ミッフィーの異変

「次は、最後になります!三日月モモさんとミッフィーです。どうぞ!」


 司会の平畠啓史に呼ばれ、モモとミッフィーがステージに上がった。

 ミッフィーを床に置くモモ。


「ミッフィー、転がりなさい」


 しかし、ミッフィーはぴくりとも動かない。


「ミッフィー、跳ねなさいよ!」


 モモの指示に微動だにしないミッフィー。


 ブルブル、ブルブルッ。


 ミッフィーが突如小刻みに震えだした。そして次の瞬間!


 ビリッ!


 ミッフィーの皮が真ん中から二つに裂けはじめたのだ。

 その異様な光景に悲鳴をあげる観客たち。

 そして、裂けた皮の中から現れたのは……


 前と変わらぬ姿のミッフィーであった。


「すみませんでした!」


 恥ずかしくなったモモはミッフィーとミッフィーの脱皮した皮を持って急いでステージを降りた。


「あ……ありがとうございました。三日月モモさんとミッフィーでした」


 さすがの司会も少し呆けてしまった。


 ペット自慢大会も終わり、ミッフィーを抱え噴水で一人溜息をつくモモ。

 そこへあすか先生がやってきた。


「あすか先生、優勝おめでとうございます。

 そっか、ミッフィー貸すんですよね。いつがいいですか?」

「あ、それはいいや……じゃね。元気出して」


 あすか先生とマロン軍団は足早に去って行った。


「あんたが脱皮するから、バナナも取れなかったし、あすか先生も冷めちゃったわよ」


 軽くミッフィーをたたくモモ。そこへいとこの和彦が現れた。


「モモちゃん、残念だったね」

「うん、まさか脱皮するとは思わなかったから。あれじゃみんな引いちゃうよ」

「ところでさ、あの皮持ってる?」

「え?ミッフィーの抜けがらのこと?」

「うん」

「持ってるけど、はい」


 モモがミッフィーの抜けがらを和彦に渡すと、和彦が嬉しそうな顔をした。


「これは、貴重だよ。今度店に飾ろう。じゃね、モモちゃん」


 和彦はミッフィーの抜けがらを持って、帰って行った。


「少しは役に立ったみたいね……」


 モモがミッフィーを撫でると、ミッフィーは軽く跳ねた。

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