合宿初日の夜

 18:00。夕食を食べるため、生徒達が食堂に集まっていた。それにしても人数が多い。どうやら吹奏楽部だけでなくサッカー部も合宿を行っているようだ。安永とモモが隣に座って楽しそうに話して夕食を食べている。


「あたしも食べてみたかったな、『マグロ焼き』」

「モモッチなら10個くらい食べられるよ」

「ちょっと、いくら食いしん坊だからってそんなに食べないわよ」

「ははは、ごめん。それでさ、校長がそれ食べたあと、いきなり練習が終わったんだ」

「校長食べたんだ」

「うん、食べてた。『甘いもの』好きらしくて」

「ふふふ。ヤスケン、実はね校長『甘いもの』苦手なんだよ」

「ええ、そうなの?それじゃ、校長生き地獄を味わっていたんだ」


 二人の楽しそうな様子をサッカー部のマネージャー菊地萌子は嫉妬深く見つめていた。



 夕食後、吹奏学部の女子部員とサッカー部のマネージャーが台所で皿洗いをしている。


「こんばんは、菊ちゃん」


 モモが菊池萌子に声をかける。


「こんばんは」


 そっけなく挨拶する菊ちゃん。


「気軽に『菊ちゃん』って呼ばないでくれます?」

「あ、ごめん。ヤスケンがいつもそう呼んでるから」

「そうですか」


 黙々と皿を洗う菊ちゃん。すると目の前になにかが通り過ぎて行った。


「きゃっ、ゴキブリ!」


 腰を抜かす菊ちゃん。ゴキブリの登場に周りが騒ぎだす。ゴキブリが通るたびに逃げていく女子たち。


「ここはまかせて」


 モモが殺虫剤をもった。一人ゴキブリに立ち向かうモモ。黒い影を見つけたモモは殺虫剤を吹き付けた。動かなくなるゴキブリ。その黒い影に丸めた新聞紙をたたきつけるモモ。完全に動かなくなったゴキブリを新聞紙で包み、モモはゴキブリをゴミ箱に捨てた。


「すごーい、モモ!」

「かっこいい、モモ先輩!」


 周りから拍手喝采を受けるモモ。


「あ、ありがとうございます……モモ先輩」


 照れた顔をして感謝する菊ちゃん。


「どうもいたしまして」


 ニコリと微笑むモモ。


「じゃ、早く後片付け終わらせよ」


 後片付けを再開しようとした瞬間、勝手口のドアが開いた。


「拳ちゃん、いる?」


 あらわれたのはロビンソンだった。

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