ペット自慢大会

 次の日曜日。噴水公園に設けられた特別ステージにはたくさんの観客が集まっていた。

 ステージには『釜揚町ペット自慢大会』と大きく書かれた看板が掛けられている。

 ステージに黒い帽子とスーツを着た男性が現れた。


「釜揚町のみなさん、こんにちは!とうとうやってきましたペット自慢大会。わたくし司会を務めさせていただきます、平畠啓史です~」


 司会のあいさつが行われた瞬間、盛大な歓声があがった。


「自慢のペットの特技を競わせるこの大会。なんと、優勝賞品はバナナ1年分!ペットの餌にも、今話題のバナナダイエットにも使えますねぇ。でも食べすぎには注意ですよ」

「審査員はこちらの4人です」


 司会の平畠啓史の合図で審査員がステージの審査員席に座った。


「右から一人目は、釜揚高校初のインターハイ出場者、城ヶ崎しげる君です。城ヶ崎くんはどんなペットが好きですか?」

「えーっと、クワガタですかね」

「クワガタって時期が時期だけに今日は出てきそうもありませんな」


「次は、居酒屋ナンシーの店長、安永成美さんです。今日の審査のポイントはどんなところですかね」

「ニャンニャンです!」

「かわいらしい振り付けされても……」


「3人目はペットショップ『カプリコ』の店長、苺和彦さんです。ペットショップの店長ということでいろんなペットを見ていると思いますが、ペットを上手に飼う秘訣はなんでしょう?」

「やはり、飼い主の愛情ですね。今日の大会でもその愛情を厳しく審査してみたいと思います」

「さすが、ペットショップを営むだけあります。審査員らしいコメントをいただきました」


「そして、最後は審査委員長、ロビンソン亭の名物店長ロビンソンです!ロビンソンさんにとってのペットとは何でしょうか?」

「ペットは私にとっては癒しです。とにかく根性のあるペットに癒されますね」

「根性と癒し……あまり関連性のないような」

「なんだって?」

「すみません、根性のあるペットに癒されるということで、

 以上4人の審査で始まります。では1番の方、どうぞ!」


 ペット自慢大会が始まった。参加者は犬にいろんな芸をさせるのが多い。

 どれも同じような芸をさせるので、観客も審査員もだんだん飽きてくる。

 一方、参加者の控室では緊張した面持ちでモモがミッフィーを抱え椅子に座っていた。


「モモっち」

「あ、あすか先生」


 保健室のあすか先生がモモに声をかけてきた。

 あすか先生の横にはミッフィーに似た丸い物体が6ついる。


「あすか先生、これって体育大会の。あすか先生のペットだったんですか?」

「そうよ、あたしが育て上げたマロン軍団よ。

 モモっちには申し訳ないけど優勝はこちらがもらうから」

「あたしも負けませんよ、あすか先生」

「お、気合いが入っているね。じゃ、あたしが勝ったら、ミッフィー1週間貸してね」

「わかりました、勝負ですねあすか先生」

「うん、そろそろあたしの番だ」


 あすか先生とマロン軍団がステージに向かった。

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