マグロの味
その夜、鈴井校長、ルギー、そしてブシドー教授の3人は「ロビンソン亭」にいた。
「ブシドー教授、ここの魚料理はうまいですから。ぜひぜひ」
「ソウデスカ。私刺身食ベルノ、初メテデス。楽シミデス」
すると、一人の女性が刺身の船盛りを運んできた。
「刺身の船盛りをお持ちしました。どうぞ」
「あれ?のりちゃんじゃないの?」
看板娘ののりが現れなかったことに驚くルギー。
「今日からバイトすることになりましたミルクです。よろしくお願いします」
愛想よく答えるミルク。
「よろしくね、ミルクちゃん!」
すでに酔っているのであろうか、鈴井校長の声が大きい。
「ささ、ブシドー教授どうぞ、どうぞ」
「アリガトウゴザイマス。デハ、イタダキマス」
と言った瞬間、ブシドー教授の手が止まる。
「どうしました、ブシドー教授?」
心配そうに見つめる鈴井校長。
「スミマセン、コノ赤イノハ何デスカ?」
「これは『マグロ』ですけど」
「ン?『マグロ』デスカ?私ガコノ前食ベタノト違イマスネ」
「このマグロもおいしいですから、どうぞ」
ブシドー教授が恐る恐るマグロの刺身を一切れ食べる。
「アレ?甘クナイデスネ」
「甘くない?先生、マグロは甘くないですよ」
「ルギー、アナタトコノ前食ベタ『マグロ』ハ甘カッタデスヨ」
「先生……それは『マグロ』じゃなくて、『マグロ焼き』というスイーツですから」
「アア、私勘違イシテマシタ。デハ、『マグロ焼き』アリマスカ?」
「わかりました、ちょっと頼んでみます」
ルギーが厨房へ行き、マグロ焼きを頼みに行った。ルギーが戻り、数分後バイトのミルクが愛想良くやってきた。
「マグロ焼き、お待たせしました!店長からのサービスで山盛りですよ」
ミルクが持って来たのは大きなさらに山盛りに積まれたマグロ焼きであった。
「アリガトウゴザイマス」
マグロ焼きをほおばるブシドー教授。ご満悦な顔をする。
「鈴井校長モドウゾ」
「では、いただきます」
なぜか、額から汗をかく鈴井校長。
「ささ、鈴井先生」
ルギーがにやりとほほ笑む。鈴井校長はルギーを一瞬にらんだ後、マグロ焼きをほおばった。
「うん、うん、おいしいですね……」
「本当ニオイシイデスネ」
二人の対照的な姿を見たルギーは笑いをこらえようと下を向いた。
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