球技大会決勝
7月11日。球技大会も2日目。とうとう決勝戦を迎えた。生徒全員が一つのコートに集まっていた。はたして、決勝に進んだ3チームは?
「釜高球技大会も決勝戦。2日間にわたって繰り広げられた激戦もこれで最後です。この決勝戦、実況をつとめます放送部の平川です。そして、解説はいつものこの人、スポーツ観戦同好会の松本さんです」
「よろしくお願いします」
「さて、決勝に進んだ3チームの入場です。まずは3―C。野球部のレギュラーが3人いる優勝候補の最有力です。
続きまして、1―Aです。1年生での決勝進出は釜高史上はじめてのことです。果たして、この勢いで優勝できるのか?非常に楽しみなチームです。
そして、最後は3―Dです。特出した選手はいないのですが、運とチームワークで勝ち進んできました。この3チームで三角ドッヂ決勝です!」
「松本さん、決勝のポイントはどこにありますでしょうか?」
「そーですねぇ。まず3―Cは野球部の3人でしょうね。これまでは内野2人、外野1人のフォーメーションで見事なキャッチングと速いスローイングで相手を翻弄していました。この決勝でも同じ布陣、作戦で行くでしょう。
続いて1―Aは、女子エースの菊地さんですね。彼女の男子顔負けの運動神経はあなどれません。まさに快進撃の原動力でしょう。
そして、3―Dですが……ちょっとわかりませんね。実力的にも特にずば抜けた選手もいませんし、巧みな戦術を駆使しているわけでもありませんし。まあ、運だけでしょうね、このチームは」
「松本さん、ありがとうございました。それでは決勝はまもなく!各チーム内野外野に散りました。そして、コート中央に現れたのは鈴井校長。両腕にはボールを2つかかえています。どうやら校長自らボールを投げ入れるようです。それでは決勝スタート!」
鈴井校長がボールを高く放り投げた。ボールをとった2チームがまず第1投。
「あいたた!僕は選手じゃないって!」
「おおっと、鈴井校長ダブルヒット!決勝戦最初に当てられたのは逃げ遅れた鈴井校長だ!」
よろめきながらコートを出ていく鈴井校長の姿に一同爆笑した。
二つのボールがコートを飛び交う。3―Cの野球部の速いボール回し、菊地萌子を中心に見事なキャッチをする1―A、他の2チームに翻弄されている3―D。
「きゃっ!」
内野にいるモモが逃げている最中に転んでしまった。
「大丈夫、モモっち?」
転んだモモに安永が手を差し伸べる。
「ありがとう、ヤスケン」
モモが安永の手を取り立ち上がろうとした瞬間、安永の体に寄りかかってしまった。思わずモモを抱きとめる安永。その姿を見てしまった菊池萌子は震えた。
「ちょっと田勢くん、ボール貸しなさいよ!」
萌子は田勢の持っていたボールを無理やり奪い、安永とモモに向けて思いきりボールを投げつけた。
「おっと!」
「ナイスキャッチ、ヤスケン!」
安永は萌子の投げたボール見事にキャッチした。そして、安永が投げたボールは田勢に当たった。
「ちょっと、なにやってんのよ、田勢くん!」
怒声をあびせる萌子。
「ご、ごめんなさい」
力なく謝る田勢。
「田勢くんドンマイ!」
モモが声をかける。
「一進一退の攻防を展開している3チームです。優勝の行方はわからなくなりました。はたして、優勝するのはどのチームか?いけ、釜高ジャパン!」
「平川さん、『釜高ジャパン』は関係ありませんから……」
解説の松本がツッコミをいれる。
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