三角ドッヂ

 7月10日。3―Dの教室では生徒たちが朝から盛り上がっていた。


「とうとうやってきたな、球技大会」

「燃えるよな。今年は決勝に行きたいね」

「みんな気合入っているな。今日の球技大会って、ドッヂボールでしょ」


 安永拳は周りの雰囲気に乗り切れてなかった。


「ヤスケン、うちのドッヂは普通のドッヂじゃないんだよ。まあ、やってみればわかるよ」

「よーし、頑張っちゃうよ!」

「おい、リーダー。おめえはインターハイがあるから、今日は外野だよ。大事な試合前にケガでもしたらどうするんだよ!」

「うーん、残念」


 城ヶ崎しげるは少し残念な顔をした。


 しげる達3―Dの面々が校庭に出ると、大きな正三角形のコートがいくつか作られている。コートの中はさらに二等辺三角形に3分割されている。


「なんだこのコート?」

「ヤスケン、これが釜高名物『三角ドッヂ』だよ。3チームでボール2つをつかったバトルロイヤルドッヂさ」

「へぇ、こりゃスリルあるな」

「ちなみに1回戦は1年対2年対3年の学年対抗になっているんだ」

「こりゃ楽しみだな」


 少し練習したあと、三角ドッヂの1回戦が始まった。3―Dの相手は2―Fと1―B。ボールが2つコートに投げ込まれると、いろいろな角度からボールが飛び交う。次々にアウトになる内野陣。5分後、外野にいたしげるのもとにボールが転がりこんできた。1―Bの男子に向けて投げるしげる。しかし、かろうじてボールを交わす男子。すると、後ろにいた女子の頭にボールが当たってしまった。


「いたい~」

「あ、ごめんなさい、江戸さん」


 しげるが当ててしまったのは、体操部のマネージャー江戸サキであった。コート中からブーイングを浴びるしげる。しげるはうなだれた。

 しげるのアクシデントはあったが、3―Dは見事に1回戦を突破した。

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