留学
11月26日。釜揚高校の昼休み、越ひかり先生が突然モモを呼んだ。
「三日月さん、放課後に職員室に来てくれない?」
「はい」
首をかしげるモモ。
11月30日。安永拳と三日月モモは喫茶店でお茶を飲んでいた。
「モモッチ、この前なんで先生に呼ばれたの?」
「うん……実は留学の話が来て」
「留学?すごいじゃない。木琴の腕前が認められたんだ」
「うーん、木琴じゃなくて指揮者としてなのよ」
「え?玉木くんのまちがいじゃない?」
「私もそう思ったのよ。で、先生に聞いてみたら、間違いなく私だって。
留学を勧めた音大の教授がいうには
『君のシロフォン(木琴)の演奏でみせた全体を見据えたバランス感覚は指揮者向きだ』ってさ」
モモが大盛りのパフェをたらいあげる。
「ふーん、でもモモッチの指揮者姿も魅力だね」
「え、本当、ヤスケン?」
安永の言葉にモモは顔を赤らめた。
「で、留学先はどこ?」
「ん、ウィーン。音楽の都、ウィーンよ」
「ウィーンか。ウィーンといえば、あれだ。ウィーン少年……料理団!」
「え?それって『ウィーン少年合唱団』の間違いじゃない?」
「いや、料理団だって。ひなた寿司の洋ようちゃんが言ってたよ。
昔、ウィーンに行った時に『ウィーン少年料理団』っていう料理人の卵たちに会ったって」
「なんか嘘っぽいな……」
「じゃあ、会ってみる?」
「え、『ウィーン少年料理団』に?」
「そうじゃなくて、ひなた寿司の洋ちゃんに」
「本当?ひなた寿司っていつも満席の有名店でしょ?話なんて聞けるかな?」
「今はお昼休みだから大丈夫だよ。行こう」
「うん」
安永とモモは喫茶店を出て、ひなた寿司へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます