球技大会

文化祭の演目

 7月9日。釜揚高校の吹奏楽部の部室では指揮者の玉木が部員の前で何か説明している。


「えーっと、夏の応援も一通り終わって、これから秋の文化祭に向けて練習になるけど、一応曲のリストを挙げておいたから。田勢くん、プリント配って」


 田勢とよばれた少年が恐る恐る前に出て、


「す、すみません。コピー忘れました……」

「ちょっと、何やってんだよ!大事なプリントだったんだぞ!」

「すみません!すみません!」


 謝る田勢の目には涙がたまっていた。


「玉木、やめなさいよ!田勢くんだってわざと忘れたわけじゃないんだし。黒板に書けばいいことじゃないの」


 口をはさんだのは三日月モモだった。


「ま……そうだな。わかった、今から黒板に書くからみんな見て」


 玉木が黒板に曲のリストを書き出していく。すると、モモが手を挙げた。


「ちょっと提案があるんだけど。いい?」

「ん、なんだ?」

「今度の文化祭、マーチングバンドやりたいんだけど」


 モモの提案に部員たちがどよめいた。


「は?マーチングバンド?あれ音が乱れるから、いまいち……」


 玉木は難色を示した。


「音が乱れる?そんなことないわよ。この前の海神祭のマーチングバンド見なかったの?あれはとてもすばらしかったよ」

「確かにあのマーチングはすごかったね」

「うんうん、あたしも見たけどかっこよかったよね」

「ほんと、おれもあんなのやってみたいな」


 部員達から賛同の声が続々と挙がる。


「おいおいおい、まだやるって決まったわけではないだろ」


 玉木があせる。


「あれ、怖気づいてるの?ヒ・ロ・く・ん」


 モモが不敵な笑みを浮かべる。玉木の顔が青ざめた。


「え……怖気づいてるわけじゃないけど……。じゃじゃじゃあ、わかったよ。みんなやりたいんだから、やろうよ!」


 玉木が折れた。


「でも、練習はどうすんだよ。俺ら経験ないし」

「なっちゃん先輩がマーチングバンドやってるから、頼めば教えてくれるよ」

「演奏はそれでいいとして、あれって旗とかあるだろ?誰がやるんだよ?」

「大丈夫、経験者がいるから……」


 モモが再び不敵な笑みを浮かべた。

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