のり先生の料理教室

 11月24日。三日月モモは「居酒屋ナンシー」の厨房にいた。

 厨房にはナンシー、日向夏子、藤田のりの3人がいる。


「じゃ、モモちゃん、今日は『ずんだケーキ』作るわよ」

「はい、のりさん」

「『のりさん』じゃないでしょ!『のり先生』でしょ!」

「はい、のり先生」


 割烹着を羽織ったのりさんは気合が入っている。


「モモちゃん、これ着て」

「はい」

 割烹着を着るモモ。


「モモ、結構似合っているね」

「そうね。でもあたしはちょっと」

「ねえ」


 ひそひそ話をするナンシーとなっちゃん先輩。すると、のりさんが


「ちょっと、そこの二人も着る!」


 と言い、無理やり割烹着を着せられるナンシーとなっちゃん先輩。

 割烹着を着た4人がずんだケーキを作りはじめる。


「じゃモモ、まずは枝豆をゆでてね」

「わかりました、なっちゃん先輩。でも、かなりの量ですよね」

「これぐらいないと、ケーキに必要なあんこができないからね。いくよ!」


 ゆであがった枝豆を今度はミキサーにかける。ミキサーでつぶした枝豆を砂糖や水と一緒に鍋に入れて煮詰めていく。


「焦がさないようによくかき混ぜてね」

「はい、のり先生」


 15分後、緑色に染まったあんこが鍋に出来上がった。


「けっこういい出来ね。今度はスポンジね。こっちにいらっしゃい、モモちゃん」

「はい、ナンシーおばさん」

「おばさん?」


 モモをすこしにらむナンシー。


「……お姉さん」

「ふふふ、いいわよ『おばさん』で」


 ほほ笑むナンシーに安堵するモモ。小麦粉、卵に砂糖をかき混ぜ生地を作る。

 そして生地をオーブンに入れる。


「おいしく、おいしく、おいしくな~れ」

「ナンシーさん……」

「ほら、あぁたも言うだぁよ」

「あたしもですか?」

「そうよ。これがおいしくなるポイントなんだから」

「……おいしく、おいしく、おいしくな~れ」


 オーブンに向かって恥ずかしそうにいうモモ。

 しばらくしてオーブンからスポンジを取り出す。出来はいいようだ。

 4人はスポンジにずんだあんを塗っていく。そして、出来上がったケーキを見たモモは、


「おいしそう……」


 唾を飲み込んだ。


「ちょっと、食べちゃダメだよ、モモ!ヤスケンにあげるんでしょ」

「だ、大丈夫ですよ、なっちゃん先輩」

「本当?」

「大丈夫ですって!」


 あせりの色が隠せないモモ。

 できあがったケーキを箱に入れ、帰っていくモモ。


「我慢、我慢」


 ケーキの誘惑に耐えるモモであった。

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