ペットショップでミルク
モモと安永はペットショップ「カプリコ」へ向かっていた。そして、モモたちの後ろをひっそりと尾行する二つの影。一人は大きなペットボトルを持っている。
「菊ちゃん、なんで尾行なんか」
「うるさいわね。とにかくあなたはあたしについていればいいのよ、田勢くん」
尾行していたのはサッカー部のマネージャー菊地萌子と吹奏楽部の田勢重幸だった。菊ちゃんは前を行くモモと安永を苦々しく見ながらペットボトルを握りしめた。
モモと安永がペットショップ「カプリコ」に到着した。
ドアを開け中に入ると、店長の苺和彦の姿はなく、奥に座っている女性店員が一人。
「すみません、犬とか猫のエサはどこにありますか?」
モモが店員にミッフィーのエサの場所を聞くと、
「あー、そっちよ、そっち」
店員は席から立たず、ぶっきらぼうにエサの場所を指差すだけだ。
モモは店員の態度に少し不満をもったが、渋々エサが置いてある場所に向かった。
「モモッチ、これなんかいいんじゃない?」
安永がにやけながら、一つエサ缶をモモに差し出す。
「どれどれ?……ぷっ、何これ?『ひな鳥丸ごと一羽』って、ありえないし」
「ウケるっしょ、試しに買ってみれば?栄養はありそうだし」
「そうね。遊びで買ってみるか」
『ひな鳥丸ごと一羽』と書かれたエサ缶を含め、エサをいくつか買ったモモ。
店員は無愛想にレジを打っていた。
そして、モモと安永が店を出ようとしたとき、店長の苺和彦が店に戻ってきた。
和彦は大きな袋を持っている。
「ただいま、あ、モモちゃんいらっしゃい」
「カズ兄ちゃん、こんにちは。今日はミッフィーのエサを買いに来たの」
「どうもありがとうね。あの抜けがらあそこに飾ってあるよ」
「え……ほんとだ……」
和彦が指さした先にはミッフィーの抜けがらが飾ってある額縁があった。
その異様な姿に苦笑いするモモと安永。
「ちょっと、そこの二人。何か用?」
女性店員が突如他の客に無愛想に声をかける。
「ちょっと、ミルクちゃん。これ飲んで」
和彦が大きな袋から缶をひとつ取り出した。缶には『ミルクセーキ』と書かれている。
ミルクはミルクセーキを一気飲みすると、満面の笑顔を浮かべた。
「いらっしゃいませ、お客様何かお探しでしょうか?」
突然、愛想が良くなるミルク。
「あの子、ミルクセーキが無いとすぐ機嫌が悪くなるんだ」
ため息をつく和彦。
「お疲れ様、カズ兄ちゃん」
モモが和彦をねぎらう。
「あ、菊ちゃん」
安永がミルクを見やると菊ちゃんがいた。
「あ……ども……ヤスケン先輩」
あわてふためく菊ちゃん。
「あら、田勢くん。もしかしてデート?」
モモが菊ちゃんの隣にいた田勢をからかう。
「違います!違いますよ!」
手を振り懸命に否定する田勢。
「みなさん、ミルクセーキ飲みませんか?おいしいですよ」
ミルクがミルクセーキの缶をモモたちに差し出す。ミルクセーキを飲む一同。
「おいしい」
「うん、甘くておいしいね」
「あたし、はまっちゃいそう」
モモ、安永、そして菊ちゃんが絶賛する中、田勢が、
「甘い……だめだ」
苦しそうな顔をする。
「何だって?」
突然田勢をものすごい形相でにらむミルク。
「はい、ごめんなさい!」
田勢はミルクの迫力に押され、ミルクセーキを一気飲みした。
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