ナンシー先生のサバイバル勉強法

 一方、三日月モモは「居酒屋ナンシー」にいた。テーブルにはモモとなっちゃん先輩こと日向夏子が向かい合って座っている。そんな光景が10席ばかり見られる。片方はモモの友人であろうか女子高生が、向かい側にはなっちゃん先輩が所属するマーチングバンドのメンバーが座っている。モモたち女子高生の前には一枚のプリントがあった。異様な緊張感の中、小柄な女性が現れた。店の店長、ナンシーこと安永成美だ。


「女子高生たちいいかい。これから『期末テスト対策数学サバイバルレース』を始めるわよ。いま、あなたたちの前にあるプリントには数学の問題が10問あるわ。全部解いたら、向かいの採点者に渡す。ただし、採点は○か×かのみ、間違っていても正しい答えは教えないわ。そして、全問正解するまで終われない、間違ったところは何度もやり直すのよ。全問正解したら次の10問に挑戦してもらうよ。今日は合計で50問やっていくから、気合入れていってみよう!よーい、スタート!」


 ナンシーの合図と共に、モモたち女子高生は一心不乱に問題を解いていく。10問解いた段階で採点してもらう。早速全問正解し次の10問に進む者もいれば、なかなか全問正解できない者もいる。モモは最初の10問は一発で全問正解したが、次の10問では苦戦していた。


「えーっと、こことここが間違ってるよ、モモ」

「え?そうですか、なっちゃん先輩。先輩正解知っているんでしょ、ナイショで教えてくださいよ」

「だめだめ、それじゃあんたのためにならないでしょ。自力で間違いを解決していくことに意味があるんだから」

「えー、でもー」

「でももへったくれもない!ほら再チャレンジ。ちなみにヒントは最初の10問の中にあるから」

「へ、そうなんですか?」


 モモは丸めてしまった1枚目のプリントのしわをあわてて伸ばし、間違った問題と付き合わせた。


「あ、この問題の応用だ」


 解き方がわかったモモは間違った問題を解きなおし、なっちゃん先輩に提出した。


「そうそう、これで正解。これからの問題も前に解いた問題がヒントになっていることがあるから、プリントは大事に取っておきなさいよ」

「てへへ、はーい」


 悪戦苦闘しながらも、女子高生たちは全員50問正解した。女子高生たちも採点したバンドのメンバーも疲れきっている様子だ。そこへまたナンシーが現れた。


「はい、みんなお疲れ様。今日身につけたことはきっと期末テストに役立つから、がんばってよ!じゃ、ごちそう作ったからみんな食べて!」

「わーい、やった!」


 一同はごちそうに舌鼓を打った。

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