ロビンソンのカエル獲り

 21:00。1時間ほど車を走らせているが、カエルはまだ見つからない。後方を走る鈴井校長の愛車『アユミン号』には吹奏楽部の玉木、田勢、そしてサッカー部の音尾が乗っている。


「それにしても、なかなか止まりませんね、前は」


 玉木がぼやく。


「そうですね。カエルなんてそこらへんの小川で獲れそうな気がしますけどね」


 田勢が少し飽きてきている。


「まあまあ、ロビンソンさんもなにか考えがあって車を走らせているはずだから。みんなもがんばろう」


 鈴井校長がなだめる。


「安永先輩、ロビンソンとどんな話しているんでしょうね?」


 音尾が話題を変える。


「ロビンソンっていうか、あの女マネといちゃついてるんじゃね?」


 玉木が悪態をつく。


「いちゃつくって……彼女そんなキャラじゃありませんし。もしかしたら、安永先輩殴られているかも……」


 田勢が恐れおののく。


「え、知ってんの?」

「はい、クラスメートなので……」

「もしかしたら、安永先輩が面白くない話して菊ちゃんにペットボトルでたたかれてる可能性はあるかもね。『安永先輩、つまらないわよ。ぎゃはは』って」


 音尾が予想する。


「『ぎゃはは』ってうけてるじゃん」


 玉木がツッコミを入れる。


「うーん、青春だね~。あ、前が止まった」


 鈴井校長が前の車が止まったのに気づいた。

 全員急いで車を降りて、草むらの中へ入っていく。


「ほら、拳ちゃん、そこ!」


 ロビンソンが安永に指示して、カエルを捕まえさせようとする。


「あ……だめだ」


 安永は取り逃がしてしまった。


「やったー!捕まえた!」


 大きなペットボトルを持ったサッカー部のマネージャー菊地萌子が喜んでいる。ペットボトルには小さなカエルが一匹入っている。


「うーん、ちょっと小さいかな」


 渋い顔をするロビンソン。


「他はどう?」

「見つからないよ、ロビンソン」

「ここはもうだめだな。じゃ、次行こう」


 全員車に乗り再びカエルを探しに走り出した。

 この後、2、3のポイントでカエル捕獲にチャレンジしたが、ロビンソンの満足する大きさのカエルは捕まえられず、小さいのがいくつか捕まえたのみである。時間ももう23:00を回っており、全員疲弊し始めていた。だが、ロビンソンは満足する成果を得るまであきらめないつもりだ。『アユミン号』に乗っているメンバーも代わり、現在乗っているのは田勢、菊ちゃん、そしてカラーバトン隊の三浦。


「ちょっと、何やってんのよ!」


 菊ちゃんが怒っている。


「ごめんなさい……」


 うなだれる田勢。


「どうしたの?」


 三浦が事情を聞く。


「まったく、コイツがカエルを入れたペットボトル川に流しちゃってさ。いまだに帰れないのは半分コイツのせいだよ」

「……」


 黙り込んでしまう田勢。


「校長、ロビンソンに『もうやめようよ』って言ってもらえませんか?みんな疲れきっていますし。先ほどの安永の顔、見ましたか?かなり憔悴してましたよ」


 三浦が鈴井校長にカエル獲りをやめさせるよう促した。


「でもな、ロビンソンがあんな様子だし。言ってもダメじゃないか?」


 鈴井校長は半ばあきらめているようだ。


 カエル獲りのポイントに着いた。全員降りた際、三浦が言った。


「ロビンソン、もうやめましょうよ」

「そうだな、そろそろウナギの仕掛けも作らなきゃいけないし。ここでカエルは最後にして、仕掛けを作りに行こう。この後、小魚も獲らなきゃいけないしな」

「小魚って……」


 一同は絶句した。

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