ロビンソン先生の語呂合わせ

 次の日曜日。城ヶ崎しげると安永拳はロビンソン亭にいた。座敷で友人数人と教科書とノートを広げている。どうやら期末テストの勉強会を行っているようだ。


「えっと、日本三大随筆は……枕草子と徒然草と……あとなんだっけ?」

「『方丈記』だよ、ヤスケン」

「お、やるねリーダー」

「ま、一応日本史は得意のほうだから。ちなみに、枕草子の作者は清少納言、徒然草は吉田兼好、方丈記は鴨長明さ」

「うーん、俺そういうの覚えるの苦手なんだよね。いい覚え方ないかな?」

「拳ちゃん、そういうのは語呂あわせで覚えるのがいいんだよ」


 ロビンソン亭の店主、ロビンソンが突然口を挟んだ。


「いいかい、日本三大随筆は『健康』をテーマにした語呂で覚えるんだ。みんな良く聞いてよ」

『枕のそうじで(枕草子)清少さんなごんじゃう(清少納言)

 ほうじょうさん(方丈記)、鴨食べて長命よ(鴨長明)

 つれづれ(常々)草食べてる(徒然草)吉田さんは健康だ(吉田兼好)』


 しげるはすこし呆れている一方で安永は語呂あわせを一生懸命ノートに書いていた。


 30分後、安永はまた悩んでいた。


「荘園制ができるきっかけになった法律ってなんだっけ?」

「743年、墾田永年私財法だよ」

「さすがリーダー」

「これは重要だからね。たぶん試験に出ると思うよ」

「うーん、わかってるけど名前が覚えにくいんだよね」

「拳ちゃん、そういうときはこの語呂あわせだ」

「おっ、来ましたロビンソン」


 ロビンソンの語呂あわせに期待しているのは安永だけだ。


「墾田永年私財法の語呂はこうだ。

『顔なじみ(743年)の荘園さん、この田んぼはこんでんええねん(墾田永年私財法)?』」


 しげるはあまりの強引さに苦笑していたが、安永は一生懸命その語呂をノートに書いていた。こんな調子で、しげるの解説そして時々ロビンソンの強引な語呂あわせを交えながら、勉強会は進んでいった。4時間後、勉強会が終わった頃、安永の顔は充実感にあふれていた一方、しげるの顔は疲労感に満ちていた。

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