何?」

「何って、百円ショップ行くんじゃないの?通り過ぎちゃうよ」

「そうだった。ごめん。行こう、なっちゃん」


 二人で百円ショップに入る。


「ふふーん」


 上機嫌で品物を探すのりちゃん。すると、のりちゃんが突然うろたえる。


「無い。洗濯ネットが無い。あれ?この前見つけたんだけど……あれ、あれ?」

「……後ろ」


 なっちゃんが小さな声で教えた。のりちゃんが後ろを振り向くとお目当ての洗濯ネットがあった。


「もうちゃんと教えてよ、なっちゃん!」


 恥ずかしそうに怒るのりちゃん。


「こんな姿は生徒には見せられないね。だって『頭のきれる先生』だもんね」


 微笑みながら皮肉をいうなっちゃん。


「なっちゃんの意地悪」


 のりちゃんはかわいらしく口を尖らせた。

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